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EP68 目覚め

今月から毎日投稿を再開します!

書き溜めが思うようにできなくて不安ですが、よろしくお願いします!


 今度の調査で頭を覗かれて全部白日のもとに晒されるわけだが、その前に話しておきたいんだ。正直あまり自慢できるような内容じゃない。だから先に話しておきたいんだ。俺の話を、俺の言葉で。嫌われたくないからさ。

 

 ※

 

 俺のことを話す前に全ての発端、鋼魔の成り立ちについて話しておこう。失伝していて錬金術の事故で偶然生まれたぐらいにしか分からないんだろ?それも間違ってはいない。鋼魔を生んだ業と、俺たちに託された贖いについて知っておいて欲しい。

 当時の妖精界には、大きく6つの地域があった。中央に土、北に水、南に火、東に木、浮遊大陸の空、そして西に金。それぞれのエレメントの特性を受けた地域がある。それぞれの地域にはそれぞれの属性を持った妖精が生きていた。でも金の地に息づく妖精は少し特殊だった。

 そもそも基本的に妖精ってものは金属が苦手だ。多種多様な鉱物に満ちた金の地は、妖精にとって死の土地だった。そんな土地に新しい種族の妖精が生まれた。それが俺たちを造った者の種族”ネジェシス”。

 鉱物から生まれた金属生命体と言えるネジェシスは、他の妖精から迫害される存在になってしまった。でもネジェシス特有の技術である錬金術は他の妖精たちにも有益な技術だった。そんな事情だから、嫌われているのに利用だけはされ続ける。不憫な存在になっていた。

 そんな中、錬金術で有機生命体に干渉して、鉱物生命体との差異をなくそうっていうイカれたことを考える奴がネジェシスの中に現れた。もちろんその他のネジェシスも止めはしたが結局阻止できず、それは生まれた。ただそいつは有機とか無機とか関係なくすべての生物を取り込もうとしてきた。そして金の地は瞬く間に滅び、他の地域に侵攻し始めた。それで、鋼の悪魔、鋼魔と呼ばれるようになった。

 今と同じように有機生命の力を奪う力場を持っていた奴らは、その勢いのままに他の地域も制圧してしあうように思われた。でもそこで秘石を用いた意志力の拡張と魔力の増大が鋼魔への対抗手段になると分かり、侵攻を押しとどめられるようになっていた。

 でもじりじりと鋼魔の侵攻は進んでいった。そこで金の地から逃げたネジェシスの生き残りたちは比較的友好的な妖精と手を組んでより効率的な対抗手段を研究した。そうして生まれたのが魔法少女システムの原型と、勇者と言われるようになるシステムだったというわけだ。

 そろそろ本題に入ろう。俺が目覚めてからの話に。

 

「目覚めろ……3号……私の希望……」


その言葉が俺の最初の記憶。目開けるとそこには、銀髪でローブを着ているやつれた顔をした男がいた。体調が悪いのかと思った。でも、すごく嬉しそうに笑ってた。


「お前は何者だ?」


「当機は、対鋼魔用自立型ゴーレム3号」


それは名前というより名称だ。名前より以前の記号でしかない。少なくとも目の前の男はそう思っていた。


「そうだ、私が誰だかわかるか?」


「あなたは、当機の造物主、錬金術師のパラレス・ノ・コギター様」


それが、俺の父親だって?……そうだな、前園博士がママならあの人はパ……いや待て、俺が勝手に男っぽいなと思っていたが、あの人は男じゃない。というかあの人の種族は性別がない。……ともかく、親であることに変わりはないんだろうな。……話を戻そう。


「いいぞ。ここがどこかは分かるか?」


 その時見まわした俺が生まれたその場所は、薄暗い地下室。様々な資料や薬品が山と積まれた探究者の城。そしてその部屋には大きな水槽に入ったいくつかの人型があった。その時はまだ眠っている、俺の兄弟機たちだ。


「土の地、南西部ルベルぺリアの森、マスター・パラレスの地下研究室」


俺の生まれた土地は妖精界の中央部、土の地というわけだ。故郷と言えるほどあの場にいたわけじゃないがな。


「いいぞ、思考機能は想定通りに働いているようだな。刻み込んだ情報も引き出せている」


俺の答えを聞いたその男は、心底嬉しそうな顔をしていた。それこそ親が子にするような顔……だったんだろうな。


「生まれたてのお前に辛いことを頼む。我らが種の罪、鋼魔を打ち倒してくれ」


パラレスは、俺を水槽から出すと悲痛な顔をして俺に頼んできた。


「仰せの通りにマイ・マスター」


言われるまでもなく俺はそれを遂行するつもりだった。すでにそういう行動方針が俺を動かす魔法術式に刻み込まれていたからな。


「私はマスターなどというほどお前にとって絶対的な存在ではない……そもそもお前は人形でも道具でもない。お前には自分の行動を自分で決める機能がある」


「分かりません。当機はあなたに刻まれたオーダーコード以外に行動方針を持ちません。あなたが新たな命令を下すなら、その限りではありませんが」


俺に指示を出し、意味が分からなかった。俺に鋼魔に対する敵意を埋め込んでおきながら、自分でやることを決めろと言ってくる。


「そう、それだ。お前は自分の中で行動の優先順位を考える能力がある。それは私の命令に限らない。最初の誘導として鋼魔への敵対心を与えたが、お前はこれから見て聞いて構築していく価値観でその敵対心を否定することもできる」


「あなたは、私にどうなって欲しいのですか?」


俺は疑問を素直にぶつけた。鋼魔の殲滅という目的を果たして欲しいのかそうじゃないのか。


「今すぐでなくてもいい。お前には心を持って欲しい。その上で、その心を持って鋼魔を否定して欲しい」


それは振り返って考えると、無責任な命令だと思う。でも、今俺はあの男の願いを否定したくないって思ってる。


「マスター・パラレス。その願いは、どうすれば達成できますか?」


「お前の最初の目的は、魔法システムに適合する少女……若い妖精の娘を探すことだ。そして見つけたその個体と契約し、絆を紡いで、理解を深めろ。お前がその過程を心や視野を広げなげられたら、おのずと分かってくると思う」


「そうですか……理解しきれたとは言いませんが、記憶しておきます」


「それでいい……そうだな、まずは親しみを持ってもらえるように、敬語をやめてみよう。私のこともただパラレスと呼んで欲しい。一人称も、人らしいものに変えてみよう俺でも僕でも私でも何でもいい」


「了解した。俺はあなたをパラレスと呼ぶ」


当時の俺は、パラレスが最初に俺を出したから俺にしようというような軽い理由で『俺』を使う結果になったわけだ。

 それから俺は、自分の担当地が東にある木の地だと告げられ、そこで契約者……今でいう魔法少女を探せと言われた。方法は適正者に微弱な反応を見せるアミナ・ピース……。

 それから、我は旅装束のような服と、燃料を兼ねた資金、細身の曲刀を与えられた。そう、だから俺は刀が使えたんだな。なんでも曲刀は木の地で普及している武器だったらしい。必要な情報はあらかじめ俺の中に入力されている。俺とパラレスはろくに会話を交わすこともなく出発の時が来る。


「よし。本当はお前の情緒が育つようにしばらく一緒に過ごした方がいいのだが、お前の下の兄弟たちを調整する仕事が俺の中に残っている。だから、生まれたてのお前を世界に放り出すことを許してくれ」


「構わない。そのために俺は生まれたのだから」


その時の俺を突き動かしていたのは、鋼魔に対する憎しみでも、人々を守りたいという正義感でもない。ただ与えられた命令を果たすという意志だ。


「ふふ、そう言ってくれて救われると思っている私が悔しいよ……でもありがとう。ネジェシスである私は子を成せないが、だからこそお前たちは息子のように思っている」


あの人はそう言って俺を抱きしめてくれた。当時自我も薄くて感情も持っていなかった俺だが、そのぬくもりを心地よいと感じていたのを覚えている。俺を生んだのはあの人の愛と善意だ。それを誇っていたいと思う。


「我々に連なるお前たちには、苦労を掛けると思う……だが、鋼魔は放置できない。お前たちとその契約者の力が必要だ」


「分かった。最善を尽くす」


俺はパラレスの言葉の意味を理解しないまま答えた。

そして、パラレスは俺が自分というものを持てるように一つ宿題を出した。


「最後にアドバイスだ。お前が、契約者の女の子に出会えたら名前を付けてもらうんだ」


「名前?何の名前だ?」


「お前自身の名前だ」


「俺の名前は対鋼魔用自立……」


「そうじゃない、お前の人格、心につける名前だ」


「……?」


理解できない俺にパラレスは言い聞かせてくれた。


「今の私にはお前の心を育ててやる余裕がない。心苦しいがそれはお前の運命の少女に任せることにする。頭の固い私にはセンスがないしな。はは……」


心を育てる。その言葉を俺は、現地での行動ルーチンの最適化のことか、ぐらいに考えていた。今思えば相当な綱渡りだ。顔も名前も知らない奴に、お守り役を任せるなんてな。魔法少女の力の源は他者への思いやり、それは魔法少女の適正でもある。だから魔法少女に選ばれた人間なら、手本にできるような心を持っているというふうに踏んでいたんだろ。


「……?とりあえず、タスクとして記憶した」


「ふっ、今はそれでいい……」


俺はその意義を理解しないままだったが、外向きのすべきことはちゃんと覚えた。


「3号、気を付けてな……必ず帰ってこい」


「了解した」


そうして、生まれたての俺は外の世界に踏み出した。


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