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20話 -白-


黒部 圭太:何も知らずに異世界に飛ばされた、少し馬鹿でかなり生意気な少年。最初の村で無能と宣告され、追放された。相手を「無能」にするスキルを持っている。


 


 目の前が真っ白。


 長い時間正座をした時みたいな痺れが全身に纏わりついている。少し楽しい。まるで雲の中にいるみたいなふわふわ感。


 だけどちょっと寒い。


 なにこれ?確か俺は………えーとなんだったか。


 そうだ!勇者を呼び出したんだ、そして隷属の魔法を発動して勇者を奴隷にした。ここまでは間違いない。


 体が勝手に動いた。


 長い定規をぶるんぶるんさせている時みたいな感じで揺れている。ちょっとおもしろいけど怖い。何で勝手に動いているんだろう。


 不思議な感覚。そもそも動かそうと思ってない。おかしいぞこれは。一体何が起きてるんだ。


 真っ白だった視界に黒色が混じっていく。


 空気の音。


 自分の体は何もないところを勝手に蹴った。


 かなりの速さ、力強さだ。レベルアップっていうのはすごい。こんな力強い蹴りを打てたことは一度もない。まるで那須川天心だ、メイウェザーには負けたけど。


 顎に衝撃。


「おごっ!?」


 顎の根元からゴリッという音がした。


 そしてまた蹴った。


「なぢごで」


 口が回ってない事に衝撃を受けた。


 徐々に、視界が開けていく。先ほどまで見ていた光景。夜の暗さの中に激しく流れる川。


 そうだ、俺は河原にいたんだ。見ろ、考えろ、何かあるはずだ。この異常事態を作りだした何かが。


 口の中に違和感。


 血だ。


 舌を回してみたら鉄の味がした。


 口の中が血で一杯だ。吐き出したらまたすぐに口の中に血が湧きだしてきた。どれだけ深く切れているんだ。


 怖い。


 これはやばいぞ、体が痺れていて力が入っていない。ちょっと前までは少し楽しくすらあったのに周りが見えてくるにしたがって恐怖が押し寄せてきた。


 手を握って開く、握って開く。


「動け動け動け、俺の体」


 喋れる。


 段々と少しずつ手に力が無いるようになってきた。真っ白だった視界も今はクリアだ。


「考えろ、考えろ俺」


 雷?いや、それはおかしい。雷で顎がゴリッていうか?それにさっきの衝撃は横から来た、だから雷は絶対に違う。


「襲われてる!」


 そう意識した途端に一気に視界が開けた。


「バレルの手下だ」


 姿が見えない。


 確実に襲われているはずなのに相手の姿が見えない。見えるのは暗闇といつもの河原と轟音を立てる川。


 自分はどこの誰に襲われていてなぜ蹴っているのか。何が起きているのか全く分からない。


 勇者。


「そうだ!勇者だ」


 勇者を召喚したんだ。そしてあの時、確かにあの靄の中に人が居た。勇者召喚は成功した、そして俺は隷属の魔法を確かに発動した。


 勇者はどこだ?


 勇者、勇者は………。



 背に走る寒気。


 僅かな曲線を持った白い光の閃光が、暗闇の中に一瞬だけ瞬いた。


 その先には圭太の顎がある。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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☆5なら踊ります。


◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆


特殊スキル 無能 Lv3

特徴:自分自身から30m以内の生き物に「無能」のバッドステータスを付与して無能状態にする。無能状態になると全ステータスが90%ダウンし、運は-100になる。ただしターゲットとして選択できるのは1体に限る。下位能力による付与阻害や能力低下の影響を受けることはない。


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