48話 ー隷属がもたらすものー
パラカッ、パカラッ、パカラッ・・・・
のどかな音で目が覚める。上体を起こして周囲を確認した。
「薺?」
頭がぶつからないよう中腰になりながら前へと進む。布をたくし上げると、夕日と馬と薺がいた。
「・・・・・・・」
「ああ、もう大丈夫だ」
彼女は手綱を掴み2頭の馬を操り馬車を動かしている。
この馬車は盗賊に殺されてしまった商人、クライスの乗っていた馬車だ。横転していたはずだがひとりで起こしたんだろうか。
「やったことあったのか?」
「・・・・・」
無いけどやってみたらできた、か・・・。
意外に行動力をもっていた。俺が起きるのを待ってから行動を起こすという選択肢もあったはずだが、自分一人で行動することを選ぶとは少し意外だった。
「大丈夫か?」
「・・・」
落ち込んでいる気がした。
「盗賊達を殺したことを気にしてるんなら違うぞ・・・あれは俺が殺せと命令したから殺したんだ。俺は悪魔だからな」
薺にかかっている隷属の魔法。
それは主人の命令に従うことを強制する魔法。あの時俺が命令した。だから盗賊を殺したのは俺、俺だ。薺が重荷を背負う必要はない。俺なら全く問題ない。事実として全く後悔していない。
そこは悪魔で良かったと思う。もし人間だったころの俺であれば、この事実に耐えられたとは思えない。
「・・・・・・・・・・・・」
「そっちか・・・助けれなかったことを気にしてるのか・・」
「・・・」
「強くなれ薺」
「・・」
「強くなりさえすれば今度は助けれるかもしれない」
「・・・」
「分からん。けどなぁ・・・強ければもっと早くあそこに着くことが出来たかもしれない」
「・・」
「それに、もしかしたらスキルがその助けになるかもしれない」
「・・・」
「ゲームとでは自分の周りに敵がいないかを常に確認するレーダーみたいなのが表示されたりするんだ。もしかしたらそんな感じで、遠くの場所まで敵の存在を知れるスキルがあるかもしれないぞ。こんな世界だし」
「・・・・・」
「そうだ。だから強くなれ。お前ならできる」
勇者だからな。絶対できるはずだ。
「・・・」
「大丈夫、今度は救えるさ」
「・・」
ちょっとは前向きな気持ちになったようだ。
隷属の魔法は縛るだけではない。
心をつなげる。
だから安心できる。
だから信頼できる。
だからよかった。
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