16.「当選確率」
16.クリスマス前
クリスマスを前に、女子からのメールや告白が増える。女ってのはほんとにイベントに釣られるな、時間をとられる俺の身にもなってくれと思いつつ、対処していく。
放課後、一年の女子からメールで教室に呼び出されたので、行って告白を断り生徒会室に戻るべく階段を上っていると、降りてくる山本と出くわした。
「また告白?」
冷めた目で聞かれて、ため息をつく。
「この時期は増えるな。クリスマス用に彼氏が欲しいらしい。俺は人形じゃねーっつんだ。相手が必要なら暇な男を当たった方が当選確率が上がると思うが、そこんとこ女子はなかなか理解してくれんな。特に一年女子」
ここのところ連続で呼び出されていたので、つい愚痴が出る。
「当選確率ね」
山本もため息をつく。
「なに、お前もこの時期大変? お互いさまだな」
山本は容姿がいいし、この強気な性格に目をつぶろうという男も多そうだ。
聞くと、山本に睨まれた。あー、怖。
セクハラだの何だの言われる前にさっさと退散しようと歩き出すと、山本もついてくる。
「山本、帰るとこじゃなかったの? 生徒会室に用事? 誰かに伝言なら俺が伝えとくが」
階段を上りながら聞いてみると、山本がまたため息をつく。山本がため息とは、珍しいな。
「悩み事?」
「まぁ、悩み事ね」
「そっか。悩み事か」
ノアに習って、同意と繰り返しをしてみる。
「会長って、今週の金曜、どうするの? 終業式のあと」
何の質問だ。内心首をかしげて答える。
「終業式のあとは仕事だな。決済やら駆け込み予算要求やら、どうせ出てくるだろ」
「仕事のあとは?」
ノアの家のクリスマスパーティだ。
「んー……」
言っていいのかどうか。あいつ、養子だって誰にも言ってないみたいだし、やめとくか。
「仕事だな」
もっとも当てはまる回答をしておく。ノアの面倒をみるのは俺の仕事だ。
「仕事の後も仕事?」
山本の声が尖る。
「ああ。その日は仕事で埋まってる」
「じゃぁ前日は? 木曜」
はぁ。
「授業が終わり次第、仕事だな」
「仕事のあと」
一体何だ。俺のスケジュールの話か。
「山本、何か相談事? 何分ぐらい必要か言ってくれれば、時間空けるけど。生徒会もそんなに詰まってるわけじゃないし」
「何分って」
山本が顔をしかめる。
「分単位で片づかないなら時間単位でもいいが。何時間?」
「じゃ、二時間」
結構長いな。深刻な話か。
「生徒会室でいい?」
聞くと、また睨まれた。だから何だ。聞かれたくない話か。ノアじゃないんだからそこまで察せないぞ。
「わかった、会議室な。空いてる部屋、探しとく」
「マックがいい」
はぁ。あんな不特定多数が出入りする場所でいいのか。
「んーと、じゃぁ、マックで二時間な。授業が後わったらマック」
木曜だから授業が終わるのが五時半だろ。二時間なぁ。マックと学校を往復する時間に、二時間を足す。生徒会室に戻れるのは最終下校時刻の夜八時ちょい手前か。木曜の仕事が押すと金曜に響く。金曜は六時には学校を出たいのだが。
「山本さぁ、明日じゃだめ? もしくは今日これから」
「やだ。木曜」
なぜ木曜にこだわる。
しょうがなねぇなぁ。生徒会仕事は時間内にというポリシーに反するが、木曜片づかなかった分は金曜の昼休みにやるか。
「わかった。そしたら木曜な」
「うん」
山本は素っ気なく頷いて、帰っていった。




