表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/41

21-2.「ノアって黒石のことどう思ってんの?」

21-2.バレンタイン


 夜七時半、ようやく女子連中の受付を終え、菓子の山に苦戦しながらどうにか生徒会室の扉を開ける。打ち合わせテーブルの上に、どっさり菓子類が積まれていた。その量におののく。

 ため息をついて、抱えてきた菓子をテーブルの上の山に足し、備品棚からポリ袋を取り出す。何枚いる。二枚か三枚か。

 菓子の山に向き合ったとき、生徒会室の扉が開いた。ノアと黒石だった。

「お前ら仕事終わった?」

「はい、終わりました」

 聞けば黒石が答える。よし、それならば。

「じゃ、私用で悪いけど手伝って。生ものはこっち、賞味期限が長い既製品はこっちに入れて。ラッピングやら紙袋は捨てるからこっちな」

 中身を確認しながら、三人でガサガサ仕分けていく。

「会長、すごい量ですね」

 黒石が言うので脅してやった。

「会長効果だな。お前も来年こうなるぞ。覚悟しとけ」

「俺は会長ほどモテませんよ」

 黒石が肩をすくめる。

「へぇ。お前今年何個もらったの?」

「ええと……二十前後ですかね。ほぼ義理ですが」

 二十か。確かに去年の俺より少ないな。

 紙袋からクッキーらしきものを取り出して、ノアがのんびりと言った。

「会長も、黒石くんも、かっこいいですから。人気者なのはよくわかります。はい」

 黒石が無言になった。さっきより手早く菓子を仕分けていく。

 若干顔が赤いような。ははぁ。やはり黒石、妙な趣味か。このポンコツを好きなのか。

「黒石、かっこいいってよ。良かったな」

 茶化すと、途端に黒石が反論した。

「違います。会長のついでに言われただけです」

 ムキになった様子がおもしろいのでさらに突っ込む。

「へーえ。あ、そう。ノアって黒石のことどう思ってんの?」

「黒石くんですか。そうですね、ええと」

 ノアの手が止まるので会長として命じる。何事も訓練だ。

「ノア。話しながら仕分けろ。二つのことを同時進行できるようになれ」

「は、はい。お話しながらお仕事ですね。はい」

 ノアが再び菓子に手を伸ばす。

「ええと、ええと、黒石くんですね。黒石くん。黒石くん……」

 同時進行が難しいのか、ノアが黒石の名前を繰り返す。黒石がさっきより赤くなって早々とギブアップした。

「会長、やめてください。乃亜さん、言わなくていいから」

「あ、ええと、この場合はどちらのご指示を聞いたら……会長が黒石くんより上なので、会長のご命令を優先ですね。はい。ええと、黒石くんのことですね。黒石くんは、ですね」

 おお。このポンコツは指示命令の優先順位もつけられるようになったか。

 さすがに黒石がかわいそうになったので止めてやる。

「ノア、ストップ。言わなくていい。菓子をさっさと仕分けろ」

「あ、はい。言いません。仕分けます。はい」

 ノアが慌てて仕分けに専念する。

 そんな調子で菓子を分類し終えたところで、ノアが自分のカバンからビニル袋を取り出した。

「会長、あの、お荷物になってしまいますが、私からもバレンタインです」

 はぁ。

 ビニル袋を受け取ってのぞき込む。妙な物がサランラップに包まれて入ってた。

 ゴルフボールくらいの白い固まりが三つ。ひとつつまんでみると、柔らかい。

「……これ何? お前が作ったの?」

 このポンコツが作った物など食べたら腹を壊しそうだ。

「物としましては、マシュマロですね。マシュマロをレンジで溶かしまして、レーズンと混ぜて丸めました。母と一緒にですね、作りました。我が家直伝のお菓子です」

 あの料理上手なノア母と一緒に作ったか。それならまぁ安全か。

「へぇ。黒石の分は?」

「あ、ええと、すみません、みなさんの分もと思ってたくさん作ったのですが、うっかり家族で食べてしまいまして、それだけしか、なくなってしまいました」

 俺はひとつだけ取り出して、ビニル袋ごと残りをノアに返す。

「黒石にやれ」

「あ、はい、では、黒石くん、もしよろしければどうぞ。お気に召すと良いのですが」

 ノアが黒石にビニル袋を差し出す。黒石は冷静な顔を装い、受け取っていた。

 昼食抜きで腹が減っていたので、その場でサランラップをむいてかじる。

 なるほど。マシュマロのなかにレーズンが隠れている。腹持ちが良さそうだ。

「うまいな、これ。気に入った」

「そうですか、ありがとうございます。嬉しいです」

 ノアがにっこり笑う。その日は結局三袋のポリ袋を持って、俺は学校を出た。

 家に帰ると、夜のニュースで、明日は大雪になると天気予報が流れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ