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EP79 二人の歩みの始まり

心理描写が繊細だったので冗長になってしまっている気がします。次からはテンポアップしたいです。

「ねぇ、具体的にどうやって鋼魔を倒すの?……片っ端から倒していくとか?」


 鋼魔を倒すという同じ志を持つ仲間となった俺ことノクスとリヴァリエは、彼女の家に戻ってこれからの方針について話していた。壁が吹き飛んでいるため風こそ入るが、囲炉裏に火をつけそれを挟む形で、話し合う。


「最終的にはそうなる。だが今の俺達だけではさすがに戦力が足りない……そこで、パラレス……俺の創造主が与えたプランでは、まずは俺とその兄弟機たちがリヴァリエみたいな契約者をそれぞれ見つけ、ハンターとして活動し、名を上げる。そのうえで各地域の指導者に働きかけ、俺のようなゴーレムの追加生産に協力してもらう。それが、大まかな方針だ」


「それなんか回りくどくない?あなたの話だと、魔法少女も……その、あなたみたいなゴーレムも、鋼魔に強いんでしょ。なら名を上げる~なんて回りくどいことせずにどっかの王様に、話に行けばいいじゃないの」


リヴァリエはいぶかしげな顔で俺を見る。


「確かにそれが出来れば一番いいのだが、な……俺たちの出自を考えると、そう簡単にはいかないだろう」


「あ……」


 彼女はハッとしたような表情をする。問題に気付いてくれたようだ。


「リヴァリエ、俺の出自を聞いた時、お前は聞いたな……俺が鋼魔のようになることはないのかと……そう聞いた時、怖かったのか?」


「……っ!?それは……その……」


「本当のことを言ってくれ……」


俺は言いよどんだ彼女に続きを促した。聞く必要がないことのはずだったがなぜだか聞いておきたかった。


「少し怖いかもって、思った……でも話を聞いて、あなたが鋼魔みたいにはならないって話もなんとなく分かったから」


 リヴァリエは取り繕うようにフォローの言葉を言ってくれる。確かに俺は彼女の言葉を聞いて、負の感情……冷たい感覚を覚えていた。この気持ちはなんと呼べばいいのだろうか……。


「そうか、私が思ったことを他のみんなが思うかもってことか……分かった。でもそれが上手くいかなくても、私は片っ端から鋼魔を倒すから」


 まただ。彼女の視線に焼けるような情感を感じる。それは怒りというべきものか。

 それを通り越して憎悪というものに達している気がする。彼女の抱いている感情をどうすべきか、具体的な方針は俺の中にはない。ただ言い知れぬ不安感が、胸の中に沸くのを感じた。



 そしてリヴァリエは、その夜のうちに荷物をまとめて夜明けとともに、ククノチを出ることになる。周囲の者には、探さないでくれという置手紙だけを置いて。

 俺はそこまで急ぐ必要はないと進言したが、下手にみんなに伝えたりしても面倒なことになるだけだと押し切られてしまった。確かに周囲の人物に事情を説明しても、理解を得るのは難しいだろう。姿を消せる俺は別にここでしばらく過ごし、諸々の準備期間を設けるのは決して不合理ではないと思える。むしろ、彼女の精神状態を思うと、下手な環境の変化を避け、安静にする期間が必要だと思う。

 それでも、彼女の意志ならば従うほかない。


「さようなら、みんな。さようなら、これまでの私」


旅先で売って路銀にする前提で、持てるだけの金目の物を荷物として抱え、彼女は壊れかけた家に別れを告げた。皆というのはともかくとして、自分自身に別れるとはどういう意味だろうか?


 ※


「良かったのか?」


「何が?」


 俺は荷物の大半を俺に持たせて、町から伸びる街道を進むリヴァリエに質問を投げかける。

 心について分からない俺でも彼女にとって、彼女の家が大切なものであることぐらいさすがに理解した。

 彼女が大切だと叫んだ彼女の家族と暮らしてきた家。それを犯されそうになった衝撃が、家族を葬っておく動機になったのだろう。それらを事実から考えても、また単純に長い時間をそこで過ごしてきたことを考えても、あの家という場所に思い入れがあることは確かだろう。それを捨ててしまうようなことを、彼女にさせてよかったのか不安になった。


「家のことだ。管理を頼むでもなく、こうも早く出発してしまっては放棄したようなものだろう」


「そうだよ。捨てたの」


俺が言葉を言い切る前に、彼女は短く答える。

 彼女は振り返ることはなく、ただその背中に、声に昨夜も感じた怒りがにじみ出ているような気がした。


「私は、これからの私の命全部、鋼魔を倒すために使うつもりだから、邪魔になりそうなものは全部置いていく……家族も、家も、思い出も、つながりも、全部……」


 俺はそれを聞いて何と言ってよいか分からなくなった。鋼魔と戦うために生まれてきた俺は、その存在の全てを掛けて鋼魔と戦うつもりではあった。だがそれは、俺がそういう生まれ方をしたからで、普通の生まれ方をした妖精がそうなってくれるわけではない。そう思っていた。


「それは……」


「何?あなたとしては私が身軽になって戦いに、全てを掛けてくれる方が、都合がいいんじゃないの?」


「…………」


俺が考えていることを見抜いているのか、彼女は今まさに俺の中に浮かんでいる疑問を口にする。


「あの家やその周囲にある物は、お前にとって大切なものだったんじゃないのか?……俺はお前に、協力を頼む立場だ。俺のために、お前の大事なものを斬り捨てるような真似はしなくてもいい」


「あなたのためじゃない!」


前の方から怒声が飛ぶ、治められていた彼女の怒りを掘り返してしまったというのか。

 俺は表皮がひりひりと反応するような錯覚を覚えた。不思議と彼女からの怒りは鋼魔と戦う時よりもずっと俺にプレッシャーを感じさせる。


「大切だったよ!それが全部ぶち壊されたんだから、あとはもうやり返すぐらいしか、どう生きていいか分からないじゃない……だからもう、鋼魔と戦うことに全賭けするしかないのよ……そういうことが分からないから……!」


彼女は振り返らずに言い、そして最後に何かの言葉をぐっと飲みこんだようだ。

 復讐、というやつだろうか。自分に不利益をもたらした相手に攻撃する報復のための行為。メモリーの中に言葉は記憶されている。俺としては鋼魔と戦ってくれる時点で100点のはずなのに、現状のリヴァリエの様子に、危うさや忌避感がある。それがなぜか、分からない。俺に心を持つ機能があるのだとしたら、これが理性とはまた違う心理的反応なのだろうか?だとしたら、心というものは俺にプラスの要素だけをもたらす存在ではなさそうだ。


「ごめんなさい……最後のは忘れて。……それでこれからどこに向かうの?」


彼女は一瞬振り向いて謝罪をしてきた。そしてまた前に向き直って、リヴァリエは訊いてくる。何を言いかけたのだろう?

 気にはなったが俺は魔法少女の従者として造られている。その質問には最優先で答えなければいけない。


「とりあえずの目的は、ハンターギルドでハンターの身分を得ることだ。世界を渡り歩くのに便利だからな……よって、最寄りのギルド支部を目指すことになるな」


「そう、ならエブンの町ね。この先の分かれ道を西に向かえばいいから、このまま進もう」


「そうか、なら……そうするか……水は足りそうか?」


 確かに街道をひたすら進むなら詳細に聞く必要はない、ただ彼女にとって食料に等しい水の貯えを確認しておく必要がある。


「それなら大丈夫。それなりに持ってきたし、道中に水源もあるから。……そういえば、あなたの方はどうなの?」


話は俺のエネルギー元の話に移る。


「ああ、俺は契約した時点で、リヴァリエの魔力の一部をもらってる、その上で俺は魔晶に蓄積された魔力をエネルギーとして吸収できる。魔晶は俺の方で、かなり持っているから、当分は大丈夫だ」


「え、なにそれ?魔晶は普通のゴーレムと一緒だからいいとして、私から元気を吸い取ってるってこと!?」


「心配ない、常に漏れ出ている、余剰魔力をもらっているだけだ。お前の行動に支障はない」


 日々の疲労が増すとでも誤解したのだろう、足を止めたリヴァリエがかなり慌てて確認してくる。契約のおまけで俺の燃費が良くなる程度の話であり、リヴァリエが特に意識する必要のないことだと説明する。


「そっか、そうならいいんだけどさ……」


納得した彼女は気を取り直したのか前進を再開する。

 これが俺の、俺たちの旅立ちか……。

 夜明け前に出発したこともあって、ある程度進んだ今でも、太陽が地平線から上がりきったところだった。

 俺の思考は、彼女の状態、これからの俺の振る舞いについて、そして本懐である使命のこと。いろんな懸念事項が渦巻いて混乱していたので、俺は夜になって野営を始めるまで高速形態での移動のことを失念していた。



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