第16話「ギルドの街へ」
第16話「ギルドの街へ」
翌朝、レオンは出発の準備をしていた。執務室では、リナとルリアが既に待っていた。
「準備はできたか?」
レオンが聞くと、リナが頷いた。
「はい。馬車と護衛、それに商品のサンプルを用意しました」
リナの横には、大きな荷物が置かれている。耐性植物の加工品や、町で作られた工芸品だ。
「私も準備できています」
ルリアが言った。彼女は旅装束に着替え、腰には剣を下げている。
「では、行こう」
三人は、執務室を出た。
町の門前では、ミーナとエマが見送りに来ていた。
「坊ちゃん、気をつけてくださいね」
ミーナが心配そうに言った。
「ああ。町のことは頼む」
「任せてください」
ミーナは力強く頷いた。
「それから、これ」
エマが、小さな袋を差し出した。
「道中の食料です。赤根草のパンと、干し肉です」
「ありがとう」
レオンは、袋を受け取った。馬車に乗り込むと、御者が手綱を取った。
「では、出発します」
馬車が動き出した。ミーナとエマが、手を振っている。レオンたちも、手を振り返した。
やがて、町が小さくなり、見えなくなった。馬車は、街道を進んでいく。リコンストラクト領からファルマまでは、約三日の道のりだ。街道は、かつては王国が整備していたものだが、今では荒れている箇所も多い。
馬車の中で、リナが地図を広げていた。
「この街道を真っ直ぐ行けば、二日でグレンの村に着きます。そこで一泊して、翌日にファルマへ」
「グレンの村か」
レオンは、地図を覗き込んだ。
「そこは、大丈夫なのか?」
「商人の情報では、まだ機能している村だそうです。宿もあるとか」
「そうか」
レオンは、窓の外を見た。街道の両脇には、枯れた畑が広がっている。かつては農地だったのだろうが、今は放棄されている。
「魔力の枯渇は、ここまで広がっているのか」
ルリアが、同じく窓の外を見ながら言った。
「ええ。王国全体で、同じ状況です」
リナが答えた。
「だからこそ、リコンストラクト領の耐性植物が注目されるんです」
昼過ぎ、馬車は小さな川の近くで休憩した。レオンたちは、馬車から降りて、川のほとりで昼食を取った。エマが持たせてくれた赤根草のパンは、思ったより美味しかった。
「エマの料理の腕も上がったな」
レオンが言うと、ルリアが微笑んだ。
「ミーナさんが教えているそうですよ」
「そうか」
レオンは、パンを食べながら、町のことを思った。あの町は、みんなで作り上げたものだ。そして、これからもっと大きくなっていく。
「レオン」
リナが声をかけた。
「ファルマで、何を探すつもりですか?」
「協力者だ」
レオンは、川の水を見つめながら答えた。
「森の魔獣を倒すには、もっと多くの人手が必要だ。それに、町を守るための防衛力も強化しなければならない」
「冒険者ギルドなら、そういう人たちが集まっているはずです」
リナが言った。
「ただし、報酬は必要です」
「金は用意してある」
レオンは、腰の袋を叩いた。
「町の備蓄から、ある程度持ってきた」
「わかりました」
休憩を終えて、再び馬車は進んだ。午後の日差しが、街道を照らしている。
しばらく進むと、前方に人影が見えた。
「止まれ」
レオンが御者に指示した。馬車が止まる。人影は、徐々に近づいてきた。
五人の男たち。武器を持っている。
「略奪団か」
ルリアが、剣の柄に手をかけた。男たちが、馬車を囲んだ。
「おい、そこの馬車」
リーダーらしき男が言った。
「荷物を置いていけ。そうすれば、命は助けてやる」
レオンは、馬車から降りた。
「断る」
「何だと?」
男が、剣を抜いた。
「貴族の坊ちゃんか?いい服を着てるじゃねえか」
他の男たちも、笑いながら武器を構えた。
「最後のチャンスだ。荷物を置いていけ」
「だから、断ると言っている」
レオンは、地面に手を置いた。再構築の力を発動する。男たちの足元の地面が、突然崩れた。
「うわっ!」
男たちが、バランスを崩して倒れた。次の瞬間、地面から土の壁が隆起し、男たちを囲んだ。
「何だ、これは!」
男たちが、慌てて立ち上がろうとするが、壁に阻まれて動けない。
「魔法か!」
「くそっ、こいつは魔法使いだ!」
レオンは、静かに男たちに近づいた。
「お前たちに、選択肢をやろう」
レオンは、冷たい声で言った。
「一つ。ここで土に埋まって死ぬ。二つ。武器を捨てて、立ち去る」
男たちは、レオンを見つめた。その目には、恐怖があった。
「わ、わかった!武器を捨てる!」
リーダーが叫んだ。男たちは、剣や斧を地面に投げた。レオンは、土の壁を崩した。
「立ち去れ。二度と、この街道で悪さをするな」
男たちは、慌てて逃げていった。馬車に戻ると、リナが安堵の表情を浮かべていた。
「さすがです、坊ちゃん」
「あんな連中、相手にする価値もない」
レオンは、馬車に乗り込んだ。ルリアが、微かに微笑んでいた。
「レオン、あなた、昔より強くなりましたね」
「そうか?」
「ええ。追放された頃のあなたは、もっと弱々しかった」
「……そうかもしれない」
レオンは、自分の手を見つめた。確かに、変わった。力を得て、人を守れるようになった。
「だが、まだ足りない」
レオンは、窓の外を見た。
「もっと強くならなければ、この世界を守れない」
夕方、馬車はグレンの村に到着した。小さな村だが、まだ活気がある。宿屋の看板が見えた。
「ここで、一泊しましょう」
リナが提案した。
「ああ」
三人は、馬車を宿屋の前に停めた。宿の主人は、中年の女性だった。
「いらっしゃい。お泊まりですか?」
「はい。三人と、御者の分、部屋をお願いします」
リナが答えた。
「わかりました。二部屋でいいですか?」
「はい」
部屋に案内されると、レオンは窓から村を見下ろした。小さな村だが、人々が生活している。
「ここも、いずれ魔力の枯渇で苦しむのだろうか」
ルリアが、隣に立った。
「おそらく」
「なら、俺たちが何とかしなければ」
レオンは、決意を新たにした。
翌朝、一行は早めに出発した。グレンの村を後にして、ファルマへ向かう。街道は、徐々に広くなり、整備されている箇所も増えてきた。
「もうすぐです」
リナが、地図を確認しながら言った。
「あと数時間で、ファルマに着きます」
昼過ぎ、ついに地平線の向こうに、大きな街が見えてきた。高い城壁。多くの建物。そして、人々の往来。
「あれが、ファルマか」
レオンは、その光景に圧倒された。リコンストラクト領の何倍もの規模だ。
馬車は、ファルマの門に到着した。門番が、馬車を止めた。
「身分を証明してください」
「商人です」
リナが、商人の証明書を見せた。門番は、それを確認して頷いた。
「入城料は、一人一ゴルドです」
リナが、金を払った。門が開き、馬車はファルマの中へ入った。
街の中は、賑やかだった。商店が立ち並び、人々が行き交っている。子どもたちが走り回り、商人が声を張り上げている。
「すごい……」
ルリアが、感嘆の声を上げた。
「こんなに大きな街、初めて見ました」
「俺もだ」
レオンも、周囲を見回していた。リコンストラクト領も発展しているが、ファルマはその比ではない。
「まず、宿を取りましょう」
リナが提案した。
「それから、冒険者ギルドへ」
「わかった」
馬車は、街の中心部へ向かった。やがて、大きな建物が見えてきた。石造りの建物。その入口には、剣と盾の紋章が掲げられている。
「あれが、冒険者ギルドです」
リナが指差した。レオンは、その建物を見つめた。
「ここから、新しい出会いが始まる」
レオンは、そう感じた。馬車を近くの宿に停めて、三人はギルドの建物へ向かった。扉を開けると、中は広いホールになっていた。多くの冒険者たちが、酒を飲み、話をしている。
受付には、若い女性が立っていた。レオンは、受付へ向かった。
「すみません」
「はい、いらっしゃいませ」
受付の女性が、笑顔で応えた。
「冒険者として、登録したいのですが」
「登録ですね。わかりました。こちらの用紙に記入してください」
女性が、用紙を渡した。レオンは、用紙に名前と、能力を記入した。
名前:レオン・アーデルハイト
能力:再構築
受付の女性が、用紙を見て、眉をひそめた。
「再構築?」
「はい」
「少々お待ちください」
女性が、奥へ引っ込んだ。しばらくして、別の人物が現れた。中年の女性。鋭い目をしている。
「あなたが、レオン・アーデルハイトですか?」
「そうです」
「私は、このギルドのマスター、アイリスです」
アイリスは、レオンを見つめた。
「噂は聞いています。追放された貴族で、辺境に町を作ったと」
レオンは、驚いた。
「噂が、ここまで?」
「ええ。情報は早いものです」
アイリスは、腕を組んだ。
「あなたの能力、実証してもらえますか?」
「実証?」
「ええ。この紙に書いてあることが本当なのか、確かめたいのです」
アイリスは、厳しい表情で言った。
「ちょうど、緊急の依頼があります。それをこなせば、登録を認めましょう」
レオンは、少し考えた。やがて、頷いた。
「わかりました」
「では、こちらへ」
アイリスは、レオンたちを奥の部屋へ案内した。
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