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15話 -疑問-

黒部 圭太:何も知らずに異世界に飛ばされた、少し馬鹿でかなり生意気な少年。最初の村で無能と宣告され、追放された。相手を「無能」にするスキルを持っている。



 

 事件現場から大きく離れた河原で黒部圭太は息を吐いた。あそこから離れられればどこにいてもいいのだけど、それでもここへ戻ってきてしまった。


 闇の中を大きな川が悠然と流れていく。流れを照らしているのは満天の星空だ。


「ふー」


「無能」状態になったバレルが転倒し斜面を転がっていった、あの衝撃が忘れられない。


 そしてレベルアップを知らせる声。衝撃的なことが重なったせいで頭が回らなかった。


 そして「無能」を知った。


 プーチャル教の大司教バレルは死んだ、死んだじゃない、殺した。


 そうじゃないとレベルアップした説明がつかない。「運は-100になる」何度鑑定の説明を読んでもそう書いてある。バレルは運悪く石に足をられて転倒し崖から落ちた。


「それにしては………」


 動揺が無い。


 やる前はあんなに不安だったのに、実際にこうなってしまったら驚くほど後悔の気持ちが湧いてこない。


 それよりもレベルが上がったことが嬉しかった。ゲームみたいなこの世界で生きていくには絶対に必要なことだ。


 疑問。


 何故あんなにも沢山の「レベルがあがりました」という声が聞こえたのだろう。


 普通に考えて大幅にレベルが上がるときというのは、強力な敵を倒した時におきるはずだ。しかしバレルがそんなに強いはずがない。動きが只のデブの動きだった。

 

 今の圭太が答えにたどり着くことはできない。

 

 この世界において高位の貴族や聖職者は力のある者とパーティーを組み迷宮に挑む。だが実際に戦うわけではなくただその戦闘の場に居るだけだ。


 実際に戦うわけではない。にもかかわらず、この世界ではそれによって経験値を得てレベルを上げることができる。


 この戦わずに経験値を得るという方法でレベルを上げるのが、この世界では当たり前に行われている。いわゆる「寄生」というやり方。


 一説によれば生物が死亡すると、その生物がもっている生命エネルギーが体から抜けだし、近くの生物に吸い込まれてレベルが上がるという考え方が主流だ。


 何故レベルを上げようとするかと言えば、彼らにとってレベルの高さはアクセサリーの様に自身を飾るものであるからだ。


 この世界で鑑定というスキルはそこまで貴重な物ではなく、ある程度は持つものの多いスキル。だからこそ、そこに表示される数字というものが意味を持つ。


 比べたくなるから。


 優劣を競うというのはどこの世界にでもある事。ましてそれが数値というはっきりとしたものであれば、それは当然のことだ。


 それは金と権力を持つ者達にとっては意地の張り合い、見栄の張り合いになる。レベルが高いものほど高貴であると考え、互いの数値を競い合い、優劣を測ることが当然となっている。


 レベルをより高くしようと思えば、強力な魔物と戦うことが必要になり、強力な戦士を雇う事が必然となってくる。彼らは足手まといでしかないから、傷ひとつつけずに守るだけの力が必要だからだ。


 力こそ全てともいえるこの世界において力を持った者は、まさに引く手数多の状態で、わざわざ値段を下げる必要が無いからだ。


 そうすると結局、レベルの高さは資金の豊富さと、強力な戦士との繋がりを証明するものでもあるのだ。金と力、それがレベルの高さに集約されている。


 もちろんその考えは教会内にも浸透していて、バレルもレベル上げには熱心だった。高い地位に就くためには鑑定で表示される数字というのも非常に大きく影響したからだ。


 バレルも時間を見つけては迷宮に挑み経験値を稼ぎレベルを上げていた。


 ただ彼には素質が無い。レベルが上がってもステータスの上昇は微々たるものであり、いくらレベルが高いとは言ってもその戦闘能力はそれほど大したことが無い。それでも数多の戦で経験値を蓄え、レベルが高いことは事実である。


 いわばバレルというのは経験値で膨れ上がった豚。


 だから圭太は勝利によって、今までに彼が蓄えた大量の経験値を得ることができ、大幅にレベルを上げることができたのだ。


「まあいいか、とにかくレベルは上がったわけだからな。けど………だったらなんでだよ」


 満天の星へ向かってジャンプしてみても、跳躍力は前と変わらない。


「強くなってないじゃん」


 レベルが上がったら強くなる。そのはずなのに何も変わっていないように思える。ここまでくる道中でも相変わらず息切れしていた。


 どうして?


「そうか、そうだよな………」


 だからその疑問を解決するためにスキルを発動した


「鑑定」


 大きな川には大きな魚影があった。





最後まで読んでいただきありがとうございました。


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特殊スキル 無能 Lv3

特徴:自分自身から30m以内の生き物に「無能」のバッドステータスを付与して無能状態にする。無能状態になると全ステータスが90%ダウンし、運は-100になる。ただしターゲットとして選択できるのは1体に限る。下位能力による付与阻害や能力低下の影響を受けることはない。

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