第8話「新たなる誓い」
一ヶ月が経った。町は、劇的に変わっていた。
当初五十人だった一団は、今や二百人を超えていた。噂は、辺境全体に広がっていた。
「追放された貴族が、荒野に国を作った」
「そこでは、すべての人が自由に生きることができる」
「大地さえも、彼の力で蘇る」
その噂を聞いて、次々と人々が集まってきた。王国の支配下では飢えていた農民。王国の法から逃げた盗賊たち。身分制度に虐げられた人々。すべてが、この新しい国へ向かった。
レオンは、町の中央に立つ塔の上に立っていた。その塔は、古い建造物の一部を修復したものだ。
「坊ちゃん」
と、ミーナが上ってきた。彼女は、今では町の管理人として働いていた。
「新しい難民が来ました。五十人です」
「五十人?」
「はい。王国の東部から来たそうです。旱魃で村が消えたと」
レオンは、新しい難民たちを見つめた。疲弊した顔。希望と不安の入り混じった表情。
「彼らを、受け入れるのですか?」
と、ミーナが聞いた。
「ああ。ここには、すべての人が受け入れられる」
レオンは、塔から降りた。新しい難民の前に立つと、彼は静かに言った。
「ようこそ。ここは、追放された者たちの国だ。ここにいる誰もが、かつて王国に捨てられた者たちだ」
難民たちは、レオンの言葉を聞いていた。
「だから、ここでは、誰も、誰かより上ではない。誰も、誰かより下ではない。
すべてが、対等だ」
「本当ですか?」
と、難民の一人が聞いた。
「本当だ。そして、ここで働けば、食べ物もある。家も用意する。学ぶこともできる」
「何を学ぶのですか?」
「生きることだ。そして、自分たちの力で、新しい世界を作ることを」
難民たちは、歓声を上げた。その夜、レオンは、ルリア、リナ、ミーナ、そして村長たちと、会議を開いた。
「状況は、予想より深刻だ」
と、ルリアが言った。
「難民の数が増え続けている。このままでは、食料が不足する」
「では、どうする?」
と、リナが聞いた。
「領土を拡大する」
レオンが答えた。
「今、我々が支配しているのは、この町周辺だけだ。だが、王国の他の地域でも、大地の魔力が失われている」
「つまり?」
「つまり、他の場所も、俺たちが再構築することができるということだ。そして、その過程で、より多くの人々を救うことができる」
「しかし、王国は?」
村長が聞いた。
「王国は、我々を反乱分子として見ている。既に、王国軍の監視部隊がいくつか、こちらへ向かっているという報告もある」
「では、戦うということですか?」
と、ミーナが不安そうに聞いた。
「戦う」
レオンが、はっきりと答えた。
「だが、俺たちは、防衛戦を戦うだけだ。王国を侵略するのではなく、我々の領土を守る」
「それでも、戦いが起きるということですか」
と、ルリアが言った。
「ああ。俺たちは、もう王国の支配下にない。だから、王国が俺たちを滅ぼそうとするなら、俺たちは、それに抵抗する」
レオンの言葉は、冷徹だった。だが、その奥には、深い決意がある。
「では、準備を始める」
と、彼が言った。
「防衛施設を作る。兵器を用意する。そして、すべての住民に、我々の理念を教える」
「理念ですか?」
「ああ。我々は、何のために戦うのかを、誰もが理解している必要がある」
その日から、町の準備が始まった。城壁が強化された。武器が製造された。そして、レオンは、毎日、住民たちに対話を行った。
「なぜ、俺たちは、ここにいるのか」
「なぜ、俺たちは、戦う必要があるのか」
「何を守るのか」
その答えは、すべての住民に共有された。
二週間後。王国軍が来た。兵士たちは、数千人。その先頭には、アーデルハイト領の軍司令官がいた。
「レオン・アーデルハイト」
と、司令官が叫んだ。
「お前は、王国の法を破り、反乱を起こした。今ここで投降するなら、死罪は免除する」
レオンは、城壁の上から答えた。
「投降はしない。俺たちは、この地を守る」
「では、滅ぼすまでだ」
王国軍が、攻撃を開始した。戦いは、激しくも一方的なもので合った。レオンたちは王国軍の、街への侵入を許さなかった。レオンの再構築の力は、防衛に大きな効果を発揮した。
壊れた防壁は、即座に修復された。罠は、自動的に作られた。やがて、王国軍は、攻撃を断念した。
その夜。
司令官がやってきた。一人で。
「レオン殿」
と、司令官が言った。
「我々は、何度も何度も、攻撃を試みた。だが、お前たちは、決して破れない」
「そうだ」
レオンは、静かに答えた。
「俺たちは、ここで生きることを決めた。だから、死ぬまで、ここを守る」
司令官は、静寂した。やがて、彼は言った。
「わかった。王国からの報告で、これはお前たちの独立した国として認めるよう、提言する」
「そうか」
「だが、条件がある。王国との境界を、今の国境とする。そして、王国の領土へは、侵略しない」
「わかった」
レオンが答えた。
「それが、公正だ」
翌日。王国軍は、撤退した。そして、王国政府からの公式な通知が来た。
「アーデルハイト地域の独立国家設立を、条件付きで認可する」
その条件は、王国との協力と、中立の保持だった。レオンは、それを受け入れた。
その日の夜。レオンは、町の中央広場に、すべての住民を集めた。
火が、燃えている。篝火だ。
「ここにいる皆さん」
と、レオンが言った。
「ここに集まった人々は、かつて王国に捨てられた者たちだ。だが、今、我々は、新しい国を作った」
住民たちは、静かに聞いていた。
「我々は、何を作ったのか。それは、自由の国だ」
「自由?」
と、ミーナが聞いた。
「ああ。王国にはなかった、自由。血筋で決められない人生。才能だけで評価されない人生。すべての人が、対等に生きることができる自由だ」
レオンは、火を見つめた。
「だが、自由は、責任と共に来る。自由に生きるとは、自分たちで世界を作ることだ」
「ですから、俺たちは、ここから、新しい秩序を作る。王国の呪縛からも。古い思想からも。自分たちの手で」
「どのようにですか?」
と、ルリアが聞いた。
「一歩ずつだ。今日の次は、明日。明日の次は、明後日」
レオンは、手を上げた。
「そして、いずれ、この国は、世界の一部となる。そして、世界全体が、自由になる日まで」
住民たちは、歓声を上げた。レオンは、空を見上げた。星々が、明るく輝いている。古代装置から聞いた言葉が、彼の心に鳴り響く。
「再構築者よ。世界を直す者よ」
だが、レオンは、もう古代人の声には従わない。彼は、自分たちの道を、自分たちで作
る。古い秩序に支配されず。新しい使命に支配されず。ただ、人々の自由のために。
翌朝。レオンは、ルリアと共に、城から見える景色を眺めた。
緑の大地。農地。そして、灯火に照らされた町。
「ルリア」
「何ですか?」
「すべてが、始まったんだ」
「そうですね」
「これからどうなるか、わかりません。王国からの圧力もあるでしょう。世界がどう動くか、我々も知りません」
「ですが?」
「ですが、俺たちは進みます」
レオンは、微かに微笑んだ。
「新しい世界を作るために。失われた秩序を直すために。そして、すべての人が、自由に生きることができる日まで」
「一緒に」
ルリアが言った。
「ああ。一緒に」
町では、仕事が続いていた。リナは、商人との交渉をしていた。ミーナは、新しい難民たちに、町のやり方を教えていた。村長は、農業計画を立てていた。
すべてが、新しい秩序の下で、動いている。
三日後。古代装置が、再び反応した。レオンが、地下へ向かうと、映像が浮かび上がった。
世界の各地。そこに、別の再構築者たちの痕跡。彼らも、目覚めている。彼らも、新しい国を作ろうとしている。
「やはり、我ら複数の再構築者は、同時に目覚めたのか」
と、装置の声が聞こえた。
「ああ」
と、レオンが答えた。
「世界が、修復の時期に来たのだ」
「では、貴方たちは、協力するのか?」
「わかりません。だが、もし必要なら、協力することもあるでしょう。ただし、自分たちの意思で」
「了解した。貴方たちの旅は、これからが本当の始まりだ」
映像が消えた。装置は、静かになった。地上に戻ったレオンは、空を見上げた。空には、複数の陵のような形が見える。
古代装置がある場所。世界の各地に。
「では、行こう」
と、彼は呟いた。
「新しい世界を作るために」
一団は、再び旅立つ準備を始めた。だが、今回は違う。彼らは、もう逃亡者ではない。彼らは、新しい秩序の創造者だ。
新しい国の父と母だ。
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