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会いたい人


   5


 満流の家に来てみてわかったこと。

 陸人はやっぱり僕にしか見えていない。

 でも、陸人の携帯から電話をかけると、僕以外の人も声を聞くことはできる。

 しかし、他の携帯や普通の電話(満流の家のを使った)から陸人の携帯に電話をかけることはできない。



 笑い止んで僕が普通にしゃべれるようになったときには、もう時計の針が四時を指していた。

 僕らはさっきと同じ位置で、三人で話し合っていた。


「どうなってるんだろうな、その携帯」

「俺は携帯も幽霊になったんだと思うけどな」

「それ、答えになってないよね…」

「でもほら、死人から電話がかかってくるなんて、ホラー映画じゃよくある展開じゃんか」

「死人がお前じゃホラーな感じしないけどな…」

「ああ、俺はいいやつだもんなー」

 死んだ陸人本人が一番明るいという、変な雰囲気の会話だった。

 そういえば―と、僕はあることを思い出した。

「陸人」

「ん? どーした?」

「病院を出たときに、何かしなきゃしけないことがあるって言ってなかった?」

「……そうだったな」

 あれ…少し、暗い顔になった。

「陸人?」

「俺さ…、

 

 美桜にさよなら言わなくちゃと思って」


「ミオ…? って、佐倉さんのこと?」

 佐倉美桜。僕らの元クラスメイトで、よく学級委員や生徒会役員をやっていた子だ。

「でも、どうして佐倉さんに?」

「知らないの?」

 満流が言った。

「陸人と佐倉、付き合ってるんだよ」

「…えええっ! そうなの!?」

「ああ」

 驚いた…佐倉さんって真面目で厳しそうな人だから、まさか遊んでばかりの陸人と付き合っていたなんて…。

「でもさ…」

 そう言ったのは陸人だ。

「俺馬鹿だから同じ高校受験できなくてさ、そのことで喧嘩して…しばらく口聞いてないんだよね」

「陸人…」

「せめて謝りたくてさ、喧嘩してたこと」


「行こう、佐倉さんとこに!」

「博明?」

 僕が勢いよく立ち上がると、陸人と満流はびっくりしてこっちを見た。

「佐倉さんには陸人のことが見えないかもしれないけど、でも、会って電話しようよ! 早く行こう!」

 僕はもう走り出していた。

「あ、ちょっと、博明!」


 後ろから呼ばれたけど、僕は止まらなかった。


 今度こそ陸人の役に立てたら―。そうとしか思わなかった。



 だから、どうして陸人が僕を呼び止めたのかなんて、考えていなかった。



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