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2月13日(昼)

「つまりお前は江戸時代から続く由緒正しい殺人一族の末裔で、プロの殺人鬼なわけだ」


「何回確認するつもりなの? いい加減それで納得してほしいんだけど」


無茶を言うな。


自分で言っていてなんだが、プロの殺人鬼って……。B級サスペンスか安いミステリ作品みたいじゃないか。


「しかも殺し屋とは別なんだって? わけがわからない」


「父さんはああ言うけど、やってることは伊藤君のイメージする殺し屋で間違いないと思うよ。老舗だから無駄にプライドが高いってだけで」


「……家族で殺し屋とか、ゾルディック家かよ」


「まあ、そんなところだね」


冗談のつもりが肯定されてしまった。この調子だとそのうち念能力とか登場するんじゃないの?


「……水見式、やっといた方がいいかなあ」


「伊藤君は調べるまでもないね。特質系だよ、絶対に」


まあ不死身だからね。それにしても小鳥遊は随分詳しいな、ハンターハンター好きなんだろうか。


小鳥遊はクラスメイトだが、彼女について大したことは知らなかった。学校では、大人しいと賑やかの中間的なキャラで通っており、特徴がない。顔は可愛い方だが、切れ長の目は好き嫌いわかれる感じ。頭は良いが、授業態度はイマイチ。それくらい。


そんな小鳥遊が殺し屋一族の跡継ぎだったなんて、つくづく他人のことはわからない。


そして僕がそんな殺し屋の標的になり、しかも何故か昼食をご馳走になっているこの現状の理由もまた、わからない。


「和食は嫌いだった?」


「そういう問題じゃない」


殺人事件騒動で今日も学校は休みになっていた。僕はせっかくなので昼まで惰眠を貪ろうと思っていたのだが、けたたましい電話の着信音で起こされ、小鳥遊に呼び出されて今に至る。


小鳥遊の手作りらしい和風の昼食を食べつつ、雑談を続ける。小鳥遊が漫画好きらしいことはわかったが、他のことは何もわからない。


「……小鳥遊」


「何?」


「僕の顔に何か付いてる?」


そう聞いたのは、小鳥遊がやけに僕の顔を覗き込んできていたからだ。小鳥遊は特に表情も変えぬまま、


「毒を盛ってみたんだけど、死にそうな感じはない?」


と言った。


「ーーーーーーッ!!」


僕は口に入れかけたご飯を勢いよく噴き出す。


「伊藤君、汚いよ」


「いや!! 悪いのはお前だから!! 毒って、ちょっと!!」


気付かずに食べていた僕も僕だけど。普通毒薬って変な味がしたりするもんじゃないの?


「使った毒は超即効性の特殊なものだから、死ぬならとっくに死んでるはずだよ。安心して」


いや、安心してと言われましても。


「とりあえずわかったのは、毒でも伊藤君を殺せないってことね。中毒症状すらあらわれないのは、それよりも早く肉体の修復が進んでいるからかな」


小鳥遊は冷静に見解を述べながら、メモ帳に何か書き込んでいる。なんだそれ、僕専用デスノートか。


「他の毒なら効くかな? あ、伊藤君、そのお味噌汁飲んでくれる?」


「嫌に決まってるだろ!?」


「……女の子の手料理を断るなんてあり得ないよ、伊藤君」


「これは毒物って言うんだ、手料理とか、そういう素敵なものでは断じてない」


まったく……。


まさかこれから毎日こんな目に合うんじゃないだろうな?

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