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とある自警団員の黒騎士観察報告




『あひゃひゃひゃッ!!ひーぃ、ひーぃ!!ブフォ!!・・・・はぁはぁ、お腹痛いwww』


 ゴロゴロと身体を左右に揺らし、腹筋を押さえたまま苦しそうに黒騎士は天上を仰いだ。押し殺した笑い声が鎧の隙間から漏れ、大袈裟な動きは収まったものの、小さく肩が揺れていた。


『ホント、加奈ちゃんってさぁ・・・・期待を裏切らないよねwww』


 陽気な声で黒騎士が呟くが、誰にも同意を求めていないようだった。真っ二つに折れたテーブルと、散乱した食器を一瞥し、再び笑い声を漏らす。


『せっかくありつけた異世界初☆ご飯が M I Z U K U S A だってwwww』


 再び腹筋を押さえ、黒騎士は身体を二つに折り『腹筋が崩壊するwww』と呻いた。

 陽気に笑い声を上げる黒騎士を囲むように、屈強な雄達が苛立ちを込めた眼差しを向けていた。何せこの“風の館”と呼ばれる食堂はギルドと近いために、贔屓にしているギルドメンバーが大勢いるのだ。ぽっと出てきた人物に自分たちの縄張りを好き勝手されて、それを黙ってやりすごすような紳士的な者は圧倒的に少ない。


 並大抵の者なら失禁モノの威圧のある視線を一点に受けても、黒騎士は平然と愉快に笑っている。場の空気が全く読めない愚か者か、はたまた戦歴の猛者の豪胆である故なのか。

 しかし、武器を取り上げている状態では下手な行動に出ないだろう。腕にどれだけ自信があろうとも、この場で争うことは、それなりの覚悟がいる。


 チラリと視線を横に向けると、その考えを読み取ったのか困ったような顔でガルンが頷いた。

 純種のヒポ族であるガルンは、ガッシリとした肉体に分厚い皮膚を持つ。普段は雌のような口調や仕草をしているが腕は確かだ。


『はっふぅ~ッ・・・もう、水草とかwwww』


 何がそんなに面白いのか『バロスwww』と噴出す黒騎士を、訝しげに見つめた。

 街中で許可書も無く武器を携帯していたが、友好的な雰囲気や素直な態度で敵意は感じられなかった。空腹を強く訴える黒騎士に情けをかけたガルンが食堂につれて来たまでは良かったが、まさかこんな展開になるとは。面倒になる前に、さっさと連行してしまえばよかったものを。


 黒騎士を囲んでいる雄達の大半は、見知った顔だった。どうこの場を収めようと一瞬思案したが、このまま黙って見守る事にした。黒騎士がどのような実力なのかも知っておきたかったし、ギルドメンバーも命までは取らないだろう。精々手ひどく痛めつけて、自分たちの縄張りを荒らさないように釘を刺す程度だろう。


「様子をみる。手出しはしない。」


 横に向けてそう告げると、やれやれと肩を竦められた。意見に反論しない所をみると、どうやらガルンも傍観に徹するようだ。


「でも、死にそうになる前には止めないとね。プテラを注文してたし、同族だったら後味悪いわ。」


 ガルンの呟きを聞き、黒騎士に視線を向ける。“プテラ”はヒポ族の好物である沼の植物だ。独特的な味・・・つまりは不味い。その為、ヒポ族の者以外が好んで食す事は、まず無い。


 黒騎士の中の体格まではわからないが、見たところスマートな細身の外見だ。ヒポ族は分厚く頑丈な皮膚で覆われ、ガッシリとした体格は、大きさは変わるものの本質的な体格は雌雄変わらない。ほぼ確実的な予測だが、黒騎士は他の種族だろう。


『あ~っ。・・・笑った、笑ったぁwww』


 深く深呼吸するような素振りを大袈裟にし、黒騎士が立ち上がってクルリと周りを見回した。無言の威圧はあるのの、怯えた様な気配は無く、寧ろこの状況を喜んでいそうな飄々とした態度である。


『えっ、何?何ぃ~っ??何か、俺に用があるのかな?』


 おどけて肩を竦める黒騎士の態度が、更に周りのギャラリーの苛立ちを煽る。すでに周りの視線は、殺意に近いものが篭っていた。そんな張り詰めた状況下で、己の危機を察しない愚か者は存在しないだろう。明らかに黒騎士は、意図的に雰囲気を悪くしている。


『もう、見ているだけじゃ伝わらないよ?黙ってても雰囲気で察してよね☆って言うのは、すでに倦怠期を間近に控えた夫婦みたいなモンなんだからねwww』


「さっきから一人で、何ゴチャゴチャ言ってんだァ!?・・・”食事の最中は静かにしろ”とママに言われなかったのかよ?」


 我慢できなくなったのか、先頭に立っていた雄が口を開いた。言葉の内容は軽いが、低く唸るように威圧を込めている。言葉遊びをするつもりは無く、切っ掛けがあれば実力行使に出れるように身構えていた。


『あはっ!それは悪かったね、うん?残念だけど、俺は食事は皆でワイワイ派なんで~すwww』


 黒騎士が軽く『ゴメンネ☆てへぺろwww』と言ったところで、囲んでいた雄達が一世に動きだした。苛立ちを最大限にまで煽って、煽って、煽りつくした行為の後だ。手加減はされないであろう。


「あ~っ。・・・死ぬ手前ぐらいで止めないとね。」


 ガルンの困ったような呟きを聞いたが、俺はとくに返事を返さなかった。頭に血が上った雄を諌めて、被害を被るのは御免だ。死んだら、土に埋めてやろう。それがせめてもの情けではないのか。






誤字脱字があれば申し訳ない。

展開もぬるいです、はい。

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