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戦いの後は虚しい、らしい。



 目が覚めても、まだ異世界でした。


 なぜかズキズキと痛む頭を抱えて、これまでの事が夢オチじゃなかったのかと、私は思わず溜息をつく。

そういえば、何で気絶したんだっけ・・・と思考を一旦飛ばして、意識を失った原因に気付いてハッとする。


「ととっと、トカゲ!!!巨大トカゲは!?」


 身構えて辺りを見回そうとした、私の視線はある一点でピタリと止まった。いや、擬音語が正確じゃない。もう吸い付くような勢いでビッタンッ!!て止まった。ピタリとか生易しい感じでは断じて無い。


「旦那、大丈夫ですかい?・・・ほら、町に着きましたぜ。」


 目玉を引ん剥いて私は、目の前にいる声の主をガン見した。そりゃ、見るよ誰だって見るよ。

 だって、訝しげに私を見ているのがネズミ人間なんだよ!?ネズミを半端に擬人化して、商人っぽい服着て、二足歩行でしっかり大地を踏みしめちゃってるんですよ!?


 立った、立った!!ク〇ラが立ったァァァァァ!!!!!アルプス在住の幼女のように、私は心の中で絶叫しまくった。


「何ボサっとしてんですか?ほら、降りて降りて。」


「・・・あ、はぁ。」


 気の抜けた返事をする私を、ネズミ人間が急かす。促されるままにノロノロと足を進めて、そこで私は荷馬車に乗せて貰っていたのだと、やっと気付いた。・・・良いネズミなのかもしれない。


 そういえば、どことなく著作権に厳しい夢の国在住のネズミ人間に似ている気がする。そう思うと、何だか可愛く見えてきた。


「これ、約束の品ですぜ。・・・本当に旦那はシッカリしすぎで、困っちまう。旦那の口の上手さは商人向き、太鼓判押しますわ。この俺が言いくるめられちまうなんてねぇ。」


 私には何の事だかサッパリわからない事をブツブツ言いながら、ネズミ人間は大小の革袋を手渡してくれた。貰えるものは何でも貰う精神の私は、とにかく黙って素直に受け取る。


「あぁ、職を探してたんでしたねぇ。・・・・・・ほら、あの一番背が高くて、赤い屋根がギルドでさぁ。」


 ネズミ人間が指差す先に、一際高い塔のような建物が町の中心に建っていた。本当に、聞いてもいないのに何から何まで親切な生き物である。


「ありがとうございます。」


「いやいや、礼には及びませんぜ。世の中助け合い、対価に見合った返しをするのは、商人として当然の事で。」


 ヒクヒクとネズミ人間の鼻が動く。そのリアルで細かな動きに、私は釘付けだ。しかし、惜しむべきは半端な擬人化。ネズミが二足歩行で立っているだけならば、只のメルヘンなのだが・・・。本当に、本当に半端に擬人化なんだよ。残念な半人半獣、とでも言ったらいいのだろうか。


「では、我々は先を急ぎますんで。・・・お達者で。」


 マジマジと見ている私を名残惜しいと勘違いしたのか、ネズミ人間は恥ずかしそうに微笑んだ。


「お達者で、ありがとうございました。」


 お互いに手を振り、私は荷馬車が建物の角で見えなくなるまで手を振った。こっちを見ていないかもしれないけど、一応ね。


「同志、何があったんですか?」


 荷馬車が見えなくなると、私は腰に下げた同志に声を掛ける。ネズミ人間から受け取った革袋(小)が、やたらとズッシリ重い。


『えっ、何ってwww』


「私が気絶している間に何があったか、って事ですよ。」


『え~っ、どうしようかな。聞きたい?聞きたい?聞きたい?』


 さも話を聞いてくれっ、と言わんばかりの態度の同志がウザイ。私は敢えて会話を続けず、革袋の中身を確認してちょっとビックリした。山吹色のコイン、俗にいう金貨が10枚ほど入っている。分厚くて1枚1枚が重い。500円玉ぐらいの大きさなのだが、存在感がまるで違う。例えるなら、トンブリとキャビアの違いだよ。え?トンブリ知らない?・・・・適当にググれ。


『竜、ヌッコロしたwww』


「・・・・・・・・同志、一生付いていかせて頂きますッ!!!」


 感極まって思わず叫んじゃったよ。一銭も持たずに放り出された身としては、有り難い事この上ない。この金貨がいくらの相場なのか分からないが、この世界での流通硬貨である事は間違えが無い。


「ヒャッホーイ!!御飯が食べられるぅ!」


 喜び勇んで、私は全速力で町に突撃していったのだ。








グウウウウゥゥゥゥッ。グキュルルルル―――――――――ッ。


 獣の唸り声じゃないよ、私のお腹の虫だよ。只今、必死に空腹を訴えています。はぁ、今なら何でも食べられる気がする。贅沢なんて言いませんとも、食べれればいいんです、食べれれば。


「おい、聞いているのか!!」


 怒鳴られて、私は渋々頷いた。食べ物を売っている店を探してウロウロしていたら、自警団とか名乗る人物に捕また。ネズミ人間の次ぎは、トカゲ人間でした。青緑色の肌に、割れた舌先。爬虫類が苦手でなくても、充分にドン引きできるビジュアルですよ。


「武器を所持しているからには、許可書を見せてもらおう。」


「・・・はぁ、許可書ですか?」


「見せられないのか?・・・ならば、身柄が証明できるまで拘束させてもらう。」


 どうやら原因は、お腰に付けた勇者の剣らしい。空腹で頭の回転が鈍くなった私は、何もかもがどうでもよくなった。剣が有る = ダメなら、無かったら良いわけ?


 仕方が無い同志よ、しばしの別れである。剣を渡そうと腰に手をかけたが、その行動がトカゲ人間を刺激してしまったらしい。攻撃しようと見えたらしく、なんと私に向かって剣を振り上げてきたのだ。オイオイ、早マルナヨ!


「ちょっ、まッ!」


 慌てて敵意が無い事を示す為、手を上げようとしたのだが・・・・・・遅かった。


「ゴバッ、ブペラッッッ!!!!」


 顔面に剣の鞘をまともにうけたトカゲ人間が、クルクルっと一回転半身体を捻らせて地面に沈んだ。セキュリティ会社のセ〇ムも真っ青の防犯対策アイテムである。

 私は一連の行動を理解して、握り締めている同志に視線を向けた。


『戦いの後は、いつも虚しい。彼は身をもって、それを教えてくれた。』


 しんみりと同志が呟き、その後に続いてグリリュルルル―――――――ゥと私のお腹が鳴り、静まった町の一角に響き渡ったのだった。



★異世界人NO.1 ネズミ族(ネズミ人間)

大きな前歯と、細長い尾が特徴。全身が体毛で覆われているはずなのだが、主人公が出会った顔面が禿げている種は稀である。

種族で商人を営むものが多い。金に細かく、口が立つ。


★異世界人NO.2 蛇族(トカゲ人間)

滑らかな鱗、細長く割れた舌先が特徴。ちなみに、トカゲ族は無い。

冬は動けなくなるため、この種族を発見すると皆、春の訪れを感じるらしい。

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