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EP65 嵐去って

メメルク、新しい方のキャラですがお気に入りですね。次出てくるのはだいぶ先でしょうが。


Side:碧乃


ただでさえ、痛かった傷に冷たい感覚が走り、燃えるように熱くなる。


「お、おい!何してる!?」


ノクスの叫び声が遠くに、聞こえる。あれ、私ここで死ぬのかな?あまりに唐突な出来事に現実感がなかった。


「騒ぐ必要はありません。これは治療です」


「はあ!?お前のそれも猛毒だろ!?早く抜け!碧乃が死ぬぞ!」


後ろからフォルテが後ろから飛んできて、心配してくれる。鳳条さんってぶっきらぼうだけどこういう時優しいよなぁ~。私は呑気にもそんなことを考えていた。


「言われなくても抜きますわ。一つ覚えておいてください。毒と薬は表裏一体だということを」


イケートはそんな意味の分からないことを言いながら、レイピアをまっすぐ引き抜く。震えなくするっと引き抜くのすごいなぁ~。

 あれ、私さすがに落ち着きすぎじゃないか?ひょっとしてもう死んでるから、痛みがないのか?


「碧乃さん、痛みはありませんか?」


「うん、ないよ…………え?」


「え?」


私は自分の放った言葉に疑問を持つ。その疑問符がノクスとシンクロした。

痛みがなかった。動かしてみても、少し疼く程度だ。一体どうなっているのか。私はノクスに目配せし、せっかくの彼の手当てで少しもったいないと感じたが、外してみる。


「傷が塞がってる……これ、イケートの魔法?」


傷が治った理由がそれしか思いつかないため私はイケートに聞いてみる。


「いかにも!固有魔法の研究をしてるうちに分かったのですわ。私の毒には味方と意識する相手を癒す力があると!」


彼女はエッヘンという効果音が聞こえてきそうな感じで胸を張った。私より胸合っていいなぁ……。


「おい、ホントに治ってるのか?それ……」


信じられないとでもいうように、フォルテが顔をずいと前に出してこちらを覗き込む。


「見た目は治ってるし動かしても痛みはないけど……」


「中身が完全に治っているとは言えませんし、失った血まで戻せたわけではありません。あとでちゃんとお医者様に診せてくださいね」


イケートは私の状態を説明してくれる。痛みはないし外側が治っているなら悪化もし辛い。完全に治っていなくても万々歳だ。


「なんだよ先に言えよ!心臓止まるかと思ったじゃねーか!」


「あら、それはごめんなさい。使えるようになったのが最近で伝える機会がありませんでしたわ。それに一刻も早く治した方が、予後もいいでしょう?」


イケートはフォルテの抗議を軽くいなす。


「す、すごすぎでしょ……ありがとう、蕨野さん!」


毒での攻めだけでもすごいのに、回復という守りの役割までこなせるなんて、いよいよ本当にチートではないかと思った。


「礼には及びませんわ。仲間の治療をするのは当然のことですもの。ですが、そうですね。イナゴの折の恩もありますし、あなたの役に立てたのなら上々です」


イケートはすました顔で答えた。契約未遂の時は意地悪な人だと恨んだものだが、やはり彼女も魔法少女に選ばれた人なのだ。その心の根本には、優しさがあるのだろう。まぁ、だからと言ってあの時のこと全部を水に流せるわけではないが。


「これを動かした碧乃さんとノクスも、毒で戦った蕨野さんとレオ君も、他のみんなも今日はとってもすごかった!みんなそれぞれの場所に別れて戦って、役割を果たして……ここに集まって、鋼魔人を撃退できた!これって最高の結果だよ!」


隊長がみんなを労う言葉を言ってくれる。


「そうですね。勝てたんですから、自信にしてもいいんでしょうね」


「なーにキザなこと言ってるんだよ!そこは素直に喜んどけよ……」


浮いているアーシュケリアが、クールに言ったところに、フォルテが突っ込みを入れる。


「ふふふ……」


私は、自然に笑いがこぼれる。周りのみんなも嬉しそうだった。ただ、ノクスの顔だけが沈んでいた。


「さぁ、もうすぐこのデカいのの回収の輸送機が来る。それに乗って帰ろう!メメルクたちはどうする?いったん日本支部に寄る?歓迎するし、帰りは足を用意するよ」


隊長はこの場のまとめに入る。


「せっかくのお誘いだけど、国を長く空けるのは不安だからここで別れさせてもらうわ。足手配も結構。私カムドランと海を行くのが好きなの」


メメルクさんはいつの間にか巡航形態になっていたカムドランに跨りながら答えた。


「あ、そう?遠慮してないならそれでいいけど……本当にありがとうね!そっちがピンチの時は、いつでもよんでくれていいからー!」


既に出発の準備をしている二人を隊長は手を振って見送る。心なしか彼女のテンションが高い気がする。メメルクさんが仲のいい友達だからだろうか?そういう相手が先輩にいることがなぜか嬉しく感じる。お前何様だよという話だけど。色々抱えこんでいそうな隊長に気の置けない友達がいるのはとてもいいことだと思う。隊長に対して後輩である私はどうあがいてもそうはなれないので羨ましいとも思ってしまう。


「ええ!そうさせてもらうわ!……それではみなさん、Sampai jumpa lagi(また会いましょう)!」


“ゴゴーッ!!”


最後におそらく母国語のあいさつを残して、ちょうど上がってきた朝日の方向に去っていく。彼女はマリンバイクの要領で、しぶきを上げながら遥か彼方へぶっ飛んでいった。速いとは聞いていたが、とんでもないな……。


「急に現れて急に去っていく……嵐みたいな子でしょ?そこが良いんだけど」


振り返った隊長は満面の笑みだった。


「はい……頼もしいです」


悪いことを全部吹き飛ばすようなパワフルさがある。素敵な先輩の一人だ。


「勝利の朝日ですね」


上で浮いているデヴァリオンが言った。確かに私たちを祝福しているみたいだ。でも私は、まだ心を晴れさせるわけにはいかない。


「…………」


私の勇者が暗い顔をしている。パートナーである私が一緒に向き合ってあげないといけない。


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