54話 ーそれぞれのやりたいことー
「王都に行く」
公園での朝ごはん。昨日と同じ店でパンを買った。
大量のパンを膝の上に乗せてモグモグと結構な勢いで食べ進める薺を見ながら、黒部 圭太は言った。
「・・・」
「そうだ。この国で一番大きな街。やりたいことがあるからな」
「・・・」
「そう。この世界での目標だな、薺は無いか?そういうの」
「・・・」
「俺はこの世界で自分の家を作る」
「・・」
「そうだ、家。白い砂浜が近くにあるところにでっかい家を建てる」
「・・・」
「スゲーいいだろ。海を見ながら過ごすんだ、いいだろ。取れたての魚を食べたり、砂浜で犬を走らせたり、だ」
「・・・・」
「だろ!ようやくわかったか。だから王都に行く。家を建てるには大量の金が必要になるだろうし、コネも必要かもしれない。だから一番大きな街、王都に行く」
「・・」
「薺も何か考えておいた方がいいぞ。せっかくの異世界だ。日本ではできなかったこととか、実現させたい夢とかをここで叶えるんだ」
「・・・」
「大丈夫だって、そのうちでてくるさ。やりたいことがな」
「・・・」
「だから、薺。強くなろう」
「・・」
「この世界では強さがものをいう。予想だけどな。だから、立ちはだかるものは木端微塵になぎ倒す。そして手に入れるんだ」
「・・」
「大丈夫だ。お前なら絶対できる。勇者だからな」
「・・」
「よし!それじゃあ今日はこの街をもっとよく見てみよう。旅に必要なものを探しながらな」
「・・」
「なんたって異世界だ!とんでもなくぶっ飛んだものがあるかもしれないぞ」
薺が食べ終わったのを見てから、最後のひとかけらを口に入れ、膝の上のパンくずを払い、立ち上がる。
先を進む圭太の背に向かってひとつ頷くと、薺はその背を追った。




