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僕と彼女の恋物語  作者: 悠里
香村深傘編
2/2

幼馴染み。


僕には、幼馴染みが居る。

だからなんなんだと言われれば分からないが、とにかく、僕には幼馴染みが居る。


僕には未だに、何故羨ましがられるのかかいまいちよく分からないのだが、この事を学友に言うと、凄まじい勢いで幼馴染みが何たるかを延々長々と、それはもう何かの呪文の様に聞かされるので、決して口には出さないと僕は決めている。


僕にしてみれば幼馴染みなんて、悩みの種でしかないというのに。



僕の幼馴染みは、僕が言うのもあれだが、可愛い。顔も童顔で、目鼻立ちが良い。そこは僕も認めよう。


だが、と僕は思う。


いくら容姿が良くたって、性格はどうだ?あんなののどこが良いんだ。顔がよけりゃ全部良いのか?


そりゃ、人前じゃ可愛いだろうよ。

だってあいつは、僕の幼馴染みは、_________猫をかぶっているのだから。



僕の幼馴染み、もとい、香村深傘(こうむらみかさ)は表面上では、可愛くて優しくて気が利く、委員長タイプな奴だ。いや、本当に気の利いた委員長だけど。あくまで、表面上は、だが。



「皆、今日提出するプリント、出してくれる?忘れた人はちゃんと言ってね。」


そう言っているのが、僕の幼馴染みの深傘。笑顔が眩しいよ、まったく。

とゆうか、本性を知っている僕からしてみれば、あの眩しい笑顔が怖い。すっごく。


そんなことを考えていると、深傘が僕の方に近付いて、プリントの提出の催促にやって来た。

取り敢えず、嫌味を言ってやる事にした。

「今日もご苦労様ですね、委員長さん。」「うふふ、そんなことないわよ。」睨まれた。怖い。



やっぱり僕には、どこがいいのか分からない。



これは、ある日の学友との会話である。


「いいよなー、お前は。香村さんが幼馴染みで。」

「別に、ただの腐れ縁だよ。」

「変わってくれよ。」

「いつでもどうぞ。」首絞められた。苦しい。


と、いうようにあんなのでも、居たら気苦労が絶えないのだ。




「····あれ?」


今は放課後。場所は昇降口の靴箱の僕の靴入れの前。

僕が何故疑問を口に出しているのかというと、僕の靴の上に置いてある手紙らしき物を発見したからだ。


「なんだ?これ····。」


僕はその手紙らしき物を手に取り、中を拝見する。


「····。」「何してるの?」


いきなり背後から声がし、振り返ると後ろには、あの例の幼馴染み、香村深傘がいた。


「········うわ、びっくりした。」

「何、その間は。もう。」


いや、それは今日、幼馴染みであるお前の何処が良いのかという何とも失礼なことを僕が考えていたからで、だからどんな顔で会えば良いのか考えていたから不自然な間が空いたなんて自滅的なことは僕は言わない。


取り敢えず、言い訳。


「本当にびっくりしたんだよ。だから、状況判断に時間がかかったんだ。」

「····ふうん?」ジト目で見つめてくる。威圧感がすごい。


でも、まだこれは僕の知っている香村深傘ではない。


「とゆうか、良いのかよ委員長さん。僕なんかと話なんかしてて。」

「良いわよ。······幼馴染みなんだし。」

「そっか···。」会話が続かない。


とゆうか、僕は早くこの手紙らしき物の中を確認したいんだけど。

僕は、左手に持っている手紙(以下略)に目線を移す。


「!····ねえ、それは何?」


僕が手に持っている物に気付き、問い掛けてくる深傘。····なんだか心なしか、怒っている気がする。まあ、多分気のせいだろうが。とにかく僕は、その問いかけに答えることにした。


「手紙····かな、多分。」「見せて!!」


いきなり、僕が持っている手紙(多分)に手を伸ばしてきた。そして僕は、急なことに対処出来ず、呆気なく手紙は深傘の手中に渡る。


「お、おい!深傘!?」勝手に取るな。僕だってまだ見ていないのに。



「ほら、返せよ。深傘。」

僕はそうして、手紙を凝視したまま固まっている深傘に声を掛けた。

手紙に手を伸ばすと、案外簡単に取り戻せた。


「ったく、勝手に取っちゃ駄目」「好き。」


「·····え、?」

「···って、書いてある。」


なんだ、そういうことか。何を言い出したのかと思った。


····じゃあ、この手紙に書いてある事柄が深傘の言ったそういうのなら、この手紙は···。

「ラブ、レター····。」手紙を見つめ、僕はそう呟いた。


これは、まあ薄々分かってはいたが、俗に言うラブレターと言う恋する人々が恋している人々に綴る僕にとっては大変希少価値のある物なのだ。とゆうか、貰うのなんてこれが初めてだ。


「·······貰って、嬉しい?」

ずっと黙っていたせいか、掠れた声で言葉を発する深傘。

「あー、うん。嬉しい、よ。うん。」

「·········そっか。」


それからしばらく、僕らの周りは沈黙に襲われた。

だが、それは深傘の言葉によって、その沈黙は破られた。



「ま、よかったね。」


深傘は微笑みながら、だけど、哀しい瞳をして、そう言った。

きっとそれは、僕の勘違いで、この言葉が、深傘の本当の言葉かは僕には分からないけれど。


深傘にそう言われて、僕は少し、本当に、少しだけだけれども。


僕は、胸が痛かった。














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