第7話「目覚める遺跡の声」
その夜の三日後。レオンは、再び地下へ向かった。今回は、ルリアとリナが付き添った。
「坊ちゃん。本当に大丈夫ですか?」
と、リナが心配そうに言った。
「ああ。今度は、ただ話を聞きに来ただけだ」
三人は、古代装置のある空間へ到着した。装置は、静かに光っていた。
「これは……」
と、ルリアが呟いた。
「古代文明の遺跡。本当に存在していたのですね」
「ああ。そして、これは単なる遺跡ではない。ネットワークだ」
レオンは、装置の周りを見回った。
「壁に見えるこれらは、何か?」
と、リナが聞いた。
「記録」
レオンは、壁に刻まれた古い文字を見つめた。
「古代文明の記録だ。彼らが何をしたのか、何を夢見ていたのか、すべてが刻まれている」
レオンは、壁に手を置いた。すると、装置が反応した。光が、更に強くなる。やがて、映像のようなものが、空中に浮かび上がった。
古代文明。数千年前の世界。栄えた都市。高い塔。多くの人々。そして、空を飛ぶ魔法の乗り物。大地から湧き出す、無限の魔力。
「これは……何ですか?」
と、ルリアが呟いた。
「古代の世界」
と、装置の声が響いた。その声は、前よりもはっきりしていた。
「我ら古代人は、魔力を完全に支配していた。天候も、大地も、すべてが我らの手の内にあった」
映像が続く。だが、やがて、それは変わった。
暗い雲が、空を覆う。大地が、割れ始める。都市が、崩壊していく。
「何が起きたのですか?」
と、リナが聞いた。
「暴走」
装置の声が答えた。
「我らの魔力が、暴走した。制御しきれなくなったのだ。その結果、我ら古代人のほぼすべてが、滅亡した」
映像は、より激しくなった。炎。地震。魔力の暴走。人々の悲鳴。やがて、すべてが静寂に包まれた。
「我らは、その時、決断した」
装置が続ける。
「すべてを失うことになっても、この技術と力を保存する。そして、遠い未来の世代のために、『再構築者』を探し出すプログラムを設置した」
「再構築者?」
と、レオンが聞いた。
「貴方だ」
装置は、レオンを指差すように光った。
「我らは、古き血統の中に、再構築の力を眠らせておいた。それが、千年ごと、万年ごとに目覚め、世界を正すことを望んでいた」
「つまり、俺は、古代人に作られた?」
「いや」
装置の声は、静かになった。
「貴方は、自然に進化した。だが、貴方の血統に、我らの遺伝子が混ざっていた。その結果、貴方は、再構築者として目覚めたのだ」
映像は、さらに続いた。古代人たちが、世界の各地に遺跡を建設する姿。その中で、彼らが何かを保存している。
力。知識。技術。そして、最後に、一つの大きな装置が映される。
「これは?」
と、レオンが聞いた。
「世界再構築装置」
装置が答えた。
「もし、世界が完全に崩壊する時が来たなら、この装置を使い、すべてを初期化することができる。その時、貴方たちが必要になる」
「初期化?」
「そう。世界のすべての歴史と記録を、一度リセットし、新しく始めるのだ」
レオンは、その言葉に震えた。
「つまり、俺たちは、そのためだけに存在している?」
「いや」
装置の声は、異なる音色になった。
「貴方たちは、選ぶ自由がある。世界を直すか、それとも、世界を初期化するか」
「では、今、世界はどのような状態なのか?」
と、ルリアが聞いた。
「衰退」
装置が答えた。
「古代の魔力は、徐々に消えていっている。王国は、その力を失い、衰退している。大地の魔力も、日に日に失われている」
映像が、現在の王国の姿を映す。緑の減少。人口の減少。貴族社会の腐敗。
「このままいくと、何が起きる?」
と、レオンが聞いた。
「滅亡」
装置が、単語だけで答えた。
「五十年以内に、王国は完全に衰退する。そして、その後、大陸全体が荒廃する。そして、百年以内に、世界は再構築装置の起動を待つ状態になる」
「では、俺たちは何をすればいい?」
と、レオンが強く言った。
「世界を直すのだ」
装置が答えた。
「貴方の再構築の力を使い、失われた魔力を復活させる。大地を正す。人々を導く。そして、新しい秩序を作る」
「それは、可能なのか?」
「不可能ではない。だが、非常に困難だ。貴方一人では、不可能だ」
「では、何が必要か?」
「協力者」
装置が答えた。
「他の再構築者たち。古き血統を持つ者たち。彼らと共に、世界を直す必要がある」
「他の再構築者?」
と、ルリアが聞いた。
「世界のどこかに、存在している」
装置が答えた。
「我らが予定していた、再構築者たち。彼らも、もう目覚めている可能性が高い」
映像が消えた。装置は、再び静かになった。
「理解できたか?」
と、装置の声が聞いた。
「はい」
と、レオンが答えた。
「俺たちは、世界を直す。そのために、仲間を探す。そして、古代人の遺産を使い、新しい世界を作る」
「それが、貴方の選択か?」
「ああ」
レオンは、強く頷いた。
「ただし、条件がある」
「条件?」
「俺たちは、自分たちの意思で動く。古代の指示に従うのではなく。そして、世界を直す時、人々の自由を守る。支配ではなく、協力で」
装置は、静寂した。長い、静寂。やがて、装置が光った。
「了解した。貴方は、自由だ。そして、貴方の使命は、自分で選ぶことができる」
「ありがとう」
レオンは、地下から上がることにした。ルリアとリナが、後に続いた。
地上に戻ると、太陽は昇っていた。朝だ。一団は、まだ眠っていた。
レオンは、ルリアとリナを連れ、町の高いところへ向かった。そこから、周囲が見える。
緑の大地。農地。そして、远方には、王国の領土が見えた。
「ルリア」
と、レオンが言った。
「ここから、俺たちは何をする?」
「何ですか?」
「古代人は、他の再構築者を探すことを求めている。だが、それは俺たちの目的ではない」
「では、目的は?」
「ここから、国を作ることだ。小さな国。だが、本当に人々が自由に生きることができる国。そこから、世界を変えていく」
ルリアは、その言葉を聞いて、微かに微笑んだ。
「わかりました」
「そして、もし必要になれば、他の再構築者たちとも協力する。ただし、自分たちの意思で」
「ええ」
リナが頷いた。
「我らは、自分たちの道を、自分たちで作ります」
その日、レオンは一団に報告した。古代文明の存在。世界の衰退。そして、彼らの使命。
一団は、その話を聞いても、騒がなかった。というより、彼らは既に覚悟していたのだ。レオンについて行くことで、何か大きな出来事に関わるであろうということを。
「では、どうするのですか?」
と、ミーナが聞いた。
「ここから、本当の国造りを始める」
レオンが答えた。
「ここを、王国とは違う、新しい国に作り替える。そして、この国から、世界を変えていく」
「どのように変えるのですか?」
「わかりません」
レオンは、正直に答えた。
「だが、一步ずつ進みます。そして、みんなで新しい世界を作ります」
一団は、その言葉に、再び歓声を上げた。
その夜。レオンは、一人で、城の最上階に立っていた。
(正確には、修復した建造物だが、彼らはそれを「城」と呼ぶようになっていた)
星々が、空を埋めていた。彼は、古代装置から聞いた言葉を反復した。
「世界を直す」
「古き血統」
「再構築者」
すべてが、現実のように感じられた。だが、同時に、彼は理解していた。古代人の計画は、あくまで「計画」に過ぎない。現実は、彼たちの手で作られなければならない。
「坊ちゃん」
と、リナが、階段から上ってきた。
「一人ですか?」
「ああ。少し、考え事をしていた」
「何を考えているのですか?」
「俺たちが、本当に世界を直すことができるのか」
リナは、その言葉を聞いて、微かに微笑んだ。
「できます」
「何故、そう言い切る?」
「貴方が、すでにここまで来たから」
リナは、城から見える景色を指差した。
緑の大地。農地。そして、灯火に照らされた町。
「数週間前、ここは何もない荒野でした。だが、今は?」
「ああ」
レオンは、それを見つめた。
「人々が生きることができる場所になった」
「そうです。貴方は、すでに世界を直し始めています」
その言葉が、レオンの心に刺さった。
「では、進みましょう」
と、彼は呟いた。
「新しい世界を作るために」
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