41話
「おいおいおいおい!見ろよドザンメ!」
「うほー!女だ女」
「ついてるぜ、なあドザンメ」
「良かったね兄ちゃん。あの女、勝手に死んじまったからまいったよ」
「今度こそ死なすんじゃねえぞ」
横転した馬車。そして倒れている人間。流れている血。転がっている武器。その全てが表していること。
商人クライス達を殺したのはこいつらだ。
モニカ。
碌な武器を持っていない俺たちに自分の予備の剣をくれた。不器用なモニカ。
死んでいる。
その首は切り裂かれていた。
ピクリとも動いていない。もうすでに死んでいるようだ。生気の抜け落ちた顔こそ違ってしまっているが、それ以外は記憶の中にある彼女だった。
ボリュームのある赤い髪の毛、それは死んでいる者のようには思えなかった。
モニカは自らの命を自らで刈り取っていた。
男ばかりの50の組織。
湧き上がってくる感情。憎しみ、殺意。それは薺の精神状態に影響され増幅されているようだ。
もはやこれを人間とは見ることが出来ない。
害をなす者。
害虫。
踏みつぶすべき塵屑。
どう見ても堅気には見えない。少しの光も見えない残忍な顔が奴らが何者であるのか示してた。
「盗賊か?」
暴力によって他者から強奪するもの。生まれて初めて見た。もし、日本にいる頃であれば、恐ろしくて近寄ることも、目を合わせることも、何もできなかったであろう邪悪。
「兄ちゃん、男もいるよ」
「丁度いい、速攻でぶっ殺せ。そうすりゃあ女の方も大人しくなるだろ」
好き勝手なことをいう屑共。自ら罠にはまった馬鹿な獲物を見る目をしている。それも当然。なにしろ圧倒的な数の差がある。
余裕からくるものだろう。人を殺しているのにもかかわらずヘラヘラと笑っている。まるで何事も起きていないかのよう。
それはこいつらがどれだけ人を殺してきたかという事を如実に表している。殺し、奪う事が日常なのだ。
笑える。
勝てると思っている。
虫けら共の分際でこれからも生きていけると思っている。
笑える。
だれが生かしてなんぞやるものか。
殺されてしまった者たちに目をやる。
護衛の5人はそれなりに優秀に見えたが多勢に無勢。とてもこの人数相手に勝つことはできなかったようだ。
任せろ。
すぐに仇はとってやる。
「この女、どれくらいもつかなぁ」
「さあな、んなもんどうだっていいぜ。使い物になんなくなったら殺しちまえばいいんだ。そんで次の女を探すだけだ」
デカい声で話しているのはふたり。どうやら兄弟らしい。他の盗賊達は小声でヒソヒソ喋りながらふたりの様子を伺っている。
どうやらこのふたりがこの盗賊のリーダーだ。
しかも相当に下の奴らを躾けているようだ。血の気の多そうなやつらばかりだというのに好き勝手に行動しようとしていない。ただふたりの決断の声を待っているように見えた。
「俺!一番最初がいい!!」
「バカ!俺に決まってんだろ!」
「前も兄ちゃんが一番だったじゃん、今日は俺が一番でいいでしょ兄ちゃん」
ゲスい。
薺を見て舌なめずりしている。
モニカが自ら命を絶った理由。
こんな奴らに弄ばれるくらいならと。それは多分正しい判断だったんだろう。こいつらに慈悲の心など全く期待できそうにない
ああ、なんてクソなんだ。
クソだ。
この世界もクソだ。
怒り。
徐々に、徐々に、薺の心が怒りで満ちていく。時間と共に一行が死んだ、否、殺された衝撃で動かなかった心が動き始めた。
怒り。
怒り。
怒り。
わかるぞ薺。
お前が何を望んでいるのかは、はっきりと分かる。
さすがは勇者だ。
並の少女であればこれほど悲惨な光景と、50の盗賊たちを目の前にすれば恐慌に陥るだけだろう。
だがその心に恐怖など微塵も無い。
決意。
揺るがない意思。
さすがは勇者だ。
「それじゃあいただきまーーーーーす」
おちゃらけながら、薺に飛び掛かろうとする盗賊。
「殺せ!」
その一言だけで十分。
怒れる勇者が解き放たれた。
ー ヒョウ価キ望DEATH♡♡♡ ー




