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5話 -反撃の始まり-

黒部 圭太:何も知らずに異世界に飛ばされた、少し馬鹿でかなり生意気な少年。最初の村で無能と宣告され、追放された。相手を「無能」にするスキルを持っている。



 


 静かな村の中にあって1棟だけ明かりがついている建物。皆が寝静まっている中、大勢の男たちの盛り上がる声が鳴り響いている。


 扉が開き黒い影がふらふらとした足取りで出てきた。


 大司教バレル。


 光に照らされたシルエットは丸まると太っていて、離れた場所からでも見分けるのは簡単だ。もしこれがどこにでもいるような体形であったのなら、こうはいかなかったはずだ。


 暗闇の森の中で、息をひそめ身を隠す黒部くろべ 圭太けいたは笑った。


 最初のターゲットはこいつしか考えられない。特殊スキル「無能」を知るための実験台となれ。


 戻って来た圭太は森に身をひそめ様子を伺っていた。この村の中で煌々と明かりがついているのはこの建物だけ、見張るのは簡単だった。


 あいつが移動するとき、そこには常に護衛がいるものと思っていたが、扉から出てきたのはバレルだけ、嬉しい誤算に圭太は喜んだ。



 圭太は要人は常に護衛されているものという考えがあるが、そうとは限らない。プーチャル教の重役に手を出そうと考えるものは滅多にいないのだ。


 多数の護衛を連れてはいるが、ほとんど見栄のようなものだ。そもそも常に周囲に護衛が張り付いているというのを、守られる側が好まない場合もある。


 そんなことなど知る由もない圭太は、森に潜んだまま音をたてないように追跡する。


「無能」の説明文は何度も読み返した。そこには制限についても書かれている。無能というスキルは自分から半径30m以内にしか効果が無い。


 つまりは射程距離だ。


 暗闇の森の中を行く圭太の心臓の鼓動の高鳴りが凄い。


 気分はまるで狩人。


 青青とした木々のにおいを感じながら闇に潜み息を殺す。存在を相手に気取られないように、追跡し仕留めに行く。こんな感覚は今までに味わった事が無い。


 鑑定に表示された無能の説明文を呼んでも最初はちんぷんかんぷんだった圭太だが、何度も読み返していくうちに「無能」をどう使うべきかが何となく理解できていた。


 初めてゲーム機を買ってもらった子供のように、いまはもうとにかく「無能」を使いたくて仕方がなかった。


 バレルは星を見上げながら崖に向かって歩いていく。


 なぜこんな夜中にわざわざそんなところに?そんな疑問はあるがこちらにとっては好都合でしかない。


 森はこの村一帯を覆っている。


 なのでバレルがどこへ向かおうとも、森に隠れたままの状態でバレルから30m以内の距離を取るの言うのはそれほど難しくもなさそうに思える。


 高揚感を感じながら追跡を続ける。あれほど恐ろしかった闇が今は自分の味方になっている頼もしさに笑ってしまいそうだ。


 歌?


 微かにだが闇の中から人間の歌声が聞こえてきた。


 下手じゃね?


 全く聞いた事が無い歌だが、大して上手くないというのははっきりとわかる。もしこの歌声がテレビから流れてきたのなら即座に電源を切るだろうレベルだ


 酔っ払いはこっちの世界でも変わらない。魔物がいて魔法があって、何もわからない世界ではあるが人間は人間だ。


 こんな世界でも生きていけると思わせてくれる。あんな歌で幸せを感じることができるのは、この世界でも前の世界でも自分くらいのものだろう。そう考えると面白い。


 もうそろそろいいだろう。いつ護衛がやって来るのか分からないのだからあまり時間をかけすぎるのは良くない。


 さっさとやり、さっさと逃げる。これが大事だ。


 息を整え、ターゲットを見据える。


 さあ行け。



 無能を発動した。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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☆5なら踊ります。


◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆


特殊スキル 無能 Lv3

特徴:自分自身から30m以内の生き物に「無能」のバッドステータスを付与して無能状態にする。無能状態になると全ステータスが90%ダウンし、運は-100になる。ただしターゲットとして選択できるのは1体に限定され複数をターゲットにすることはできない。下位能力による付与阻害や能力低下の影響を受けることはない。


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