181話 ー進化ー
「薺!!」
俺の声とほぼ同時に薺の姿が男たちの目の前から消えた。
「ラムダ!貴様には武人としての誇りがないのか!」
少し前にあいつが俺に言った言葉そのままを返してやる。
「黙れ小僧!」
「お前はなんて情けない男だラムダ!薺には手も足も出ず、挙句の果てに汚い手を使った上にあっさりとよけられるとはな。剣一本で正々堂々勝負するという演技力でお前はSランクまで成り上がったのか」
「黙れ!!」
「せめて武人としてまともな戦いで死ねるように、わざわざ薺に相手をさせてやったのに、これほどまでにみっともない男だとはな!」
「黙れと言っている!」
「どうしたお前らなぜ動かない、薺を探しているのか!?」
ラムダと6人の男たちは一か所に集まって全方向を警戒している。
「今にもどこからか斬りかかって来るんじゃないかと恐れているのか?だからそんな小動物みたいに身を寄せ合っているのか?恐ろしくて動けないか?どうしたラムダ!武人!何とか言ってみろ」
「黙れ黙れ黙れ!」
こいつそればっかりだな。
「喜べ屑共、これを食らうのは恐らくこの世界でお前らが初めてだ!」
そう言って俺は筒状のソレを黒渦から取り出した。
なかなかの重量感。
小銃んを合わせ、引き金を引いた。
発射。
爆発する轟音と煙と風。
飛翔した握りこぶしくらいの大きさの光の玉が男たちの中心にいるラムダに向けて到達した。
爆発。
「耳痛っ!」
ここまで発射音がデカいとは想像もしていなかった。両耳をマッサージして耳に感じる鈍痛を何とかしようとするが恐らく効果はないだろう。
耳鳴りの中であたりを見渡すと、本物の群衆たちの全員が目をひん剥いて口を大きく開けて固まっている。老若男女すべての人間が同じリアクション。
人は近くでロケットランチャーを打たれるとこんな顔になるのか、これでまた俺はひとつ賢くなった。
「風のスキルを使えるか?」
隣にいる薺に向かっていった。
確か今まで一度も使ったことのないスキルのはずだが、あっという間に突風が吹いて、到達地点から発生している山のような大きさの土煙をゆっくりと飛ばした。
「じめんが………そ、そんな、こんなことって………」
群衆の中の誰かの細い声が聞こえた。
そこは巨大な隕石でも落ちたかのように巨大なクレーターになっていて、男たちの体はどこにも見えなくなっていた。
本当に当たったのか?
少しの間だけ疑問に思ったが、宙に浮いている魂がそれを証明している。あの色がついている魂は特殊スキル所持者の魂。ラムダの魂だろう、そして普通の白い魂が6つ。途中から乱入してきた男たちの魂、間違いなく直撃したはずだ。
喰らった。
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特殊スキル「狂暴なるラピスラズリ」
◎他者の魂を喰らい己の魂へと取り込み、直接的に能力を上げることができる。
◎特殊スキル所持者の魂を取り込んだ場合、特殊スキルを取得することができる。
◎取り込まれた魂は全ての力を失う。力を失った魂は生前に犯した罪に応じた日数分、身を焼かれるかの如き苦しみを味わった後で、地獄へと強制的に送られる。
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力が直接取り込まれていく。
そしてーーー
≪特殊スキルを獲得しました≫
<特殊スキル 先達に真っ赤な果実を>
◎すでに所持しているスキルのレベルをひとつ上げることができる。
◎使用後にこのスキルは消滅する
「おお!」
初めてのタイプのスキルだ。今持っているスキルのなかでどれのレベルをあげるか?それなら答えはひとつだーーー
「無能!」
≪特殊スキルが消滅しました≫
「鑑定」
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特殊スキル 無能 Lv6
◎自分自身から500m以内の複数の存在に「無能」のバッドステータスを付与して無能状態にする。(無能の世界)
◎無能状態になると全ステータスが90%ダウンし、運は-100になる。
◎下位能力による付与阻害や能力低下の影響を受けることはない。
◎スキル所持者よりも格上の対象に対しても、力の差に応じて相応の無能状態にすることができる。(無能の花びら)
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「複数………これはでかい」
俺は拳を握り締めた。




