命喰み
記憶している1番幼い頃の映像は「赤」視界一面に広がる血の海だった。
目の前で、両親のまだ温かい皮膚や血液、内蔵が飛び散り幼い私の頬や服、髪の毛にびっしりとこびりつき気持ちが悪かった。2人もの人間が数秒で肉塊と化し、恐怖と驚愕で逃げることもできずにその場に座り込んでしまったのを今でも覚えている。
だから、目の前に出された、血で真っ赤に染った手を振り払うことなどできるはずもなかった。その日初めて私は、人が死ぬ時の断末魔、血や内蔵が壁や床に飛び散るときの音を聞いた。
人の命は面白いほど簡単に消える、まるで蝋燭の火のように。命は全て尊いもので、この世界生きとし生けるもの全ては平等だなんだと宣っていた宗教もあったが、そんなわけない。 権力がある人間が尊重されて、権力がない人間は地べたを這いずる。その事実に別に不満はない、私だってその権力者達に依頼されて食いつないでいる。今日もまたいくつもの命を消した。冒険者のような明るい職業とは違い、私は依頼があればどんな者でも殺す代行殺人組織の1人だ。
幼い頃にこの組織のボスに拾われ殺人の為の技術を教え込まれた。辛くて苦しくて地獄のような訓練だった。なぜ両親と同様に私のことも殺さなかったのかと思っていた。でも今はそんな憎しみは消え去り黙々と殺人を繰り返す。
いつからか色々な感情が乏しくなり世界がまるで色褪せたかのように暗く濁って見える。両親を殺した憎いはずのあの男に命令をされてもなんの抵抗もなく頷けてしてしまう。
私はこんなにも薄情者だったのだ。でもそれでいい、この世界では感情など無用なものだ。感情があることで心が壊れた人や、良心などがあったせいでこの生活に耐えられなくなり組織を抜け出し見るも無惨に殺された人達を数え切れないほどみてきた。
私はそれを見て哀れに思った。ここでは正直者が馬鹿をみる。脅しも殺しも日常茶飯事、不合法さえも合法へと変わる。 そんな腐りきった場所でなぜそんなにも悩み苦しみ、躊躇するのだろう
私は他よりも躊躇いがなく良心もないらしい、ボスがとても愉快そうに語っていた。なんでも良いがあの喜怒哀楽の激しさを何とかして欲しい、上機嫌だと思っていたら急に不機嫌になる。正直面倒臭い。しかし理性はあるのか幹部となった私には手は出さないが下の部下たちには躊躇なく引き金を引く。部屋が鉄臭くなるのでやめてもらいたい。
「お前がすぐ片付けるんだからべつにいいだろ」
と掴みどころなく笑いながら部屋を出る。それを私が魔法でさっさっと部屋を元に戻していく。しかし死体はどうしようもできないので、部下に押し付ける。雑務だって意外とあるのだから魔法を使って疲れたくはないと言うのに…
私は他よりも魔力が多く、勇者となれるほどの資質があったと誰かが言っていたが、その通りのようで女というハンデはないかのように上に登れた。
それでもグチグチと言うやつがいたら実力で黙らせてきた。本当にこの場所は残酷なほど実力主義だ。
チリリン と携帯の着信音がなった
あぁ依頼がきたな こんなつまらない昔話は終わりにしようか、日常へ戻る時間だ
この世界では珍しい黒髪を後ろに束ね、青い瞳を隠すように黒いサングラスをかける
魔法が使えなくても戦えるよう愛用の銃に弾丸をいれ、太もものガーターにナイフを数本差し込み、体のあちこちに飛び道具を隠す
窓を開け、屋上に飛び移りターゲットの現在地を携帯で見て走り出す
私No.7のお仕事だ
もちろんあなたも私のことを知ったのだから秘密にしないと私のリストに載るかもしれないよ、なんのリストだかは内緒だけれどね




