表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/237

25話 ー勇者なんか殺すべきだとお前は言うー


黒部 圭太:何も知らずに異世界に飛ばされた、少し馬鹿でかなり生意気な少年。最初の村で無能と宣告され、追放された。相手を「無能」にするスキルを持っている。種族は悪魔。


 


 ナマコのような分厚い雲に隠されて星の明るさは無い。


 さっきまでの大雨は一段落したようで、普通の雨くらいの強さにはなっている。風は完全に収まって雷の気配もない。


「あ、あ、あ………」


 喉をさすりながら声を出す。


「痛っ、」


 寝違えたように首の後ろの筋肉が張っているから、明日になれば動かすことは出来ないかもしれない。


 慎重に喉仏に触れ、すぐに手を放す。さっきまでメキメキ音を立てていた箇所だ、喋れているから大丈夫だとは思うが触るのは止めておこう。


「頑張ったな、俺、」


 思い返してみると何発殴られただろう。


 けど諦めなかった。


「頑張ったよ俺」


 大きな川が迫力のある音を立てながら流れていく河原を歩く。本当ならばすぐに避難した方が良いという事は、さすがの圭太でも分かっていたが、やらなくてはならないことがあった。


「頭がガンガンする、脳細胞は結構死んだんだろうな」


 しかしながら気分は悪くない。まるで受験勉強から解放されたみたいにすっきりしている。


 収まったと思っていた風が突風のように吹いた。


「寒い」


 露出した肌には強めの鳥肌が立っている。


「アドレナリンが切れたのかな?大丈夫だよな風邪とか、悪魔だもんな………」


 くしゃみが出た。


 39回連続。


「ううう………」


 太い鼻水がどんどんどんどん出てくる。ティッシュが欲しい。ああ、口の中に入った。もう手でかむしかない。水溜まりはいくらでもあるから後で手を洗えば大丈夫だ。


 立ち止まり、見る。


 仰向けで、大の字に倒れている存在。



 勇者。



 正面から雨を顔に受けているのに微動だにしていない。体からは煙が上がっている。しかし、生きている。目は開き、こちらを見ている。


「やっぱり生きてるか」


 勇者ってありえないな、凄まじくあり得ない、常軌を逸している。


 雷が直撃して生きているんだから。



 しっかり決まってさえすればフロントチョークは強力無比な技だ。実際あと数秒くらいで俺は気を失っていただろう。


 しかしながらこの技をかけるためには動きを止めなくてはならない。それは「無能」の使い手である俺にとっては非常にありがたいこと。無能はターゲットをカーソルで指定しなければならないから。


 ずっと姿を見せることが無かった勇者に対して無能を発動することが出来なかった。


 きっと勇者は焦っていた。


 何度攻撃を当てても倒れない俺を見て。そして数回に一度くらいは攻撃を当てれるようになってきた俺に対して。


 だからフロントチョークで勝負に来た。


 完璧だったと思う。


 ステータスが下がったせいで筋力が弱っていなければ。


 運悪く勇者にだけ雷が直撃しなければ。



 微動だにせず青白い顔で見上げる勇者。


「俺は悪魔………」


 自分でも意外な言葉が出ていた。


「ここは異世界、そしてお前は勇者だ」


 なぜ自分はこんなことを言っているのだろう、説明することに何の意味があるのだろうと思いつつも、言葉は出る。



 セミロングの黒髪に色白の肌。白いワイシャツに首元にリボン、そしてひざ丈のスカート。明らかに学生の格好をしている。中学生なのか高校生なのかは分からないが今はどうでもいいだろう。


 日本人の少女だ。


 この服装の組み合わせと顔立ちを見れば間違いないだろう。そしてあの白はワイシャツの白だったのか。


 これ以上何を言うべきだろう?


 自分を殺しに来た勇者に対して自分は何を言うべきなのか。


 そしてこれから何をするべきなのか?



 微動だにしない少女は一言も発していない。白い煙を上げながら、ただただ俺の目を真っ直ぐに見つめている。


 お前は何を考えているんだ?


 その目からは何も読み取ることが出来なかった。怒っているのか怯えているのか諦めているのか、何も分からない。



 もともとは「隷属」のスキルを使って絶対に裏切らない仲間を作るつもりだった。


 しかしそれはなぜだか失敗した。


 スキルを使った経験はそれほど多くは無いが、無能を使った時にしろ鑑定を使った時にしろ、そこには確かにスキルを使ったと言いう実感があったものだが、あの時は何も感じなかった。


 悪魔の天敵である勇者をどうするべきか、命令に従わないばかりか殺しに来た勇者をどうするべきか。


 答えは1つしかないような気がする。



 強い鼓動。


 視界がぶれるほどの強い振動が、腹の中から来て全身に響き渡った。


「なんだ、何が起きた?」


 またレベルアップの時のような激痛が来るのか?



 殺せ。


 見知らぬ声が突然、脳を打ちつけた。


 殺せ。


 見知らぬ誰かが俺の脳内で声をあげていた。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。


◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆


特殊スキル 無能 Lv3

特徴:自分自身から30m以内の生き物に「無能」のバッドステータスを付与して無能状態にする。無能状態になると全ステータスが90%ダウンし、運は-100になる。ただしターゲットとして選択できるのは1体に限る。下位能力による付与阻害や能力低下の影響を受けることはない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ