ep3 隠された力と教室の騒ぎ
昼休み。三年A組の教室はいつものように賑やかだった。
俺、神崎零は窓際の自分の席でパンをかじりながら、ぼんやりと外を眺めていた。
この星刻学園に入学して、もう二年が経つ。
俺は最初から能力の強さを隠し通してきた。
【インフィニット・ミラージュ・アセンション】がチートすぎるせいで、目立ったら面倒なことに巻き込まれると分かっていたからだ。
焔だけが本当の力を知っている。
それ以外は全員、俺のことを「覚醒したけど大した能力じゃなかった弱いヤツ」と思っている。
そのおかげで、ストックした能力をこっそり増やし続けられた。
今までに十数個の能力を永続ストック済みだ。
……まあ、面倒くさいけど、これが俺のやり方だ。
「よぉ、神崎~。また一人でボーっとしてんのかよ?」
突然、机にドンッと足が乗せられた。
荒木剛――クラスで一番やんちゃな男だ。
筋肉質で背が高く、能力は【剛力パンチ】。
力任せに相手を吹っ飛ばすだけの単純なやつだが、本人は学園一強いつもりでいる。
周りの女子が「また始まった……」と小さくため息をつく。
「なぁ、お前さ。二年も経つのに一度もランキング上位に入ったことねぇよな? 弱い能力者ってマジで可哀想だわ。
俺みたいに強い奴の言うこと聞いてりゃ、多少はマシになるぜ?」
荒木はニヤニヤしながら俺の肩をガシッと掴む。
周りの視線が集まる。みんな「また零が絡まれてる」と思ってる顔だ。
俺はパンを置いて小さくため息をついた。
……面倒だな。
でもここで本気を出したら二年分の隠蔽が無駄になる。
「……悪いけど、放してくれよ。飯食ってるんだ」
「は? お前みたいな弱っちいのが偉そうに!」
荒木がさらに力を込めて俺の肩を押そうとした瞬間、俺はこっそりストックから一つ能力を呼び出した。
去年コピーした【微重力操作】を、ほんの少しだけ発動。
偶然を装って。
瞬間、荒木の足元だけがふわりと軽くなった。
バランスを崩した彼は「うわっ!?」と派手に前のめりに転び――
その勢いで近くにいた女子生徒・鈴木あかりの机に突っ込んだ。
「あっ、きゃあっ!?」
あかりちゃんが驚いて立ち上がろうとした拍子に、椅子が倒れ、彼女の体が俺の方へよろける。
俺は咄嗟に受け止めたが、結果的にあかりちゃんが俺の膝の上に倒れ込んでくる形になった。
短いスカートが大きくめくれ上がり、ピンクのレースパンツが丸見え。
柔らかい太ももが俺の手に触れ、甘いシャンプーの香りが鼻をくすぐる。
「ご、ごめん! 零くん……!」
あかりちゃんは真っ赤になって慌ててスカートを押さえ、俺の膝から飛び退いた。
周りのクラスメイトが「うわ、ラッキー!」「あかりちゃんの下着見えちゃったよ!」とヒソヒソ笑う。
荒木は床に転がったまま顔を上げて俺を睨む。
「て、てめぇ……! なんかしただろ!?」
「何もしてないよ。……お前が勝手に転んだだけだろ?」
俺は平然と答えた。
微重力操作はもう解除済み。証拠なんて残っていない。
荒木は悔しそうに舌打ちして立ち上がり、
「ちっ……今日は調子悪ぃわ!」と捨て台詞を吐いて教室を出て行った。
教室に小さな笑いが広がる。
誰も俺が本気を出したとは思っていない。
あかりちゃんはまだ顔を赤くしたまま、
「零くん、支えてくれてありがとね。」と小さな声で言って、恥ずかしそうに自分の席に戻っていった。
俺は小さく息を吐いた。
この二年、こんな感じで能力を隠し続けてきた




