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EP55 意外な救い主

まだ体調が悪く。投稿頻度は少なめです。


Side:アーシュ


“ガガガガガッ!” 


 甲高い金属同士の衝突音が連続して地下フロアに鳴り響く。機関銃が火を吹いているかのようなその音は、俺とフォルテの絶え間ない連続攻撃の音だ。俺は左右の太腿のウェポンラックに収納された二丁の拳銃を構えて乱射する。掌のコネクタから魔力を供給してリロードなしで撃ち続けられるという代物だ。

 それを俺はフォルテの背後からお構いなしに撃ち続ける。もちろん彼女に当たることはない。端から見ると無作為に撃ちまくっているようにしか見えないが、その実は彼女のインファイトの身体の動きでできた射界に合わせて、撃っている。それで彼女の打撃の合間を縫うように敵に魔力の弾丸が当たる形になる。

 魔法少女と勇者のリンクあっての攻撃だが、それでも他のペアにはできない芸当だろう。人間の限界を超えた域にある反射神経のなせる技だ。

俺も彼女も地下施設で大火力は使えない。ならばと手数で攻めるつもりだ。だが、敵は連撃に合わせて被膜を変形させて、弾丸と拳の両方を防いでいる。


「なんだ……非力過ぎやしないか?拍子抜けだなぁ……あのデカいのを殴り飛ばしたのはたしかお前だろう?」


反撃と言わんばかりに煽り返してくる。まずい、絶対乗る。ママのことで焦っていたCPUが一気に冷え、別の恐怖がメモリを満たす。


「……っ!?お前……言いやがったな。後悔させてやる!」


フォルテがそう言うと俺の中にイメージが浮かぶ。アレをやるのか……状況的に間違いではないがめんどくさい手だ。まぁ、理屈をねじ伏せる力があると思わせてくれるのがこの女だ。ロボットの俺にさえ……。


“スッ……”


“チャキ……”


 フォルテは腰を捻り腰で拳と魔力を溜める。俺は両手の拳銃から手を放し、ライフルを構える。そして床に銃が落ちる音と共にトリガーを引く。


“バンッ!”


通路に響く炸裂音が、発砲音か“その弾丸を殴る音”か相手には分からないだろう。俺の使うライフルは人が扱えないレベルの大口径だ。音速をはるかに超える速度で放たれた弾をフォルテはさらに押し出して着弾させる。


“ガドンッ!!”


弾丸を楔のように被膜に速度まかせでぶち込んで砲弾のような拳を防御の向こうに到達させる。


“ゴゴーーーッ!!”


衝撃波によって被膜の向こうに衝撃が走り通路の壁に亀裂が入る。


「ほう……」


被膜に空いた穴から見える黒い少女の胸に拳大の穴が開いていた。防御を抜くつもりではあったが、ダメージも与えられるとは思っていなかった。弾丸は向こうの壁まで飛んでいったのだろうが、フォルテのパワーに耐えられず弾丸としての形状を保てていないはずだ。そんな状態の威力はたかが知れていると思っていたが……。


“スーッ”


敵は断末魔を上げるでも、こちらへの怨嗟の言葉を吐くでもなく虚ろな表情で全身を塵に変えて消えていく。

防御の向こうに走る圧力は、人間なら確かに消し飛ぶほどの威力だろうがこれは想定外だ。意外に敵はもろかったのだろうか?


「やったのか……?」


「いや、これは囮だ!手ごたえがなさすぎる……ママ博士がヤバい!」


 ※


Side:前園


 私は施設内にあるラボでとりあえずで、他の研究員や駆けつけてくれた数人の警備員の人と一緒に脱出のための隙を伺っていた。部屋にあるもので、出入り口にバリケードを作って私自身も拳銃を構え敵襲に備える。正直碌に扱える自信はないが、私よりずっと年下の女の子が最前線で踏ん張っている手前、私も自分の身ぐらい守れる大人でありたい……。


『前園博士!敵の狙いはおそらくあんただ!人を回すからそれまで持ちこたえてくれ!』


「うひぃ……!?……私!?」


手汗をかきながら神経を張り詰めさせていたところに、唐突に館内放送が流れた上に名を呼ばれて私は素っ頓狂な声を上げてしまう。


「前園博士……!我々の後ろに……!」


冷静な警備員の人たちは装備のアサルトライフルを構えながら私を囲むようにしてくれる。


「魔力探知とか出っ探せないの!?」


『それでフォルテのペアがデコイをつかまされた……』


私が手元の個人端末で、管制室に聞く。自分のいる施設が襲われているのと自分自身がピンポイントで狙われているのとでは恐怖と緊張の次元が違う。


「……ふーっ!ふーっ!」


私は鼓動が早くなり頭がきゅっと熱くなるのを感じる。くらくらしてきてひざが笑い始める。気を抜けばすぐに床に崩れ落ちてしまいそうだ。情けない話だ、普段我が子たちに勇気を持つように説いているというのに、母がこのようでは顔向けできない。

私は息を吐いて、何とか気持ちを整えて素人なりに周囲を警戒する。

 最も警戒すべきなのは出入口なのだろうが、魔力センサーを騙せる高度さで敵が姿を隠しているならどんな出てき方をするか見当もつかない。


「…………」


周りの警備の人たちの重苦しい殺気にあてられて、私の緊張も際限なく高まっていく。そしてそれが頂点に達した時、それは現れた。


“カシュ……”


こじ開けられるでも、壊されるでもなく仕様通りに落ち着いた機械音を立てて自動で開かれる。


「……!」


警備員の人たちが私を囲む陣形から、ドアと私の間で壁になるように陣形を迅速に切り替える。


「……!?まずい!」


ドアの向こうに現れた人影はそんな声を上げて、何かをこちらへ投げてくる。


“バチバチバチッ!”


「キャーーー!」


そのなにかは私の背後に落ち、スパーク音を上げた。私は振り向く余裕もなく。両耳をふさいで叫んでしまう正直生きた心地がしなかった。


「撃て―っ!」


警備員の人たちが、ドアの方に向かってアサルトライフルを連射する。


“ガガガガガッ!”


「あー!待って待って!俺です!神名です!」


発砲音と弾が着弾する音に交じってかすかに声が聞こえてくる。


「何っ?撃ち方止め!」


警備員の人たちは、いったん射撃を止め警戒は解かずにドアの方を注視する。


「撃たないでください……」


着弾で起こった煙の向こうから、両手を上げた。白衣とメガネを身につけた神名君が現われる。一瞬安心しかけたが、敵は知性のある相手だ。魔法か形態変化で化けている可能性もある。


「お前ほんとに神名技師か?」


警備員さんの一人がドスのきいた声で問いただす。


「そうだ、とはいっても……分かりやすく証明する手段はない。後ろの穴とこれからのことの推移で理解してもらえると助かる」


神名君らしき人影は、いかにも彼らしい胡乱な言い方で、そう伝えてくる。どういう意味だろうか?まずは後ろの穴とは何か?そういえば、最初のスパークは何だったのだろう、私がすでに魂だけになっているとか出なければ攻撃で痛みを感じていそうなところだが。

私はそう考え、ビビりながらも振り返ってみる。


「おわっ!あっぶ!?」


またも変な叫び声を上げてしまった。組織ではクールなシゴデキ女として通ってるはずなのでそれが崩れてしまうのが少し怖くなった。彼の言う通りそこには床から下の階が見えるまでぶち抜かれた大穴があり、私はその淵に立っていた。もう一歩後ろに下がったらヤバかった。


「な、ナニコレ!?」


「敵のいた跡だ。建物自体と一体化して身をひそめながら移動してたんだろうな。後ろからあんたを殺そうとしてたから間に合ってよかった」


「す、すぐ後ろにいたの!?なら敵は今どこ?」


穴が開いたのは彼の攻撃なのだろうか?だとしたらその敵はどこにいるのか?ひょっとして消滅させたとでも言うのだろうか?そんなことはないと思ったが期待を込めて聞いてみる。


「地上のフルーデの前だ。今使ったのは転送魔法……敵は床もろとも、俺が転移させた。今彼女とデヴァリオンが用意していた術式で拘束していると思う」


「ほ、ホントに?」


 さすがにギリギリで焦ったといいながら、彼は指で上を指す。この一瞬でそんな高度な芸当をやってのけたというのか?もともと転移魔法でいったん施設から出してその隙に避難しようという作戦が通知されていた。しかし、門外漢なので詳しいことは知らないが転移魔法はかなり高度な魔法で、複数人で魔法陣を準備してそこに敵をアーシュケリアたちに押し込んでもらうという話だったはずだ。それをこの男は土壇場でやって見せたというのか……?


『敵性存在の地上への排除を確認!現在はフルーデが地上で拘束中、今のうちに地下通路から予備施設に移動する!総員移動準備!』


私があっけにとられているタイミングで、館内放送が流れる。それを聞くと彼の言うことが真実であると分かる。


「ホントに神名くんなのね?その……疑ってごめんなさい。あと、ありがとう」


「礼には及ばない。あんたはこの施設にあるものの中で一番代えのきかない存在だ。失うわけにはいかない」


「神名君……」


一瞬異性に言われてドキッとする言葉を掛けられたような感覚になるが、違うと思い直す。何なのだこの男は。勇者や魔法少女についての話を聞くに冷徹そうな見た目の割に情がある人間なのだろうが、それがズレているようにも思える。つかみどころない男だ。


「もうすぐ、管制室からの援軍が来る。我々も移動しよう」


彼がその援軍ではなかったのか?そんな疑問が浮かんだがそれを聞くのは、移動しながらにしよう。ここにいては魔法少女と私の子供たちの邪魔になってしまう。


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