44話 ー怒りの勇者から生きて帰れると思うなよー
ザバッ!
ザバッ!
ザバッ!
「ギャーーーー!!」
「グワーーー!!」
「うわーー!!」
姿が消え、現れ、斬り、消える。
特殊スキル「彩る流星と真実」と薺の剣の腕が組み合わさった時、数の利は脆くも崩れ去る。
パニック。
そう言っていいだろう。逃げようとする盗賊達もいるが薺の圧倒的なスピードに敵うはずもなく刈られる。
かといって集団でいたところで意味がない。
どこから、いつ、現れるのかが攻撃される直前までわからない。しかも、剣を振るうスピードが薺の方が段違いに早いから現れたことに気づき武器を振るっても届く前に斬られる。
子供のころから積み重ねられた鍛錬の意味がはっきりと表れている。我流、自己流など及ぶ余地もない。幾人にも受け継がれ、研ぎ澄まされ、洗練された技術。
ステータス、特殊スキル、技術。その全てがこの場にいる誰よりも勝り、その全てが融合、調和された武は圧倒的。
出現に怯え、足が震えているのが離れていてもはっきりと分かる。戦いとは言えない。ただただ、一方的に刈っているだけだ。
絶望。
相応しい。
過去、あらゆる悪事を重ねてきたこいつら、屑共は安らかに死ぬことなどあってはならない。
絶望の極致で死ぬ。
それこそが相応しい。
だが、ただ一人だけ希望を持っている者がいる。それはこの盗賊団のリーダー格の二人の内のひとり。初撃で切り裂かれた屑の弟の方。
特殊スキル所持者だ。
そいつの頭上には無数の矢が浮かんでいる。準備に時間がかかっていたが100本くらいはあるだろう。矢が宙に浮いたまま停止している。
「くらいやがれ!化物!!矢武鮫!!!」
斬るために薺が姿を現した瞬間に叫んだ。そして半分ほどが凄まじい勢いで一直線に降り注ぐ。
矢武鮫、無数の矢を自由自在に飛ばす能力。
・・・・ものすごく小物臭い能力だ。
案の定、矢が到達するよりも圧倒的に早く薺は姿を消した。
遅すぎる。あれでは一生当てることはできないであろう。
「はうわああああ!」
ザバッ!
ザバッ!
ザバッ!
さっきの位置から10mは離れた所で斬撃の閃光が走った。
違いすぎた。
能力の差。
戦闘能力が天と地ほどかけ離れている。
ザバッ!
ザバッ!
ザバッ!
ザバッ!
ザバッ!
ザバッ!
残りの矢を当てるタイミングをうかがっている。顔は脂汗でテカテカになっている。これを当てなければ殺される。そう思い、焦っているのが見え見え。
だが見えない。
どこにいるのかがわからない。
圧倒的な速度の差。
時間は待ってはくれない。残りは最後のひとり、そいつだけになってしまっていた。
「うあわあああああ!!!」
絶望の叫び。
また薺の姿が消えた。
最後のひとりを仕留めにかかった。




