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学園迷宮で会いましょう  作者: 夜行
第5章
104/109

番外、もこもこくんはこうしてもこもこした






 大抵の場合、人は怒った時声を荒げるものだ。叫んだり、興奮を耐えかねて手が出たり。

 片方だけが興奮しているならまだしも、双方が興奮すると互いに手が出て殴りあいに発展したりもする。足も出ればそのうち乱闘だ。

 だが、この世には単純な暴力が怒りの捌け口にならない者もいる。

 怒れば怒るほど、静かに、冷静になっていき、無言で洒落にならないような行動に出るような。


「それで?」

「だから?」

「へぇ」

「あっそう」


 相手が声高に言い募れば募るほど、地図職人は表情を無くし、平坦に声を発するだけになっていく。その結果がどうなるのかよくよく知っているオリガンとトランクルは、はらはらと目の前のやり取りを見守っていた。正直、かなり腹が立っていたのだが、罠士入り地図職人の様子を見ていたら怒りがへなへなと萎えてしまった。というより、吸い取られでもしたかのような気がする。

 始めの内は、それでもそれなりに表情があったのだ。見た目はトランクルなエルマーは、自身がいつも浮かべているような胡散くさい笑顔を浮かべ、無駄に絡んでくる四人組みを適当にあしらっていた。ある意味、それが悪かったのかもしれない。


「今日はやけに強気じゃないの、子豚ちゃん」


 嫌味ったらしい笑顔を浮かべた僧侶が長い髪をかき上げて、隣に立つ剣士の肩にしなだれる。


「本当、本当。いつもはそこの罠を仕掛けるしか能のないモヤシくんの後ろに隠れてるのになぁ」


 にやにや笑っている剣士と、その後ろで同じような顔をしている『正義の剣』のメンバーに、『モヤシくん』に現在入っている状態のオリガンはうんざりと顎を上げた。


 全く、ついていない。


 新作罠を試しに武道場にやってきた三人は、武道場の真ん中に陣取ると早速罠を仕掛けようとその作業に入ったのだが、それがなかなか上手くいかなかった。

 突撃紙部隊が来たぞ、よし逃げようと阿吽の呼吸で逃げ出すもの、顔を引き攣らせながらもそれぞれスキルやら武器やらの練習に励むもの、好奇心を顔に浮かべながらこちらの作業を見つめているのは、恐らく一年生だろう。2・3年生が全員逃げ出さないのは、武道場の中に教師がいるので、エルマーもそこまでのおいたはすまいという安心ゆえか。

 ちょっとばかりぎくしゃくした雰囲気の中、トランクルに入っているエルマーは通常営業だった。


「よし、オリガン。早速やろうか。トランは見ててほしい。何か気づいたら教えて」

「う、うん」

「へいへい」


 そうして、地図職人入り罠士による『実践! 罠の仕掛け方』が始まったのだが。


「……え、なにこれ。全然出来ねー」

「なんで?」

「だってこれ、そのとおりにやっても出来ねーよ?」

「できないわけあるか! ボクはいつもやってる」

「デスヨネー」


 心配そうに『オリガン』が見守る中、自分に見守られるという嬉しくない経験にうんざりしつつも、オリガンはエルマーの身体でスキルを使った。

 『混沌なる再結合(ジャバラ)』を使い、エルマーに指示されたとおりに「ぐにゃっとしてごりごりした性質」の魔力を練り上げる。最初の部分はすんなりと出来た。普段のオリガンならポーション用に注ぐ魔力を出すのも大変なのに、あっさりと拳大の魔力が手のひらの上に現れる。これによって、恐らく魔力の出口とでもいうべきものには、大小があり、オリガンは目一杯蛇口を捻ってもぽたぽたしか出ない型、エルマーは自在にその量を調節できる蛇口を持っている型なのだろうということが推測できた。

 つらつらとそれについて考えながら、左手に今回仕掛ける罠の素を持ち、右手の魔力の性質を変化させようとして。


「……できねー」

「スキルを使ったんだから、やり方はわかるだろ?」


 やり方はわかる。だが考えてもみてほしい。公式を教えられただけで超難度の数式が解けるかどうかを。


「ちょ、おま普段こんなことやってんの?! ムリ、ムリ! オレにゃムリだぞ、これ!」


 どうがんばっても、求められているような「ぐにゃっとしてごりごりした性質」にはならない。これでは「なんかねちゃねちゃ」がいいところだ。


「難しすぎる、と……」


 腕を組んで眉を寄せていた『トランクル』は、渋々という顔で頷いた。


「仕方ない、新作は諦めるよ。そのかわり、簡単なのを仕掛けていこう」

「……どうやっても何かは仕掛けるんだな……」


 さすがの安定感である。全然憧れも痺れもしないがここまでくればご立派で、トランクルに至っては、はにかんだ笑みを浮かべて小さく拍手している。


「トラン、オレの姿でそれはやめてくれよ」

「そんなこというなら、ボクの姿をしている以上、オリガンにはどうあっても罠を仕掛けてもらうから」

「くそう……墓穴掘った……」


 エルマー入り地図職人の指導の元、罠士入りの盗賊はがんばった。周囲から怪訝な顔をされながら、がんばった。これは簡単だから、と指定された『もこもこくん』の素を持ち、これならなんとかなるか、と首を捻りながらもがんばった。これまで数限りなくお世話になったなじみの足止め罠だ。せめてこれくらいは立派に仕掛けてみせようではないか。

 そして魔力片手に、うんうん唸っていた時だった。

 面倒くさい連中が連れ立って現れたのは。


「おやおや、卑怯者三人衆じゃないか」


 見た目だけは朗らかに近づいてくる剣士が、芝居がかった仕草で手を振る。その後ろからぞろぞろとついてくるのは、その取り巻き三人。

 嫌な奴らに出会っちまった。そう胸中で呟いて顔を顰めると、見た目トランクルのエルマーがさりげなく『オリガン』の前に出た。その横を『エルマー』が固める。これはもう習慣のようなものだったが、いつもどおりやった後で、そういえば今日は中身が入れ替わっているのだということに気づく。

 これでは見た目は『オリガン』が庇われていることになるのか。


「やあ、地図職人くん。君は今日も、少しばかり……なんというか、迷宮には向かない体型だね」

「うふふ、でも逃げ足は速いんですってよ」

「僕にはとても真似できないな。迷宮で地図職人て、何してるんだい?」

「よせよォ、地図書いてるに決まってんだろ、迷宮で」

「机の上で書けばいいのに」

「全くだ!」


 顔を合わせるなり標的にされたトランクルは、自分の身体がオリガンのものだということを意識しているのだろう。若干挙動不審だが、後ずさるようなこともなく、視線は俯きがちだが、がんばってその場に立っていた。

 ははは、と響く笑い声に、周囲の生徒からもどことなくうんざりした気配が流れ出す。エルマーたちも生徒人気がないが、この連中はこの連中で好かれていないのでおあいこだろう。

 正義の剣だなどと自分から名乗っているくせに、連中のやっていることは単なる上から目線の施しと蔑みの境界線上の何かでしかない。その上、エルマーに口ではどうやっても勝てないので、見た目でどうしても侮られがちなトランクルを、ちくちくちくちく突いてくる。まあ、これにはもうひとつ理由があるのだが。

 とにかく、何が正義の剣だ、とんだ二つ名詐欺だともっぱら噂のパーティなのだ。

 そも、二つ名とは自分で名乗るものではなく、自然発生的に誰からともなく呼ばれるものだ。それを自ら名乗り歩いている時点でどうなんだ、とわりと常識派のオリガンは思う。


 そんな連中と毎回毎回顔を合わせるたびに行われる、これ見よがしの嫌味とお上品な悪口と胡散臭い笑顔。

 エルマーの胡散臭さは、誰が見ても胡散臭い、胡散臭さのいわば頂点。対する連中の胡散臭さは、香水をつける量を間違えたような、芬々とした胡散臭さだ。

 前者を見た人間はそそくさといなくなるが、後者の場合は顔を背けて息を止める。どっちがいいとは言わないが、臭いと思われるよりは怖いと思われるほうがマシだというのが個人的な見解である。


「今日は随分静かじゃないか、エルマー・ロイ・ジャブル。とうとう、俺たちの威光に耐えられなくなったのかな?」

「きっとそうよォ、ソルディとこの子豚ちゃんたちじゃ勝負にならないものォ」


 べったりと剣士に絡みつく僧侶は中々可愛いのだが、オリガンはもうちょっと清純派が好きなので、見つめられても、うへぇと思うだけだ。思わず見てしまうような露出もないし。


 へいへい、はいはい、はあはあ、そうですか、ふーん。


 あからさまにやる気のない罠士パーティの白けた顔をよそに、熱を上げる相手の言葉に相槌を打つだけの、実りのない会話にもならない何かは適当に進んでいく。武道場の隅に置いてある暖房装置のせいで武道場の中はほどほどに暖かいからまだいいが、これが外だったらすぐさま話を切り上げて寮に戻っていたことだろう。寒い中わけのわからない悪口雑言と恨み節を聞かされ続けるなんて冗談じゃない。


 それにしても話が長い。こいつら、まだ根に持ってるんだろうか。一年の時、エルマーの罠に引っかかってパンツ丸出しで泣きながら逃げるハメになったのを。

 あの時だってこいつらが先に喧嘩売ってきたのに。その後も何度も返り討ちにされてるのに。根性があるといえばいいのか、学習能力がないといえばいいのか。


 『エルマー』がさも面倒くさそうに相槌を打ってやっている横では、連中の標的にされている『トランクル』が、それでも最初の内は案外律儀に頷いてやっていた。こうして適当に流していれば、そのうち勝手に怒り出して勝手にいなくなるのがいつものことだったからだ。


「ふん、こんな役立たずの脂肪の塊が俺の弟だなんて、信じられないよ。さすが薄汚い愛人の子どもだな」


 その一言で、『トランクル』からすっと表情が消えた。

 『オリガン』の肩が震え、ぎゅっと握られた拳が震えている。

 それ以降、エルマー入りトランクルは相槌も放棄して、ただ無表情にじっと四人組を見ていた。

 正直、怖い。エルマーの無表情なら見慣れたものだが、『トランクル』のこんな顔は初めてだ。こんな視線を向けられたらオリガンなら裸足で逃げ出すが、この四人はやはり相当鈍いらしい。

 塵を見るような視線をものともせず、ひたすら言い連ねられるトランクルに対する悪口雑言に、周囲の生徒達も居心地悪そうに身じろぎ、仲裁を求めるように教師に視線を送り始めていた。

 基本、生徒間の揉め事には教師は口を挟まないことになっているので、2パーティでの乱闘にでもなれば話は別だが、この状況ではまだ出てこないだろう。


 それにしても毎回代わり映えしない悪口に、もう少し語彙を増やしてこいと叱りつけたい衝動に駆られて苛つく。毎回出自をあげつらうことしかできないのかとうんざりだし、言えばいうほど、自分の父親の不品行を宣伝しているということに気がつかないのが不思議でしょうがない。   

 この一連の悪口は三年間で一体何度繰り返されただろう。そのせいで、この剣士とトランクルが半分血の繋がった兄弟だということを2,3年生は殆ど知っている始末だ。


「臆病者には実に似合いのジョブだな。迷宮の中で地図職人に何ができる? 罠の影でせいぜい震えているといい」


 入れ替わりの件を知らないらしい四人組みは、エルマーの入った『トランクル』に絡み続ける。

 無表情のエルマーは本気で怒っているので、無事に入れ替わりが戻ったら恐らく凄い目にあうだろが、自業自得だ。同情はしない。

 大体、この連中は知らないのだ。エルマーが本当の意味での弱いもの苛めが死ぬほど嫌いだということを。そして臆病者で弱虫で役立たずと嘲笑うトランクルが、案外骨っぽいヤツだということを。それは普段は極度の人見知りで隠されているし、一見するだけなら面と向かってろくに言い返しもできない情けないヤツに見えるだろうが、三年、一緒に迷宮に潜ってきたオリガンとエルマーは知っている。


「おら、何武道場の真ん中陣どってんだよ。どけよ、邪魔なんだよおまえら」

「さっさと消えてくれる? 臭いんだよな、卑怯者の匂いがさぁ」

「あんたたちのせいで、どれだけの生徒が迷惑してるかわかってるの?」


 突撃紙部隊なんて名前までつけられて、実際それを存分に押し出して主張しているが、それは必要だからやっていることだ。エルマーが必要以上に人目に触れるところで罠を仕掛けるのもそう。怖がられて、恐れられなければ、三人はやっていけないから。だからエルマーは迷宮外でも罠を仕掛ける。なるべく人目につくように、被害者の数を増やす。勿論、抜け目のないエルマーは本気で怒りを買う様な罠は仕掛けない。その範囲で、できるだけいやらしい、解除が面倒くさく、引っかかったら悔しくて人には言えないようなえげつない罠を仕掛けるのだ。

 そうして、学園内に一定の認識を持たせることに成功した。


 罠士パーティ、侮るべからず。


 それがあるから、今まで上手くやってくることができた。だって、結局三人には強い攻撃手段も、身を守る堅固な防御もない。三人とも、本来なら正統派のパーティの中でこそ生かせるジョブについていて、余りものの寄せ集めと最初の内は笑われていたし、迷宮内ですれ違いざま馬鹿にされることだってあった。そういう寄せ集めが曲がりなりにも一端の顔をできているのは、エルマーの罠が効いているからだ。

 侮ると痛い目を見ると、魔物でなく人間の方に刷り込んだ。そしてそれを覆されないよう、死ぬ気で努力した。その結果が今の『突撃紙部隊』で、だからオリガンはエルマーをしょうがないヤツだと思うのと同じくらい尊敬している。トランクルもそうだろう。


 揺るがずに貫くのは、難しい。本来防御に優れる罠士と、細やかな便利スキルは多いものの、戦闘職ではない地図職人、火力として中途半端で、その上防御も薄い盗賊。剣士だの魔法使いだの、華やかなジョブに誘惑を感じたこともある。特に最初の頃は、まだジョブに慣れなくてろくに戦闘が回らなかったから、さくさく敵を倒して進んでいくパーティたちが羨ましかった。

 それでも三年やってこれたのは、間違いなくぶれない罠士がいたからだ。確かに、罠にかかった方にも言い分はあるだろう。だが、三人は謝らないし後悔もしていない。


「無駄吠えがよほど好きなんだな」

「な、なんだと!?」


 それまで無表情だった『トランクル』がふいににこりと微笑んで、ざっくりと斬り返した。


「こ、このっ……薄汚い売女の子どものくせにっ、俺に言い返すだと!? 分をわきまえろ!」

「さっきからわんわんうるさいなぁ。生憎ボクは人間だから、犬語は理解できないんだよ。ごめんね、野良犬くん」


 恐らく、馬鹿にしていた弟に生まれて初めて言い返されたのだろう。怒りで顔を真っ赤にした剣士が掴みかかってくるのを、その体型からは信じられないほど機敏にかわした『トランクル』に、周囲からくすくす笑いが起こる。がんばれ、と声援も聞こえてきて、それがどちらのパーティに向けられたものかは言わずもがな。中身がエルマーだと知っていればこうはならなかっただろうが、相手はそれを知らないので、本物のトランクルに小馬鹿にされたと思ってぶちきれている。


「……叩き斬ってやる……!」


 血が上りやすい剣士はとうとう剣を抜き、さすがにそれを目にした教師が近づいてくる。

 オリガンが何とか練り上げた魔力を付与し、剣士の足元に『もこもこくん』を投げつけたのはその時だ。

 自分ではきちんと出来たつもりだったし、ちゃんと罠が起動すれば四人組を一網打尽、せいぜい嘲笑ってやって引き上げるきっかけにするはずだったのだ。



 しかし、そうはならなかった。

 もこもこくんの素を投げつけられた四人組は、一斉に顔色を変えた。それはもう今までにさんざん罠には辛酸をなめさせられているのだから当然だ。だが、普段は華麗に展開する罠が、今回に限り不発。

 水溜りのようにしゅわっと足元に広がって、ぴくりともしなくなったもこもこくんに、正義の剣が一斉ににやにやし始める。


「あー? なんだこれ?」

「やだ、なにこれぇー。泡ぁ?」

「泡で何すんだよ! ばっかじゃねぇの!?」

「こんなもんだよ、罠士なんてさ。所詮この程度」


 今までその罠に相当痛い思いをしてきたはずなのにこの嘲りよう。

 オリガンはエルマーに謝りたかった。エルマーが築いてきたものを、自分のたった一度の失敗が崩してしまったのだ。

 その時、少なからずオリガンは動揺していたが、ちらりとこちらを見た『トランクル』の目には、怒りも失望もなかった。


「エルマー……」

「気にしなくていいよ、オリガン」

「ははは、お得意の罠はどうした? あ? ほら、かかってこいよ。斬り刻んでやるから、早くこいよ!」


 見かねた教師が足早に傍に来る。


「おまえたち、いい加減に」


 剣士の後ろから、ずいと魔法使いが前に出た。


「先生、僕たち別に何もしてませんよ。ほら、この僕がこの泡を片付けてあげます。全く、臆病で卑怯、その上ろくに罠もしかけられない役立たずは、片付けもできないみたいですからねぇ」


 げらげら笑いながら、濁った色の小瓶を懐から取り出し、水溜りのような泡に一滴落とそうとして、笑っている斧使いに肘で小突かれて、中身がばしゃりと泡にこぼれた。


「おい、痛いじゃないか」

「わりぃ、わりぃ」

「……二人とも、走れっ!」


 ばっと振り向いた『トランクル』が、『エルマー』と『オリガン』の背中を乱暴に押した。

 エルマーはこれまで、パーティリーダーとして充分にその役目を果たしてきた。

 わけがわからずとも言われたとおり脇目も振らずに入り口目指して走り出した二人の背後で、白くもっちりした泡が、爆発的に膨らむ。


「え、エルマー!?」

「トラン、止まるなっ!」


 入り口近くにいたおかげで武道場から逃げ出せた生徒達が叫んでいるのを聞きながら振り返ったオリガンが見たのは、泡に飲み込まれながら魔力を練ろうとしているエルマーと、同じく何かのスキルを発動しようとしているグレイ、そして、発生源の一番近くにいたせいですでにもこもこくんに飲み込まれてしまっている正義の剣、逃げ出し損ねた生徒達の悲痛な顔だった。


「オ、オリガンっ、エルマーが!」

「……救護室だ、救護室行くぞ。もこもこくんで死にゃしねえだろ!」


 二人は今日既に一度訪れた救護室目指して、駆け出す。


「あー、それにしても、あいつでもうっかりすることあるんだな」

「え?」

「あれ絶対、自分が罠士のつもりだったんだぜ」


 エルマーは咄嗟の瞬間に、自分が罠士のつもりでなんとかしようとあの場に留まったのだろうが、現在、入れ替わり現象続行中である。


「あっ……」

「ふひひ、後で笑ってやろうぜ」

「だ、ダメだよ、怒られるよ……」


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