38話 -赤髪モニカは優しいモニカ-
「これ、やるよ」
「・・・」
「ガタがきてる安物だからやるよ」
ぶっきらぼうに差し出された剣。
あの女護衛が差し出していた。
「何故」
他人。
ただ道で出会っただけの他人だ。だというのに何故。自らの剣を差し出そうとするのか。
「いらないからだよ!もう捨てようと思ってたやつだから!それだけだ!」
嘘だ。
いらないはずが無い。いらないものをわざわざ持ってくる必要性が無い。経験を積んでいる人物ならなおさらだ。
予備のものなのだろうが、それを他人にやるというのか。命を守るための剣を差し出そうというのか。
「感謝する」
「だから!捨てるやつだって言ってるだろ!礼なんかいい!」
怒っているかのように突き出す。
赤い髪が揺れた。
不器用な奴、そして優しい奴。
「・・・・・」
「お姉さん、ありがとう。だとよ」
薺の気持ちも伝える。
「だからいいって!いってるだろ!」
今までで一番大きな声。
顔を隠す様にうつむいて、振り返る。
そして馬車の方へ急ぎ足で歩いていった。
「あんた、名前は?」
その背に呼びかける。
「モニカだよ!だからいいって!名前とかは!」
思わず笑ってしまった。
本当に、不器用な奴だ。
〇●〇●〇●〇●〇●
「出発だ!!」
護衛のリーダーらしき男が声を張り上げた。
前後左右、馬車を取り囲むように己の配置につく。表情が引き締まり、護衛のそれになった。
別れの時。またそれぞれの目的へと向かう時だ。
「いやー。聞いといてよかったですよ。われわれは少し進路変更しましてね、森を迂回しながら進むことにしましたよ」
「そうか、、」
「私はクライス。コールナンバー商会で商人やってます。お兄さんの名前は?」
「圭太だ」
「ケイタさんですか、また機会があったら、そんときゃあよろしくお願いしますよ」
「ああ、、」
「ぶっきらぼうな人だね、あんたって人は・・・」
呆れたような、諦めたような笑顔。
グイグイ距離を詰めてくる奴だった。だが、不思議と嫌な感じはしなかった。
これが商人か。
「それじゃあお元気で!また、どこかで」
「ああ、、」
クライスたちは慌ただしく旅立っていく。時は金なり、というやつかな。
いい出会いだった。
神経をすり減らしはしたが、リンゴを得た。剣を得た。情報を得た。
いい出会いだった。
旅立つ背を見つめる。
どこに行くのかも聞いていなかった。だが、クライスの言った通り、またいつか会う機会があるかもしれない。
リンゴ。
薺が吟味したリンゴを齧る。
「すっぱ、、」
また、薺とふたり。
「それじゃあ・・・行くか」
街へと向け歩き出した。




