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住宅街のはしっこ、道路沿いに面したところにナナイロ荘というのがある、、、
「聞いてくれよ、虹さん!」
202号室の住人は隣の201号室からゴミを持ち出てきた住人の胸ぐらを掴んだ。
「、、、いきなりなんだ」
「今日のごみがなんだか分からない!」
虹さんと呼ばれた人はゴミを持ったまま掴んだ奴の横っ面をそれではたく。
「汚なっ」
「今日は燃えるごみの日だ。それぐらい覚えろ」クロヤギさん
「なんか今、貶された気がする、、、」
203号室の住人はゴミを持ち、メガネをクイっとあげる。
「早くはなせ、青」
「、、、」
「うわぁ、ごめんなさい!虹さん!」
「朝っぱらから大声出すんじゃない!」
「裕子さん」「大家さんっ!」「叔母さん!」
パコッと名簿帳みたいなもので3人の頭を順に叩く。
「あんたら、さっさとゴミを出しなさい!青、あんたは早くごみの日を覚えなさい!」
青はまた裕子に名簿帳で頭を叩く。
「口答で言われて覚えるのは大変ッスよ、、、」
「何いってんの?シロも玄も覚えてるよ」
虹村裕子、ナナイロ荘の大家でこの荘の名前を決めた人だ。次いでに、201号室の住人虹村シロの叔母だ。
202号室に住むのはごみの日をきちんと覚えてない黒柳青。その隣203号室に住むのがメガネをかけた青柳玄。
虹さんは虹村シロのことである。
「それより大家さん、赤崎のヤローが俺んとこにゴミを置くんすけど」
赤崎緑102号室の住人、厨二病患者。今はとあるスポーツアニメの登場人物の真似事をしている馬鹿。
「赤崎か、、、あいつには私も関わりたくはないね」
4人でごみ捨て場へと歩く。
「叔母、、、裕子さんなんで関わりたくないんだ?」
「あんたらは知らないだろうけど昨日の夕方、、、」
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コンビニから帰ってきた虹村裕子は201号室の前で赤崎緑に会った。赤崎は裕子を見るといきなり「僕に逆らう奴はオヤコロだ!」と叫んで部屋に入ったという。
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「私は何がなんだか分からず固まったね」
「裕子さんはまず赤崎の親じゃないよね」
「そうなのよ~。困ってるのよあの子には」
「7時55分」玄が呟いた。
「後5分で会議が始まる!」とシロが慌てて出掛ける。
「玄っ!俺らも仕事だ!」と青が叫ぶ。
「そんなに慌てるなクロヤギ。依頼は来ない」
「ふざけんな!依頼がいつきてもいいように早く行くんだよ!それと、クロヤギって呼ぶな!」
「行ってらっしゃい 」
3人が仕事へ向かうのを確認すると裕子は赤崎の部屋へと向かう。
「起きな、朝だよ!」
厨二病患者の赤崎緑の弱点『朝に弱い』
「小学校ぐらいちゃんと通いな!」
赤崎が通う小学校は目の前にある。
「フフフ、我が眠りを邪魔するものはこの邪王心眼で、、、」
パコッと朝の一発、名簿帳で頭を叩く。
「、、、おはようございます。裕子さん」
「遅刻したらどうなるか分かってる?」
「ごめんなさいーー」
赤崎は逃げるようにして学校へ向かった。
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ナナイロ荘から10分程の所に商店街が存在する。そこにある喫茶店『さぎぬま』に青と玄がいる。
「依頼来てない?」
「来てないです」
間髪いれずに答えたのは『さぎぬま』の従業員でコーヒー入れるのがすごくうまい鷺沼碧。
彼女はマスターの一人娘で可愛い子だ。
「マスター、スパゲッチィ」
「何お前まだスパゲッティ言えないの?」
フフフ、と碧が笑う。
「別にいいだろ! くそぅ、、、」
恥ずかしさからか青はスパゲッチィにかぶりついた。
カラン、『さぎぬま』のドアが開かれ男2人が入ってくる。
それを見た青は「匂う」と一言行った。
「どうした?」
青の呟きが聞こえなかった玄が聞く。
「いや、なんでもない」
自分の気のせいかもしれない。青はそう思ったのだ。
「ちょっと吸ってくる」
青は胸ポケットの煙草を手に店の外へ出ていった。
男2人は美味しい珈琲を飲みながら相談をしていた。
それを横目に玄はカフェオレを飲み様子を見る。
「匂うか、、、」
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玄と青には不思議な能力がある。玄と青以外には通っていた学校の生徒会長と会長の妹が持っていた。
2人には使命がありその使命を果たした結果、能力は消えていったという。
妹さんは元々その能力をあまり使っていなかったので問題はないらしい。会長本人も「特に必要はなかったから別に問題はない」とのこと。しかし会長の能力はたまにでてくる。「必要な時にでてこないけどな」とため息まじりに言っていたのを玄は覚えている。
能力はスキルというらしい。けして他人に言わないこと。と釘をさされたが酔っぱらった青が虹村シロに言ってしまった。シロは「その能力があるなら探偵になって手伝ってくれ」と言ってきた。元々警察官だったので二つ返事でシロの手伝いをすることになった。
探偵の話は酔っぱらった末のことだと思っていた玄だったが、後日警察署へ行くと上司から「特別退職」を言い渡された。シロはあの日酔っぱらってなどいなかった。青と玄、シロは同じ職場(警察)に勤めていたが階級の差というものがあり、青と玄はシロの下で働くことが出来なかった。
「特別退職」ならばたとえ警察官ではなくなってもシロの手伝いということで自由に出入りができる。
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「♪~~」携帯の着信音が鳴る。
携帯は二つ鳴った。一つは玄の携帯、もう一つは、、、さっき入店した2人組の1人だった。
お互い恥ずかしそうに会釈をし電話に出る。
電話を掛けてきたのはシロだった。
『玄か!よかった。青が電話に出なくてどうしようかと思っていたんだ』
「青なら煙草を吸いにいってます」
『煙草か。いい加減止めればいいのに』
「それで、どうしたんですか?」
『いやな、先月2日の事件覚えているか?』
「勿論、覚えてます。それがどうしたんですか?」
『容疑者を先週捕らえたんだが昨日逃亡して、、、』
「なにやってるんですか!」
『悪い。どうやら内通者がいたらしいんだ』
「その容疑者を捕まえろと」
『そうだ。次いでに内通者も捕まえてほしいんだ』
「、、、分かりました。容疑者の特徴を教えてください」
2人組の様子を見ながら立ち上がり店の外にいる青の所へ向かう。
容疑者は2人。1人は肌が黒くがたいがいい。もう1人は金髪の爽やかそうな青年とのことだ。
店内にいた2人組の1人がその特徴に当てはまるがシロが言っていた「よく2人で行動する」というのに当てはまっていなかった。しかし警戒は怠らない。
もう1人が長髪だったのでウィッグをつけている可能性がある限り、、、
青は路地にいた。地図上には載らないないとみなされている路地にいた。
声をかけれなかった。理由は分からない。煙草は吸っていない。
1人、空を見上げたたずんでいる。
「赤と青と黒の匂い。赤は血、青は水、黒はなんだろ」青はそう言っていた。
「玄、どうした?」玄に気付いた青が聞く。
「、、、虹さんから容疑者が逃亡したから捕まえてほしいって依頼が。後、その逃亡に協力した奴も捕まえてほしい」
「その容疑者の特徴は?」
玄は青に虹さんから聞いたことを全て話した。
「ふーん。容疑者はさっきの2人組だな」
「何故そうだと?」
「匂いだよ。被害者は刃物で殺され、水のそばで見つかった」
「そう言ってたね」
「その赤と青の匂いがした」
「俺はしなかったけどな」
「眼鏡かけてるからだろ」
青は店内にまだいるであろう2人の様子を見に行く。
「玄、いないぞ」
「なんだって!」
玄も店内を覗くが先ほどの2人はいなかった。
「さっき慌てて出ていったよ」碧はそう告げる。
「青、さっき俺と同じタイミングで電話がきてたんだ」
「その電話だな。逃げろ、と言われたんだろう」
玄はシロに電話を掛ける。簡単に報告するとシロは近くにある学校の生徒たちの心配をした。
『さぎぬま』の近くには中学校がある。
この時間はまだ授業を受けているはずだ。
「青、中学に行くぞ!、、、ってもう居ねえし!」
遠くの方に青を見つけた。
玄は青を見失わない内に追いかける。
青は足が早いので追い付くことができない。だが玄は目が良い。良すぎる。眼鏡でその良すぎる視力を防いでいる。目が良いことは良いことだが良すぎることは悪いこととなることがある。
青は曲がり角を曲がった。玄も走るスピードを早めて見失わないようにするが曲がったときにはもう居なかった。
仕方がないので玄は眼鏡を外し青を探す。
目に負担がかかるが致し方ない。
ビルや行き交う人々が透けて見える。
青を見つけた。彼は逃げた2人組を追いつめていた。玄は眼鏡を掛け青のもとへ急ぐ。シロに電話を掛けようと携帯を取り出すが目が疲れているので操作が出来なかった。
「なんなんだよ、お前!」
「黒岩大我、桜井喜一、お前ら2人を川崎榛名殺害の容疑及び警察署からの脱走で再逮捕する!」決め顔のような顔で言う。
「質問に答えろ!」
「クソがっ!」
桜井が殴ろうと助走をつけるがそれをなんなく避け「隙だらけだ」と桜井の背中を肘で打つ。
桜井はそのまま地面に倒れる。
「やべっ、力入れすぎた」
その様子を見ていた黒岩の表情は徐々に青ざめていく。
「やめっ、近寄るな!」
ザッザッザッ、一歩一歩黒岩に近付いていく。
「くろやぎ!」
キキキと妙なおとをたて青は声のした方を見る。その顔は暗く目は赤く狂気のようだった。
「目を冷ませ、くろやぎ」
玄はゆっくりと青に近付いていく。
「大丈夫だから」
玄は優しい目をして青に近付いていく。
「くろやぎ!青柳!」
突然、赤崎が大通りから姿を表した。
「!?」
「落ち着けくろやぎ!」
赤崎の声には不思議な能力があり、暴走した青を止めることができる。
しかし今回は違った。
青は玄を無視し黒岩を殴りに行く。
「くろやぎ、、、」
赤崎が青を呼ぶと赤崎の持っていた黒い縄が透明になって青の足に絡まる。
青はその場に倒れるがすぐ立とうとする。しかし立てない。うつ伏せになったまま後ろ(赤崎の方)へ引きずられていく。
そこへシロが到着し、無事(?)に黒岩と桜井を確保した。
「助かったよ。ありがとう」
シロに礼を言われるのはとても嬉しいことだ。
「いえ、内通者はこれから探します」
「青は大丈夫なのか?」
「赤崎がいるので大丈夫でしょう。これから裕子さんの所へ向かおうと思ってます」
「そうだね。早く連れてってやってくれ」
「はい」
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「青の様子はどうです?」
「あんたらか、見ての通り寝ているよ」
裕子さんの言う通り青はスヤスヤと寝息を立てている。
「そろそろヤバイんじゃないの?」
「裕子さんもそう思ってるんだ、、、」
「赤崎、鎮静剤の量を減らすことできるかい?」
「1度ためさないと、、、黒冥界のサディスデットに協力を頼もう」
「黒冥界のサディスデット?」
「青柳は知らないだろ。刹銀会に所属してる者なら誰だって知ってる有名人!それが黒冥界のサディスデット!」
「また例の厨二病?」
シロは裕子にこっそり聞く。
「違うみたいだよ。赤崎は謎が多いからね、保護者代わりの私でも知らないことがあるんだよ」
「ふ~ん」とシロは答える。




