こじらせ疑惑
ーーキーンコーンカーンコーン
長かった数学の時間がようやく終わった。隣の小宮さんに真相を確かめなければ。
「小宮さ……「はじめましてっ! 私、メグミ。奈緒って言ったよね。よろしく」
あぁ、前の席のに先を越されてしまった。
メグミ。明るいテニス少女で、俺とは幼馴染みにあたる存在だ。ゆるいパーマがかかったような薄茶の髪を、頭の上で二つに分けて結っている。ツインテールとかいうやつか。
「うん、メグミさん。よろしくね」
「メグでいいよ。しっかし、身長おっきいねぇ! いくつくらいあるの?」
「172……かな?」
困ったように小宮さんは微笑みながら、そう答えた。
「えーっ、すごいかっこいい!! モデルさんみたい」
メグはキラキラとした目で小宮さんを見つめている。メグも150代後半くらいだろうし、特別背が高いわけでもないからな。
だが、172㎝とは……。確かに女の子にしては大きい。俺とそこまで大きく変わらないじゃないか。
メグは高身長について羨ましそうに語っていたが、小宮さんは自分の身長のことをよく思っていないのだろうか、背の高さを褒められても苦笑いをし「女の子は小さい方が絶対いいよ」と話していた。
「背は高い方がいいと思うんだけどなぁー。あ、そうそう。悠太も今は背大きいけど、いくつくらいあんの?」
メグがいきなり俺に振ってきた。
「たぶん178くらいなんじゃねぇのかな?」
「ふーん、知らない間に大きくなってまぁ。あのさ奈緒、聞いてよ。悠太のやつ、今はこんなだけど、昔はチ……」
メグが言い終わらないうちに、誰かが口を挟んだ。
「小宮さん、あんまり悠太としゃべんない方がいいよ。こじらせちゃうからさっ」
口を挟んだのはこいつ。けらけらとクラスメイトの男が笑っていた。
「おい、こじらせるって何がだよ? 俺、別に風邪引いたりとかはしてねぇぞ」
不思議そうな顔で、小宮さんとメグは俺たちの会話を聞いている。
「違うって。お前、恋愛こじらせてんじゃん。彰と付き合ってるんだろ? ゲイじゃなきゃ美雪ちゃんフるとか考えられねぇもん」
はぁ、またこのネタか。いい加減にしてくれ。
俺は呆れた顔で返す。
「ちげぇよ、バァカ! 俺には気になってる子が他にいるから美雪をフったんだよ」
言った後で思った。これはかなりマズイんじゃねぇの?
好きな子の前でうっかり告白しちゃったパターンじゃないか。
……いや、違う。もっとまずい。のっぽっぽと俺は知り合いでも『小宮さん』と俺は初対面だ。俺が気になっているなんて夢にも思ってないだろう。
ってことは、好きな子の前で他の子が好きって言ってるようなもんじゃないか!!
ちらりと小宮さんを見ると、にっこり笑って一言。
「好きな人がいるっていいなぁ。告白してみたら、うまくいくかもしれないよ」
ーーあぁ、終わった。完全に勘違いされてる。
さらっと君は告白をすすめるけど、出来るわけねぇよ。俺が気になっているのは、小宮さん。君なんだから。