『勝手に異世界に強制召喚された被害者の会』
異世界トリップのもう一つのお約束。そう、『チート能力』です。
魔力が無尽蔵とか、剣豪とか、肉体強化とか・・・期待しちゃいますよね。結構追い詰められていた私は、頼れるのは己のみとアレコレ試してみた結果、私にはチート能力が皆無であるという事実のみが判明しました。
混じりっ気無い純度100%の平民Aです。ありがとうございます。
それもそうですよね、だって勇者とか、巫女とか、選ばれた人じゃないんですからね。ええ、ただの召喚事故でうっかり呼ばれただけの人間にチート能力なんて・・・無いですよね。
呪文的な言葉を思いつくままに叫んだり、剣を振り回してみたり、色々と自分自身を模索してみました。始めは真面目に本気でやっていたんです。何せ、人生かかってますから。けどね・・・何だか精神的に辛くなって止めました。
考えてもみてください。「ファイヤー!」「サンダー!」「メテ〇ッ!」とか、出来もしない呪文を叫んで魔法ごっこをしている人を見たら、ドン引きでしょ?
ふとした瞬間に己の羞恥に気付いて、死にたくなりました。
うひゃぁぁぁッ!!先ほどの自分の行動を思い出したら、身悶えして転げ回りたい衝動に駆られます。ぐはっ、何という羞恥プレイ。黒歴史決定!!乙!
残ったのは、肉体的疲労と精神的苦痛です。
そんな地獄生活の中で、唯一救いだったのは『同志』がいた事です。
意思の疎通が出来て、私の心情を理解してくれて、尚且つ私を守ってくれる素晴らしい人?です。彼?のお陰で、今の私が何とか生きているといっても過言では無いくらいです。
人?彼?と『?』が付くのは、同志が『剣』であるからです。
異世界で勇者と共に魔王討伐の旅に出掛けていた終盤で、何とジジイによって召喚!!
『俺(魔剣)がいなかったら、アイツ(勇者)野良犬にも勝てねーんだぞォ!!!』
勝手に異世界から召喚されて彼?は、かなり焦ったらしい。なにせ、ラストバトルで魔王とガチの所で魔剣のみが召喚☆
しかし、野良犬にも勝て無いヤツが、どうして勇者に?明らかな人選ミスが否めないと思うのは、私だけなのだろうか・・・。
まぁ、とにかくアレだ・・・うん。・・・・・・勇者、生きろ。
彼?の名前は、カイザック何とか・・・かんとか・・・しゃいにんぐせいばー?だったかな。
長い、とにかく無駄に長すぎて私の脳みそが名前を記憶するのを拒否したほどですよ。
「・・・同志。申し訳ないのですが、以降も『同志』と呼ばせてもらっても?」
『え、いいよ~っ。勝手につけられた名前だし。それに、長ったらしくて、ぶちゃけウゼェェェwww』
同志は勇者の剣という肩書きに反して、かなりライトな性格なのです。
けれど見た目は、柄から刀身まで真っ黒な両刃の剣で・・・勇者のっていうより、魔王の剣ってのがシックリくる感じです。しゃいにんぐせいばー・・・なのにね。
なんと同志は、魔王・・・じゃなくって、勇者の剣だけあって嬉しいスペック付き!!
手にするだけで、野良犬にも負けちゃうような人がアッという間に、王国騎士団も裸足で逃げ出すほどの凄腕チート剣士に早変わり☆
あぁ、同志ッ!!私一生、貴方についていきます!!
こんなに素晴らしい勇者の剣であるのに、召喚されて間もなくガラクタ山・・・もとい、異世界からジジイが取り寄せた物の倉庫に置かれたらしい。
ジジイ曰く、「五月蝿いから、放置。」だとよ。
同志は、置いてきた勇者が心配で還して欲しいと散々喚いたらしく、速攻ガラクタ山に放置プレイ。
『俺さ、剣だから死なねーけど・・・マジで憤死するとか思ったwww』
「・・・・・・同志。」
『勝手に異世界に強制召喚された被害者の会』の同志として、私達は互いの絆をより強く深めたのだった。
こんな感じのゆる~い展開で進んでいきます。