第17話「初依頼、採掘坑の崩落」
第17話「初依頼、採掘坑の崩落」
アイリスに案内された部屋は、ギルドの作戦室だった。大きなテーブルがあり、壁には地図が掛けられている。
「座ってください」
アイリスが椅子を勧めた。レオン、ルリア、リナが席についた。アイリスは、テーブルの上に一枚の書類を置いた。
「今朝、緊急の依頼が入りました」
アイリスは、書類を指差した。
「ファルマの北、十キロほどの場所にある鉱山で、崩落事故が発生しました。
作業員十二名が、坑道内に閉じ込められています」レオンは、書類を手に取った。詳しい状況が記されている。
「崩落の規模は?」
「かなり深刻です。主要な坑道が三箇所、完全に塞がれています」
アイリスは、地図を広げた。鉱山の構造図だ。
「ここ、ここ、そしてここが崩落箇所です」
アイリスが、三箇所を指差した。
「通常の手段では、掘り出すのに数日かかります。だが、その間に作業員が……」
「わかりました」
レオンは、立ち上がった。
「すぐに向かいます」
「本当ですか?」
アイリスは、少し驚いた表情を見せた。
「あなたの再構築の力で、坑道を修復できると?」
「試してみなければわかりませんが、可能だと思います」
レオンは、決然と答えた。
「では、案内をつけます」
アイリスは、扉を開けて、外に声をかけた。
「マルク!」
一人の男が入ってきた。三十代くらいの、屈強な体格の冒険者だ。
「呼んだか、マスター」
「この方たちを、鉱山へ案内してください」
「了解」
マルクは、レオンたちを見た。
「俺はマルク。ギルドのB級冒険者だ」
「レオンです。よろしく」
「よろしく。こっちだ、すぐに出発する」
ギルドの外には、馬が四頭用意されていた。レオン、ルリア、リナ、そしてマルクが、それぞれ馬に乗った。
「鉱山まで、全速力で行く。ついてこれるか?」
マルクが聞いた。
「問題ない」
レオンは頷いた。四人は、ファルマの北門を抜けて、街道を駆けた。馬の速度は速い。風が顔を打つ。
約一時間後、鉱山が見えてきた。石造りの建物と、坑道の入口。その周辺には、多くの人々が集まっている。作業員の家族たちだろう。不安そうな顔をしている。
馬を降りると、すぐに鉱山の責任者が駆け寄ってきた。
「ギルドの方ですか?」
「ああ。俺たちが救出に来た」
マルクが答えた。
「こちらは?」
責任者が、レオンを見た。
「俺はレオン。再構築の力で、坑道を修復する」
「再構築?」
責任者は、首を傾げた。
「そんな力で、本当に……」
「とにかく、中を見せてくれ」
レオンは、坑道の入口へ向かった。坑道の中は、暗かった。松明を持って、一行は奥へ進んだ。責任者が、先頭を歩いている。
「ここです」
責任者が、立ち止まった。前方には、崩落した岩と土が、坑道を完全に塞いでいる。
「この奥に、作業員が閉じ込められています」
「どのくらいの距離だ?」
レオンが聞いた。
「約五十メートルです。だが、この崩落を掘るのは……」
「大丈夫だ」
レオンは、崩落箇所に近づいた。手を、岩に触れる。古代遺跡で学んだ感覚を、呼び起こす。
岩の構造。土の流れ。すべてが、脳内に流れ込んでくる。
「これなら、できる」
レオンは、両手を岩に当てた。再構築の力を発動する。青白い光が、レオンの手から放たれた。
光は、岩に染み込んでいく。岩が、ゆっくりと動き始めた。崩落していた岩が、元の位置へ戻っていく。土が、固まっていく。やがて、坑道が開通した。
「信じられない……」
責任者が、呟いた。
「本当に、直った」
「急ごう。他にも崩落箇所がある」
レオンは、坑道の奥へ進んだ。二箇所目の崩落箇所も、同じように修復した。だが、三箇所目は、規模が違った。坑道全体が、大きく崩れている。
「これは……」
マルクが、眉をひそめた。
「かなり深刻だな」
「ああ」
レオンは、崩落箇所を見つめた。ただ岩を動かすだけでは、修復できない。坑道の構造そのものが、歪んでいる。
「時間がかかるぞ」
レオンは、地面に手を置いた。坑道全体の構造を、読み取る。どこが弱くなっているのか。どこを補強すれば、安定するのか。すべてを理解する。
「わかった」
レオンは、再び崩落箇所に手を当てた。今度は、より強い力を込める。青白い光が、より明るく輝いた。岩が、大きく動く。土が、固まる。そして、坑道の天井が、補強される。
数分が経った。レオンの額には、汗が浮かんでいる。やがて、光が消えた。坑道は、完全に修復されていた。
「すごい……」
責任者が、感嘆の声を上げた。
「こんなこと、見たことがない」
「作業員は、どこだ?」
レオンが聞いた。
「この先です。すぐに確認します」
責任者が、奥へ走った。しばらくして、声が聞こえた。
「いた!みんな無事だ!」
歓声が、坑道に響いた。作業員たちは、全員無事だった。怪我をしている者もいたが、命に別状はない。
坑道の外に出ると、家族たちが泣きながら抱きついた。
「ありがとう、ありがとう!」
「本当に、ありがとうございます!」
感謝の言葉が、レオンに向けられた。レオンは、ただ頷いた。マルクが、レオンの肩を叩いた。
「やるじゃないか。あんたの力、本物だな」
「これが、俺の仕事だ」
レオンは、坑道を見つめた。責任者が、レオンに近づいてきた。
「本当に、感謝します。これは、報酬です」
責任者が、袋を差し出した。中には、金貨が入っている。
「これは……」
「鉱山からの謝礼です。どうか、受け取ってください」
レオンは、袋を受け取った。
「ありがとうございます」
ファルマに戻ったのは、夕方だった。ギルドに到着すると、アイリスが待っていた。
「聞きました。見事な働きだったそうですね」
「運が良かっただけです」
レオンは、謙遜した。
「いいえ」
アイリスは、首を振った。
「あなたの力は、本物です。マルクからも報告を受けました」
アイリスは、一枚の証明書を取り出した。
「これが、冒険者登録証です」
レオンは、証明書を受け取った。そこには、自分の名前と、ランクが記されている。
ランク:C級
「C級?」
レオンは、驚いた。通常、新人はF級から始まる。
「あなたの働きは、C級に相応しいと判断しました」
アイリスは、微笑んだ。
「それに、あなたの噂は既に広まっています。辺境に町を作った貴族、と」
「噂か……」
レオンは、複雑な表情をした。
「気にすることはありません」
アイリスは、言った。
「ここでは、身分は関係ない。実力がすべてです」
「わかりました」
レオンは、登録証をしまった。
「これから、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
アイリスは、手を差し出した。レオンは、その手を握った。ギルドを出ると、ルリアとリナが待っていた。
「お疲れ様です、レオン」
ルリアが言った。
「ありがとう」
「では、宿に戻りましょう」
リナが提案した。
「そうだな」
三人は、宿へ向かって歩き始めた。街は、夕日に照らされて、オレンジ色に染まっている。
「レオン」
ルリアが、声をかけた。
「何だ?」
「あなたの力、本当に素晴らしいです」
ルリアは、レオンを見つめた。
「あなたなら、きっと世界を救えます」
「世界を救う……」
レオンは、空を見上げた。
「まだ、遠い道のりだ」
「でも、一歩ずつ進んでいます」
ルリアは、微笑んだ。
「私も、一緒に進みます」
「ありがとう、ルリア」
三人は、宿へ戻った。部屋に入ると、レオンは窓から街を見下ろした。
ファルマの街。多くの人々が、ここで生きている。そして、その人々の中に、協力者がいるかもしれない。
「明日から、また動こう」
レオンは、そう決意した。この街で、何を見つけるのか。誰と出会うのか。それは、まわからない。だが、確実に、前に進んでいる。
レオンは、ベッドに横になった。疲れていたが、心は満たされていた。
今日、人を救った。それが、自分の力の意味なのだ。窓の外では、星が輝き始めていた。
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