29話 -出会いはいつも”突然”なものなんです-
黒部 圭太:何も知らずに異世界に飛ばされた、少し馬鹿でかなり生意気な少年。最初の村で無能と宣告され、追放された。相手を「無能」にするスキルを持っている。種族は悪魔。
安倍 薺:何も知らずに異世界へと召喚された勇者の少女。
海は生命の源であるというが、森だって負けてはいない。
ガサ、ガサ、ガサガサガサガサ。ブギャーーーオンー!!チュンチュンチュン、バサバサバサ!ボーーーン!
深い森の奥からはこんなにも多種多様な生命の声が大音量で響き渡っているのだから。
うるせえ!
せっかく寝れていたのに目が覚めてしまった。時計なんかあるわけないから分からないが多分夕方くらいだろう。できれば次の朝まで寝て風邪を回復させたかった。物凄く損した気分だ。
チュンチュンチュン!ブギャーーー!ギョメメメメ!
だからうるせえって!。
河原に寝そべりながら、心の中で文句連発しているのは黒部 圭太。気が付いたら異世界にいた元日本人で今は悪魔の男。
寝起きの顔で目ヤニがすごい。髪の毛は「ごはんですよ」のようにデロデロ。全身を汗でコーティングされていて近づかなくても嫌な臭いがする。
両鼻がつまっている為、口呼吸しかできない。だから口の中はいつも乾いていて生暖かくて生臭い臭いがする。着ているものも汗と土と草の臭いが混ざり合っている。
全体的に生ゴミ感はあるが、目にはギラギラとした力強さがあり、身に纏うオーラの強さも感じられる。回復さえすれば並の人間では太刀打ちできないくらいの強さを発揮するだろう。
バサバサバサ!ボーーーン!ボーーン!ボーーーン!!
ボーーーンって鳴き声なんだよ!
物すごく気になるわ、この森の奥には一体どんなの生き物がいるっていうんだよ。寝ようとしてる時に気になることを持ってくるな、寝れなくなるだろこの野郎。
口の中が粘ついていて非常に不愉快だ。
となりには勇者がいる。
サラサラの黒い髪の上の方には天使のような輪っかが浮かんでいて、美容院帰りかと思うほどだ。服装は白いシャツ姿で日本の学校の制服そのもの。汗も汚れも全く感じさせないで清潔感に溢れている。
ちょこんと座っている色白の少女にはあどけなさがあって、悪い人間にすぐに騙されてしまいそうに見える。
薺を横目に見ながら圭太は思う。普通の人はこれが勇者なんて思わないだろうな。
苦悶の表情を浮かべている圭太とは違って、晴れやかな表情をしているが彼女は奴隷。圭太の持っている「隷属」のスキルによって魂を縛られている為、命令に逆らうことは出来ないのだ。
そういえば何の命令もしていなかった。
ンゴゴーゴゴゴ!ンゴゴーゴゴゴ!ゴゴンーゴゴゴ!
森うるせえ!
「み、みずを………」
自分のものとは思えないほどガラガラの声。薺は軽く頷くとスッと立ち上がり、素直に川へと向かっていった。
よかった、ちゃんと隷属の効果はあるようだ。
ガサ………ガガガガガガッサアササ………ギギ………ガサガガガガサササ、ギギ………。
マジでいつまでもうるせえな!。
えーいダメだそんなこと気にするな、気にしたら寝れなくなるだろ。寝ろ、とにかく寝るんだ、この風邪を回復させれるにはそれしかない。
顔の真上にある大きな木の茂みが西日をブロックしてくれている。薺に頼んでここまで引っ張ってきてもらったのだ。
正直これが寝るのにかなり助かっている。アフロみたいにもりもりしてるけど、こいつはなんて種類の植物なんだろう?名前とかあるのかな。なんだか少しだけ愛おしく感じてしまう。
ピョコ!
それは顔。
緑色の顔が、圭太の顔の真上にある緑色の茂みから顔を出した。
「ボリボリパチョレーーーーーーック!!!」
ガラガラ声で叫び声をあげたせいで大量の咳が出る。
モンスター!
モンスターだ!!モンスターが出た!!!初めて見たモンスター、怪物、魔物。驚きのあまり、訳の分からない叫び声が出た。
悪意溢れている緑の顔、黄色みが買った牙、禿げ上がった頭頂部、長い鼻、尖った両耳。人間とはかけ離れたその風貌。
その距離およそ1m。
というかめちゃくちゃ臭ぇ。人間の中年の油と汗、そして公衆便所の匂いを混ぜたような感じの臭いだ。
胃の中がせり上がって来る。
どっかいけ!ヤバい、せっかく落ち着いてきたのにちょっとでも体を動かしたら吐いてしまいそうだ。
「ギギ!?」
目と目が合って緑の顔がニヤリと笑った。
喰われる!
こいつは俺のことを食料として見ている。今までの人生でそんな目で見られたことは一度もない。腹の辺りがふわふわする感覚。
ん?
最初は嬉しそうだった狡賢くて悪そうな緑色の顔がだんだんと曇っていく。
「ギッギギギギ」
薄汚ねえなあ、コイツ。
そう言われた気がした。
は?
「ギギンギギギギギ」
酸っぱ臭せぇな、コイツ。
そう言われている気がした。
鮮魚コーナーでパックの刺身をジロジロ見ているおばさんみたいな顔をしている。そしてその結果、俺のことを最低ランクの餌として格付した気がした。
「はぁ、ギギギ」
ため息ついたか、このクソモンスター!
臭そうだし、マズそうだけど、腹減ってるから、「はぁ、しょうがねえか」って言っただろう、この野郎。モンスターの言葉なんかわかんないけどその顔と喋り方で分かるんだよ!
ふざけんな!!
なんでこんな雑魚丸出しの緑のモンスターに見下されなくちゃならないんだよ!ふざけんな!どう見てもお前の方が汚ねえし、歯なんか一回も磨いた事ねえだろお前、風呂にも入った事ねえだろお前。
腹が立った、そして悔しかった。
自分も最近、歯を磨いてないし、風呂にも入ってないことに気が付いたからだ。興奮したせいで吐きそうだ。ここで吐いたらますますこの緑雑魚モンに見下されてしまう。
タッ!
その瞬間、現れた。
白。
今は味方となった白。
勇者が颯爽と現れ、圭太を守るかのように緑との間に立った。
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特殊スキル 無能 Lv3
特徴:自分自身から30m以内の生き物に「無能」のバッドステータスを付与して無能状態にする。無能状態になると全ステータスが90%ダウンし、運は-100になる。ただしターゲットとして選択できるのは1体に限る。下位能力による付与阻害や能力低下の影響を受けることはない。




