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EP58 躍動する刃


Side:碧乃


24:00 マーシー、ノクストス東京に現着


「遅れてごめんなさい。みんな大丈夫?」


私たちが戦闘の行われている現場に来てみると特に魔力反応の大きな個体が暴れているように見えたので、とりあえずタックルで吹き飛ばした。着地後、私は攻撃を受けていた日本支部の建物を確認した後、近くにいたフォルテたちにスピーカーを使って声を掛ける。


「ああ、なんとかな……つーか、遅いどころか早くねーか?」


「うん、みんなが心配で文字通り飛んできちゃった。支部のみんなは?」


プラネスフィアの面々は、レーダーに魔力反応がある。それだけでなく、メメルク・カーリナまで駆けつけてくれているようだ。問題は通信できなくなった支部の職員の人たちだ。


「とりあえずみんな無事だ。今は予備施設に移動してる。もうすぐ管制が復旧するはずだよ」


少し離れた位置にいたフルーデが教えてくれる。そっか良かった……と安心できた私は今しがた吹き飛ばした甲冑騎士っぽい巨人に意識を向ける。


「ドレッドラ!奴を消し飛ばせ!」


相手は体勢を立て直しながら、隊長が相手をしているドレッドラに命令する。


「ギャァアアッス!」


“ドドドドドドッ!”


全身に傷があるドレッドラが叫び声と共に体をこちらに向け、大量のミサイルをこちらに発射する。


「ノクストス、建物を巻き込むわけにはいかない……」


『ああ、空中で迎撃しよう!』


私達はドレッドラの方に接近する方向にあたりのビルより高い位置にまでジャンプをし、空中方向にミサイルを誘導する。


「任せる!」


『任された!』


そう声を掛け合って私は魔力探知でミサイルの一つ一つを正確に捉えることに意識を向ける。良い着物からの攻撃である。鋼魔の攻撃には、魔動兵器と同様に魔力が込められている。それを捉えるの私の役割、そして……。


『一つも外さないぜ!』


それをもとにミサイルを打ち落とすのが、ノクストスの役割だ。私からコントロールの主導権を渡された彼は、アーシュケリアのそれの巨大版である二丁拳銃を太腿から引き抜いて乱射する。


“ドドドドドドッ!”


器用で正確な動きが得意なノクストスは、乱射をしているように見えてミサイルの一つ一つを撃ち抜いていく。爆風がこちらに届く距離に入る前にそのすべてを打ち落としてしまった。私がレーダーになって補助したとはいえ、凄まじい技量だ。私にはできそうにない。


「隊長、メメルクさんたち!退避してください!ミサイルをお返しします!」


私たちは力を出し惜しみして、戦いを長引かせることはないと考え攻勢をかける。ヘイロー・システムでそのまま飛んで接近し、全身に搭載されたミサイルをすべて発射する。


“ゴゴゴゴッ!……ドドドドドドッ!”


ドレッドラの全身を包むように着弾した。ミサイルは地面と空気を震わせる。


「馬鹿め!背中ががら空きだ!」


ドレッドラの状態を私達が確認する前に後ろから、甲冑姿の敵が手持ちの武器で襲い掛かってくる。魔力の感じから言ってアレの内部にはあの黒い少女がいるようだ。こちらと同様に搭乗型のロボットようなモノだろうか?


“ガキンッ!”


「……!?」


相手の獲物に何かが当たる感触が伝わったはずだ。でもそれは、ハリボテだ。


『先にドレッドラにとどめを刺すぞ!』


「うん!」


ミサイルを打ち尽くして、デッドウェイトになった追加装甲を囮として脱ぎ捨てた私たちは、身軽になったことを利用して、一気にドレッドラとの距離を詰める。


『気合い入れていくぞ!』


「押忍っ!」


彼の声掛けに私は意識して勇ましく応えてみせる。


“シャキンッ!!”


拳銃をマウントしてその流れで巨人サイズの裂光・斬影を抜いて、ビルとビルの間にいるドレッドラの周りに立ち上る煙の中に飛び込んでいく。視覚が効かなくても、魔力探知や熱探知で相手の姿は正確に捉えられる。


『はーっ!』


「はーっ!」


ノクス主体で乱れ斬りを食らわせる。ここ一か月の訓練で、シンクロ率100%とはいかなくてもかなり調子を合わせることが出来るようになった。

 私たちはドレッドラの後方へ駆け抜けるその刹那に無数の裂傷を与える。もちろん、その刀身には大量の魔力が流れている。外側も内部もかなりのダメージが与えられているはずだ。


「ギャァアアア!!!」


ドレッドラは体中の傷口から体液を噴き出して絶叫する。前にした居合斬りとは比較にならない威力だ。


『これで……』


「終わりだ!」


私達はすぐさま納刀し、代わりにステッキを出現させて突き付ける。そこからは前回と同じだった。魔力の刃でその先端を敵の体内に食い込ませた私は、あらん限りの力で魔力弾を炸裂させる。


“ドゴーンッ!”


全身の切れ込みでボロボロだったドレッドラの身体は爆発四散する。その反応の中に、私はコアがあるのを見た。


「隊長!」


「分かった!ゼロ化はまかせて!」


コクピットの中に拡大表示した隊長はうなずいてくれていた。


「舐めるなー!」


 背後から地響きと一緒に大きな足音が聞こえてくる。奴が迫ってきているのだ。


“キィーンッ!!”


 奴は得物の先に魔力を蓄積させて、飛ぶ斬撃をこちらに放っていた。


『くっ!』


「うわっ!」


私達は寸でのところで飛び上がってそれを回避する。地面を這うように放たれたその攻撃はアスファルト道路に長い亀裂を刻んでいた。当たったらさすがにダメージは避けられないだろう。ドレッドラの方のようにさっさと倒してしまう必要がありそうだ。


「ちっ……!こうなれば貴様らだけでも!」


 焦った声を出した相手は、全身に高密度の魔力を纏いだした。

 何をする気だ?飛び掛かって動きを止めるべきか?そう私が迷っていると、


「みんな衝撃に備えて、パルス攻撃が来る!」


その時、デヴァリオンと通信の両方から、フルーデの警告が聞こえる。


『くっ!』


“キューン!”


甲高い震動音と共に、紫色のエネルギー波が奴を中心にして、ドーム状に広がっていく。


「くわぁ!」


「きゃー!!」


周りから、仲間たちがドームに弾かれる音が聞こえる。私たちは刀を地面に突き立ててその衝撃に耐えようとした。


「……?」


しかし、紫色の膜が体を通り抜けても、私たちには何の影響もなかった。


『マ……?だ…じ……』


半径数百mに広がった魔力の膜、おそらく結界だろうか?それは通信まで遮断するようで外部に弾かれた隊長の言葉が聞こえなくなっている。


「貴様だけは……ここで排除する……!」


立ち上がった奴は得物をこちらに向けて、構える。私たちのいない間に、足場を崩すつもりが、当てが外れて私だけを狙うことにしたといったところか……。そしてこの結界はそのためのリングと言ったところか。


「相手は決闘をお望みみたいだよ……」


こちらの最大戦力は私たち、連携もしづらいとなれば外の仲間が結界を突破するまで付き合ってやるのがいいだろう。


「ノクストス……できれば……?ノクストス?」


出来れば、刀の方で戦おう。そう提案しかけて彼の心が揺れていると気づく。どうしたのだろうか?


『敵の鎧に見覚えがある……』


そう伝えてくる彼の心は確かに心細さを感じていた。





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