24話
黒部 圭太:何も知らずに異世界に飛ばされた、少し馬鹿でかなり生意気な少年。最初の村で無能と宣告され、追放された。相手を「無能」にするスキルを持っている。
雨も風も雷もますます酷くなっているはずだ。今はその全てを感じることは出来ないけど。
白。
心待ちにしていた白が目の前にある。触れることが出来ている。それなのに何もできない。
三連打の腹打ち。息を全て吐き出させてからの締め技。くの字に折れ曲がった体勢はフロントチョークをかけるのに最も適している。考えている、相当に考えている。
勇者。
攻撃の瞬間まで姿がほとんど見えない。川石で敷き詰められた河原であるにも関わらず足音すらもしない。
反則級のスキルだ。
またしても落雷。日本にいた時には音と光と電化製品への影響でしか意識したことは無かったが、今は当たるかもしれないという恐怖がある。
だというのに勇者のフロントチョークには一切の乱れがない。
おかしい。
例え猛獣であろうが、雷が近くに落ちたなら正常ではいられないはずだ。それなのに勇者は全く動揺しないようだった。
相変わらず俺を殺すべく締め上げ続けている。
どう考えてもあり得ない。納得できない。
勇者にしてみれば、突然の出来事。
街燈も月明かりもない暗闇に台風の様な風、雨、雷の河原。いきなり何もかもが違う環境に来たはずだ。
それなのに即座に戦闘?目の前にいるのが自分に害をなすものだと、即座に理解して殺しに来る?
どんな精神力だよ。どんな状況判断力だよ。どんだけ冷静なんだよ。慌てふためいて、混乱して、パニックを起こして、何もできないだろ普通は。
俺の作戦は完璧だった。召喚した直後に「隷属」のスキルで捉える。普通に考えたら対応できるわけがない。
それなのに完璧に対応している。これは明らかに常軌を逸している。
勇者。
だから勇者?だからこそ勇者なのか?普通の人間にはできない事をやってのける、それが勇者なのか?それが勇者だとしたら………。
馬鹿。
そんな化け物と敵対するなんて相当な馬鹿だ。馬鹿すぎるよ黒部 圭太。
しかも自分自身で召喚するなんて。笑えるほどの馬鹿だ。哀れ、馬鹿な悪魔は勇者に殺されてしまいました、か………。
死んだらやっぱ、地獄なのかな………悪魔だし。
でも別に自分の意志で悪魔になったわけじゃない。悔い改めれば大丈夫じゃないか?たとえ地獄だとしてもあんまり厳しくない地獄にしてくれるかも。
いや、無理か。
豚を殺したし………あの豚本当にクソだわ!どんだけ俺に迷惑かけんだよ、クソが!というか大司教を殺したら地獄がきつくなるなんてことはないよな?
っていうか「隷属 Lv10」ってなんだよクソが!俺はちゃんと掛けたはずだぞ。従うどころか殺しに来てるじゃねえかクソが!全然役に立たねえわ。クソが!すげー使えねえクソスキルだな、本当。
クソクソクソクソ全部クソだ!
勇者………どんな顔してんだ?
怒り?笑い?それとも無表情?どんな顔でお前は殺しに来てるんだ?
いつまでもぬるま湯のような気持よさの中で考えていたい気持ちもあるのだけど、フロントチョークはそれを許してくれない。意識は朦朧を通り越して夜の闇よりも暗くなっていく。
死ぬ。
死んじまうぞ。
早く、早くしてくれ。頼むーーー
無能!
その瞬間。
目の前一帯が白い光で覆われた。
白。
救済の白が舞い降りた。
それは落雷。
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特殊スキル 無能 Lv3
特徴:自分自身から30m以内の生き物に「無能」のバッドステータスを付与して無能状態にする。無能状態になると全ステータスが90%ダウンし、運は-100になる。ただしターゲットとして選択できるのは1体に限る。下位能力による付与阻害や能力低下の影響を受けることはない。




