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第4章:繋がる地面

「……変な感じするな」


 コトリは、自分の手を見つめる。


 昨日とは違う。


 確実に、何かがある。


「当たり前だろ」


 横から声。


「繋がったんだ」


 ライが腕を組んで立っている。


 赤いジャケットの裾が、風に揺れる。


「すぐ慣れる」


「ほんと?」


「慣れろ」


 即答。


 ぶっきらぼう。


 でも、安心する。


「……うん」


「コトリー!」


 声が飛ぶ。


 振り向くと、千代とハル。


 その後ろから、土を払いながらモグも歩いてくる。


 指先に残る土を軽く払う仕草が、やけに慣れていた。


「出た!?」


「出たよ!」


「こいつ」


「おい」


「ライだ」


「……よろしく」


「強そうじゃん」


 千代が軽く笑う。


 長い黒髪がさらりと揺れた。


「まぁな」


「うわ、めんどくさ」


「は?」


 軽口が飛ぶ。


 いつもの空気。


 でも、少しだけ違う。


「やろうか」


 千代が言う。


「模擬戦」



 里の外れ。


 踏み固められた地面。


「ここさ」


 千代が足元を踏む。


 トン、と。


「ちょっと変なんだよね」


「下、軽いっていうか」


「繋がってる」


 その言葉は、軽く流された。


 この時はまだ。



「はいはい、じゃあ仕切るぞー」


 ハルが前に出る。


「当てたら勝ち、やられたら負け!」


「……始め!」



 ——ズズッ


「……来るぞ」


 ライが低く言う。


 ドンッ!!


「っしゃあ!!」


 モグが飛び出す。


 そのまま、すぐに沈む。


「いくよっ!」


 ドンッ!!


 背後。


「うわっ!」


 跳ぶ。


 ドンッ!!


 横。


 ドンッ!!


 真下。


 連続。


 間がない。


 出て、消えて、また出る。


「ちょ、速っ……!」


 位置が読めない。


 まるで地面そのものが動いているみたいだった。


「めんどくせぇ戦い方だな」


 ライが舌打ちする。


「出たり入ったり、鬱陶しい」


 ドンッ!!


 その瞬間。


 ——バチッ


 雷が走る。


 ライが前に出る。


 すべて弾く。


「考えろ」


「防ぐのはやる」


「……うん!」


 コトリは目を閉じる。


 感じる。


 振動。


 移動。


 繋がり。


 点じゃない。


 線でもない。


 広がっている。


「……これ」


 ドンッ!!


 また来る。


 ライが弾く。


「……全部繋がってる」


「は?」


 その時。


 モグの声。


「この穴さ!」


 ドンッ!!


 飛び出しながら笑う。


「めっちゃ広くて使いやすいんだよね!」



 ——繋がってる



 千代の言葉が重なる。



「ここ!!」


 地面を指す。


「全部繋がってる!」


 ライが笑う。


「いいじゃねぇか」


「まとめていく」


 ——バチッ


 雷が走る。


 地面へ。


 穴へ。


 繋がる全てへ。


 ドォンッ!!


「うわああああ!!?」


 モグが吹き飛ぶ。


「ちょ、なにそれ!?反則!!」


「お前が繋げてんだろ」


「ぐぬぬ……!」


 悔しそうに睨む。


 でも、笑っている。



「はい、そこまで!」


 ハルが声を上げる。


 空気が戻る。


 笑いが戻る。


 でも——


 コトリは足元を見る。


 まだ、残っている。


「……千代」


「ん?」


「これ、どこまで繋がってるの?」


 一瞬だけ。


 止まる。


「さぁ?」


 すぐ笑う。


「分かんない」


 軽い答え。


 でも——


 その目は、一瞬だけ深かった。



 その日。


 力が交差した。


 それは前に進む一歩。


 そして——


 崩壊へ向かう、


 静かな兆しでもあった。

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