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追放された貴族は《再構築》の力で世界を直す  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第1章 追放の儀式

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第3話「嘲笑と断罪」

村へ向かう途中、レオンとリナは旅商人の一団に出会った。


「朝早く旅をしているな。どこへ向かう?」


と、商人の頭が声をかけた。


「北の村です。水と食料を買いに」


とリナが答えた。


「そうか。なら運が良い。わしらは王都ヴェルモンドから来た。

その村は、この先二里だ。だが、馬車で行くなら、その脇道を通れ」


商人たちは親切に道を教えてくれた。そして、何か不要になった食料をくれた。リナは感謝の礼をした。



村へ着いたのは、昼近くだった。小さな村だ。民家は十軒ほど。すべてが老朽化し、壊れかけている。道路も、かつての石畳の面影すら残っていない。


「坊ちゃん。ここは……」


リナが眉をひそめた。確かに、この村は絶望の景色をしていた。村人たちの顔は、どれもやせ細り、目には生気がない。子どもたちもまた、力なく座り込んでいるだけだ。


「飢えているんだ」


レオンは、一目でそう判断した。水や食料の不足ではなく、大地そのものが死んでいるのだ。かつての農業ができる土地ではなく、魔力が枯れた荒野。だから、何も育たない。


「すみません。水をいただけませんか?」


リナが、一人の村人に声をかけた。老人は、じっとレオンを見つめた。


「お前ら、どこから来た?」

「南からです。旅の途中で……」

「貴族の血だな。その服装、その口調」


レオンは、反論できなかった。そう見えるのだから。


「今は違います。貴族籍を失ったものです」


老人は、レオンの顔をじっと見た。


「ほう。追放か?」

「そう言えるでしょう」


老人は、何かを考えるように口をつぐんだ。やがて、村長の家へ案内されることになった。村長は、痩せ細った中年の男だった。部屋には、テーブルと椅子しかない。すべてが、貧しい。


「追放された貴族か」


と村長が言った。

「はい。特に有用なギフトを持たぬ身で……」

「ギフトか。そんなもの、この村には関係ない」


村長は、窓の外を見つめた。


「かつては、この大地も肥沃だった。今から三十年前、まだ城の領主が名君だった時代。このアーデルハイト領は、栄えていた。だが……」

「何が起きたのですか?」

「古い話だ。魔力の枯渇。王国全体で、不可解な現象が起きている。大地の魔力が、消えている。だから、何も育たなくなった」


村長は、テーブルの上に乗せられた、一粒の米を指差した。


「これが、今月の収穫だ。一粒だ。この村の全員が食べても、一日で終わる」


レオンは、言葉を失った。


「だから、私たちは消えるだけだ。いずれ、ここに人間はいなくなる」


村長の声は、何の感情も持たなかった。それは、覚悟なのか、諦観なのか。


「手伝えることはありませんか?」


リナが、勇気を出して尋ねた。村長は、冷たく笑った。


「追放された貴族と、その使用人か。手伝える?何ができる?」


そのとき、外から声が聞こえた。


「兄上!」


若い女の声だ。そして、その声の主が現れた。金色の髪。青い瞳。その美しさは、何物にも勝る。レオンの身体が、硬直した。


「ルリア……」


彼女の名前は、ルリア・セントリム。かつてのレオンの婚約者だ。ルリアが、ここにいるはずがない。王都に残っていたはずだ。彼女の家の者たちと共に。


「レオン?」


ルリアは、一瞬のあいだ、信じられないという表情を浮かべた。やがて、それは蔑みへと変わった。


「何ですか?あなたは、何をしているのですか?」


ルリアの兄が立ち上がった。セントリム公爵だ。王国有数の貴族だ。


「追放者が、我が領地に?」

「兄上。彼は……」


「何であれ、この者は我が領地に不要だ。村長、これは、あなたの職務怠慢か?」

「申し訳ございません。今、追い出します」


村長が立ち上がろうとした。


「待つがいい」


レオンが、静かに立ち上がった。


「あなたが、セントリム公爵ですか」

「そうだ。そして、お前は何もない追放者だ。立場を弁えよ」

「立場は、確かに何もありません。しかし……」


レオンは、村を見つめた。


「この村を救う方法があります」


セントリム公爵は、笑った。


「救う?E級の修復ギフトで?」


ルリアから、王城での一件が伝わっていたのだ。

「E級か。笑わせるな。貴族として最も無能な力だ。そんなもので、何ができる?」

「試させてください」


レオンは、簡潔に言った。

「一日。一日あれば、この村が何かが起きるかどうか、わかります」


セントリム公爵は、目を眇めた。


「構わん。試してみるがいい。ただし、何も起きなければ、この領地から二度と来るな。

追放者として」

「承知しました」


その夜、レオンは村の端まで行った。リナが、懐中灯を持って後を続く。村の外、かつて畑だったと思われる土地に、レオンは立った。


「坊ちゃん。何をするのですか?」

「古代遺跡で学んだ。自分の力は、壊れたものを直す力ではなく、理解し再構築する力だ」


レオンは、地面に手を置いた。


「この大地も、壊れている。かつての魔力を失い、草木も育たず……」


彼は、目を閉じた。古代遺跡でそうしたように、レオンは大地の「構造」を理解しようとした。


土壌の成分。魔力の流れ。かつてあったはずの力がどこへ行ったのか。やがて、レオンは理解した。


魔力は、消えたのではない。封じられたのだ。王国全体で、何らかの力によって、大地の魔力が古い遺構の中に閉じ込められていた。だから、新しい魔力が流れ込めず、何も育たないのだ。


レオンは、その「封じ」を理解した。そして——


手を動かした。何が起きた。大地から、かすかな光が放たれた。封じられていた魔力が、解放されたのだ。土が、震えた。やがて、小さな芽が、ところどころで顔を出し始めた。


「坊ちゃん……」


リナが、息を呑んだ。その場所は、徐々に緑へと変わっていった。



朝が来たセントリム公爵とルリア、村人たちが、かつての畑へ向かった。そこには、昨夜のレオンのギフトの成果が、はっきりと目に見えていた。


緑の草。背丈ほどの穀物。水が流れ出ている小川。


「馬鹿な……」


セントリム公爵の顔が、蒼白になった。


「これは……何だ?」

「大地の魔力を、解放しただけです」


レオンは、冷静に答えた。


「このままなら、この村は、一月で十分な食料を収穫できるでしょう」


村人たちは、歓声を上げた。子どもたちが、草に飛びついた。しかし、セントリム公爵の顔は、怒りで赤くなっていた。


「これは、何をしているんだ?」

「村を救っています」

「それは、許可なく領地の魔力を操作したということだ。これは、領主への反逆だ!」


セントリム公爵が、剣を抜いた。


「追放者が、領地で何をしようと、我が領内での政策決定は領主の権限だ。貴様は、私の許可なく魔力を操作した。これは、大罪だ」


「お待ちください」


と、ルリアが言った。


「兄上。彼はこの村を救ったのです。何が悪いのですか?」

「黙れ、ルリア。貴様も、追放者に魅了されたのか?」

「違います。ただ、この行為は悪いことではないと……」

「王国の法では、領主の命に背くことは、罪だ。」


セントリム公爵は、剣を構えた。


「貴様を、この場で罰する」

「兄上、やめてください!」


ルリアが、セントリム公爵と剣の間に飛び込んだ。


「ルリア!」


セントリム公爵は、仕方なく剣を下ろした。


「貴様は、この者の何だ?」

「私の……元婚約者です」

「そうか。つまり、貴様は、王国の秩序を壊す者に肩入れするということだな」


セントリム公爵は、冷たく言い放った。

「ならば、貴様も、もはや我が家の者ではない。ここより去れ」


ルリアの顔が、蒼白になった。


「兄上?」

「家に帰った時に、貴様の部屋は封鎖されている。貴様は、セントリム家を離別した者だ。二度と顔を見せるな」


セントリム公爵は、馬に乗り込んだ。そして、一言だけ言い残した。


「貴様ら追放者は、王国にとって不要だ。この村も、しょせんは荒野に呑まれる。無駄な抵抗をするな」


そして去った。村は静寂に包まれた。ルリアは、その場に立ったまま、動けなくなっていた。


「私は……」


彼女は、呟いた。


「家族を、失ってしまった」


レオンは、ルリアに近づいた。


「ルリア」

「触らないでください」


ルリアは、振り返った。その顔には、涙があった。


「あなたは、何もかも失わせてくれました。家族を。立場を。すべてを」

「ルリア……」

「だから……」


ルリアは、その瞳をレオンに向けた。


「私も、あなたの道に付いていくしかないんですね。否応なく」

「ルリア、それは……」

「冗談です」


ルリアは、微かに笑った。


「でも、事実です。兄は私を切り捨てた。王国も、私を必要としない。ならば、私は自由です」


ルリアは、レオンの手を取った。


「一つ、条件があります」

「何ですか?」

「あなたが、世界を壊した人間ではなく、直す人間であることを、証明してください」


レオンは、頷いた。


「わかりました」


その夜、村長は、村人たちに報告した。


「この村は、新しい時代を迎える。追放された貴族と、捨てられた貴族娘が、我々を導く。それでいいか?」


村人たちは、黙ったまま、空を見つめていた。かつての絶望は、別の形の不安に変わっていた。だが、それは、希望の始まりかもしれない。翌朝、レオンは三人になっていた。


リナ。ルリア。そして、村の少女ミーナが、レオンについていくことになっていた。


「一緒に行きます」


と、ミーナは言った。


「あなたが、この大地を直してくれたから。私も、この村の未来を見たいです」


レオンは、小さな少女を見つめた。そして、ようやく理解した。自分のギフトは、物や土地を直すだけではなく、人の心も直すことができるのかもしれない。絶望に沈んだ者たちを、希望で満たすことができるのかもしれない。


「さあ、行こう」

レオンは、四人を連れて、村を出た。背後では、村人たちが、新しく育った穀物を手に、感謝の言葉を放っていた。


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