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追放された貴族は《再構築》の力で世界を直す  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第1章 追放の儀式

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第4話「追放の宣告」

翌朝、アーデルハイト城は異なる空気に満ちていた。昨夜、セントリム公爵からの書簡が届いていたのだ。その内容は、王都の貴族社会全体に波紋を広げていた。


「追放された貴族が、領主の許可なく魔力を操作した」


この報告は、王国内の重要な貴族たちの知るところとなった。そして、それは同時に、アーデルハイト家への圧力となった。父・アーデルハイト公爵は、王城から帰還した。その足で、すぐに家族会議を開いた。父は配下に命じ、すぐさまレオンを呼び戻す。



数日後、レオンは配下の騎士に連れられ、騎士の前にいた。そこには、父、兄エドガルド、そして顧問弁護士がいた。母と妹は、呼ばれていない。


「レオン」


父は、冷徹な声で言った。


「お前は、何をしたか、自覚しているのか?」

「はい。村の大地を修復し……」

「黙れ。お前がしたことは、修復ではない。反逆だ」


父は、書簡を掲げた。


「セントリム公爵は、お前の行為を『領主の権限侵害』と報告した。これは、王国法で極刑に相当する罪だ」


「しかし、私は村を救ったのです。飢饉に苦しむ人々を……」

「村の救済は、領主の責務だ。それをお前がするなど、領主の立場を脅かすものだ」


顧問弁護士が、静かに言った。


「貴族の身分を持つ者が、領主の権限を侵すことは、王国法第七条にて、剥奪と追放に値します」


レオンは、その言葉を聞いて、すべてを理解した。これは、昨日の追放ではない。これは、王国全体からの追放なのだ。


「さらに申し上げれば」


と弁護士が続ける。


「セントリム領での行為が明かされれば、貴族籍の剥奪だけでなく、禁錮刑が下る可能性もあります」

「では、どうすれば……」

「一つの道がある」


父が、冷たく言った。


「お前を、公式に『死亡した者』として記録する。そうすれば、王国法上、お前は存在しない者となる。追放ではなく、死亡扱いだ」

「父上……」

「これ以上の詮索は無用だ。明日の朝、お前はこの城を去る。以後、アーデルハイト家の者ではなく、王国の人間でもない」

「兄上は……」


レオンが兄に目をやった。エドガルドは、目を合わせない。


「兄上。何か言うことはありませんか?」

「……ない」


兄の返答は、完全な拒絶だった。


「わかりました」


レオンは、立ち上がった。


「では、明日の朝、ここを出ます」

「ひとつ、言っておく」


父が、レオンを呼び止めた。


「もし、お前がこの城の外で、アーデルハイト家の名を使うなら、王国軍を差し向ける。

わかっているな?」

「……はい」

「そして、二度とこの土地に戻るな。戻ったなら、抹殺する」


その言葉は、親の言葉ではなく、領主の脅迫だった。レオンが部屋に戻ると、妹のエリーズが待っていた。


「兄上」


エリーズは、涙を流していた。


「何をしているんですか?」


とレオンが聞いた。


「お父様とお兄様に、反対しました。でも、聞いてくれませんでした」

「エリーズ……」

「兄上。私も、一緒に来たいです」

「そんなことはできない。お前は、この家の者だ」

「嫌です。兄上を見捨てるくらいなら、私も出ていきます」


レオンは、妹の頭を撫でた。


「エリーズ。お前だけは、この家に留まりなさい。そして、いつか……」

「いつか、何ですか?」

「いつか、兄が世界を作り直すまで。待っていてくれ」


エリーズは、兄の言葉を理解できず、ただ泣いていた。


夜が更けた。レオンは、荷造りを始めた。持って行けるものは、わずかだ。服と、本を数冊。そして、自分の日記帳。そこに、リナが現れた。


「坊ちゃん。準備をしました。馬も、食料も」

「リナ。お前も、一緒に来てくれるのか?」

「当然です。貴方をお見捨てするわけには、いきません」


レオンは、リナに感謝の言葉を述べることはなく、ただ頷いた。


「では、城を出よう。二度と戻らないように」



朝が来た。城の門は、開かれていた。だが、家族の誰も、見送りに来ていなかった。兄のエドガルドも、母も、そして父も。ただ、城の高い塔の窓から、エリーズの姿が見えた。彼女は、窓から身を乗り出し、兄を見つめていた。


レオンは、一度だけ手を上げた。エリーズが、それに応じる。その後、レオンとリナは、城の門を通った。背後で、重い音を立てて、門が閉じられた。


城の外は、広大な領地だった。かつてレオンが歩いた道。見慣れた景色。だが、今はすべてが他人のものに見えた。


「坊ちゃん。どこに向かいますか?」


リナが聞いた。


「わからない」


レオンは、正直に答えた。


「ただ、南へ。そして、あの村へ」

「ミーナとルリアがいる村ですね」

「ああ。彼らだけが、俺を必要とする」


二人は、歩き始めた。王国の領土から、辺境へ。その時、何かが音を立てた。

馬蹄の音だ。レオンとリナは、身構えた。


「誰だ?」


と、声がした。馬の上から、武装した兵士が降りてきた。王国軍の兵士だ。


「我ら、アーデルハイト領の治安維持部隊だ。そこの者たち、身分を名乗れ」

「私たちは、この領地を出ていくだけです」


リナが答えた。兵士は、レオンの顔を見た。その瞬間、彼の表情が変わった。


「貴様!」


兵士は、レオンを指差した。


「アーデルハイト家の追放者か!」


レオンの身体が、緊張した。

「違う。俺は……」

「黙れ。領主の命だ。追放者は、見つけ次第殺せと」


兵士が、剣を抜いた。


「動くな」

「坊ちゃん」


リナが、レオンの腕を掴んだ。


「逃げましょう」


二人は、走り始めた。背後から、兵士たちが追ってくる。弓矢が、二人の前に落ちた。


「うわっ」


レオンは、方向を変えた。森へ。森の中なら、馬は追ってこられない。やがて、二人は森の奥へ消えた。森の中で、レオンとリナは息を整えた。


「坊ちゃん。大丈夫ですか?」

「ああ。兵士たちは、もう来ていない」


二人は、少しのあいだ、黙ったまま座っていた。やがて、レオンが口を開いた。


「これでもう、戻れない」

「そうですね」

「王国にも。家にも。俺は、完全に」

「死んだということですね」


リナの言葉は、冷徹だった。だが、それは事実だ。レオンは、アーデルハイト家の三男ではない。王国の貴族でもない。今、彼は「何もない」者だ。


「しかし」


と、リナが言った。


「同時に、制限もないということです」

「制限?」

「王国の法に、縛られない。貴族社会の序列に、支配されない」


リナは、微かに微笑んだ。


「貴方は、自由です」


レオンは、その言葉を反復した。


「自由……」


それは、彼が人生で初めて手にしたものだった。完璧さを求められない。才能を示す必要もない。ただ、生きることだけが、要求される。


「リナ。あの村へ向かおう」

「ミーナとルリアですね」

「ああ。俺たちは、新しい何かを始める必要がある」

「何ですか?」

「わかりません。だが、古代遺跡が教えてくれた。俺のギフトは、壊れたものを直すことができる力だと」


レオンは、森の中で立ち上がった。


「なら、俺たちは直そう。この壊れた世界を」


夕方、二人は村の入り口に着いた。村では、ミーナとルリアが、レオンを待っていた。


「坊ちゃん!」


ミーナが、走って飛びついた。


「どうしたのですか?怪我を?」

「ああ。兵士に追われた。だが、無事だ」


ルリアは、黙ったまま、レオンを見つめていた。その目は、何かを悟っていた。


「家から、追い出されたのですね」

「そうだ」

「私たちと同じように」

「ああ」


ルリアは、微かに微笑んだ。


「では、決めました。私は、あなたについて行きます。完全に」

「ルリア……」

「家も、王国も、もう私を必要としません。ならば、私は自由です」


その時、村長が現れた。


「レオン殿。ご無事でしたか」

「村長。すみません。問題を起こしてしまいました」

「いいえ。むしろ、我らに希望をくれました」


村長は、村人たちを連れてきた。


「レオン殿。彼らも、あなたについて行きたいと申しています。この村は、もう死んだ地です。だが、あなたと共に、新しい地を作り直すなら」


レオンは、驚いた。


「村長。それは……」

「我らは、あなたについて行く準備ができています」


村人たちは、旅装束を身につけていた。彼らは、本気だった。レオンは、自分が何をしたのか、理解した。


自分は、単なる追放者ではない。自分は、人々を導く者になりつつあるのだ。


「わかりました。では、みんなで行きましょう」

「どこへ?」


村長が聞いた。


「わかりません。だが、この大地を再構築する。新しい国を作る」


レオンは、南の地平線を見つめた。


「俺たちは、世界を作り直すんだ」



その夜、小さな村から、新しい一団が旅立った。レオンを中心に、リナ、ミーナ、ルリア、そして村人たちが。


彼らは、何もない。だが、彼らは自由だった。そして、それ以上に——彼らには、目的があった。



朝が来た。一団は、王国の領土を完全に出た。辺境の荒野へ。そこには、何もない。だが、何もないからこそ——すべてが始まるのだ。


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