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最後の録音

作者: ONEUMA
掲載日:2026/07/08

大学の夏休み、僕は祖父が残した古い家に来ていた。


僕には少し変わった趣味があり、古いカメラ、レコード。今の人にはガラクタに見えるようなレトロなものを集めるのが好きだった。

親には「片付けに行く」と言ってあったが、内実は面白そうなものがないか探すつもりでいた。


祖父が亡くなってから随分経つ。

山奥にあるその家は、もう十年以上誰も住んでいない。

僕も小さい頃はよく行っていたが、まだ小学生だったその頃は、家の記憶より村のこども達と遊んでいたことくらいしか覚えていない。


最後は長い病院暮らしだった祖父だが、今でいう終活のような形で家は綺麗に整えていたようだ。


昭和から暮らしていた家とは言え、最後に住んでいたのはもう2010年ころ。目ぼしいレトロアイテムは見当たらなそうだった。


そんな中。

ただ一つ、気になるものがある。


それは古いカセットレコーダーだった。


棚の上に置かれていたそれだけは、まるで昨日まで誰かが使っていたみたいに綺麗にされている。


僕は何気なく再生ボタンを押してみた。


ザーッ。


雑音の後、小さな音が聞こえた。


トン。


トン。


何かを叩く音。


その後に、かすかな声。


『……開けて』


僕は慌てて停止ボタンを押した。

一体誰の声だろう?

気味が悪かった。


夕方になり、そろそろ帰ろうかと準備を始めたその時。


トン。


トン。


同じ音だ。

確かに聴こえる。押し入れの奥から。


恐る恐る開ける。


そこには何もない。


でも、内側を見ると不自然な傷があった。


翌日。僕はその村に住む幼なじみの美咲に相談した。


「このあたりでは昔から噂があるの

夜になると声が聴こえるって」


彼女は言った。


「女の子の声、『助けて』ってやつ

ありがちだけど」


「助けて、か…」


「うん、だいぶ前だけど、突然いなくなった子がいたらしいのよね」


それから僕は何人かの村人に話を聞いてみた。


そして分かった。


十年ほど前、十才くらいの少女が、なぜか忽然と姿を消したのだそうだ。


その日の夜、僕はもう一度カセットを再生した。

今度は最後まで聞くつもりで。


トン。


トン。


『開けて』


トン。


『お願い』


トン。


『閉じ込められたの』






『美咲ちゃんに』




……。


美咲?


その瞬間。


背後から声がした。


「聞いちゃったんだ」


振り返ると、美咲が立っていた。


「なんで……」


彼女は静かに言った。


「あの子、邪魔だったの」


「え?」


「みんなあの子ばっかり可愛がって」


僕は後ずさる。


「じゃあ消えた子って……」


「私がやったの」


その時。


押し入れから音がした。


トン。


トン。


美咲の顔色が変わる。


「嘘……」


トン。


トン。


今までより強い。


そして、カセットから声が流れた。


『やっと言ってくれたね』


美咲が震える。


『録音できた』


僕は気づいた。


このカセットは助けを求めていたんじゃない。

犯人に自白させるために鳴っていたんだ!


壁の向こうから、最後の音が響く。


トン。


トン。


そして声がした。


『今度はあなたが入って』

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― 新着の感想 ―
カセットから聞こえる「トン、トン」という音が少しずつ意味を持っていく展開が怖かったです。
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