雨空
降り続ける雨は依然と止むことを知らずに土や葉っぱやアスファルトに絶えず叩きつけている。道路の凹凸に収まらないほどの水量のせいで小さな水溜りがいくつも出来ていて、やがて笠が増していくと標高の低い方へ低い方へと流れていく。
まるで小さな川だな。私は水滴のへばりつく窓越しに自室から自然のサイクルの一部をなんとなく眺めていた。時々窓の滴が他の滴と重なって落ちて行くたびに目の焦点がそちらへと向いてしまうので目が疲れる。
動くものがある分、晴れの日よりは飽きないが身体にはよくないのではと毎度のことのように思うのだ。これだけ降ると肌着一枚では肌寒い。この時期になれば半袖半ズボンで1日を過ごすのがいつもの装いなのだがこう言う日は少々心許ない。肩の辺りを撫でてみたらサブイボが知らぬ間にポツポツと立っていたのでベッドに乱雑に乗せてあったタオルケットを上から被る。
どうせ10分くらい経ったころに暑くなって脱ぎ捨てることは分かってはいるがこうも絶妙な気温ではどうしようもない。布の端と端を身体の前で交差させながら窓の外に広がる景気の悪そうな黒に近い灰色の雨雲を親の仇のように睨み付ける。
よくもまあ飽きずに雨を降らせ続けることができるものだ。嫌味がよぎりながらも一体これほどの量の水資源を地上から何キロも上空に蓄えることができるのだろうかと純粋に関心もした。
雨が降り、川を流れて海に至る。海から立ち上る蒸気が青空を漂って雲となり、山や平地へと還っていく。地球の7割は水だという。惑星規模のサイクルなのだからたった数トン程度の水くらいほんの朝飯くらいなのかもしれないが、そんなリアルをいま目撃しても実感が湧かないのは私がちっちゃな存在でしかないからなのだろうか。
机の上の消しゴムのカス。ノートの横で山となっているそれらに意識があるとしたら私もあの雲のようにでかいスケールの存在として認識されているのだろうか。私は消しゴムにしか見栄を張れないということ?
再び窓へと視線を動かすと雨雲は相変わらず空を覆い尽くしているけれど模様がかなり違って見える。私と違ってあなたは動き回っているんだね。それなら一つ聞かせてよ。あなたにとって私はちっぽけ?それともそんなことないって慰めてくれる?
万が一、万が一の万が一にそうじゃないって言うのなら教えてほしい。あなたにとってちっぽけっていうのがなんなのか教えてほしい。その時は頼むから、その時だけは『自分』だなんて死んでも答えないでください。死にたくなるから。




