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EP53 光の槍

少女ゆえの弱さと強さを表現できればと思います


 時刻はメメルクの参戦の少し前にさかのぼる。


Side:篠宮 23:30


 施設から出てきてくれた部隊の射撃で、鋼魔兵の侵攻が止められている。


「デヴァリオン、用意したEパーツを使おう」


「フリーデ、やる気なんね。分かった、ここで決めに行こう!」


鋼魔兵を抑える必要がなくなったため、こちらから撃って出る選択肢が出てくる。私の提案を呑んだデヴァリオンは人型に戻って、演算ユニットを外す。そして屋上に持ち込んでいた別のオプションパーツ、Eパーツを装着する。


「じゃあ、行くよ!乗って」


このパーツは巡航形態で運用する。Eパーツは攻撃力を強化するブレード・ユニットと機動力を強化する魔力を利用する新規格の推進システムを積んだブースターユニットで構成されている。これを付けたデヴァリオンとそれに乗る私は一撃決戦型の突撃戦士に様変わりする。つい先日完成した新型パーツだ。

 私は、デヴァリオンに乗った後、使い魔を宿らせて放出されたブレード・ユニットを周囲に浮遊させる。このパーツは瞬間火力に特化していて、魔力の消費もパーツ自体の消耗も激しい長くは持たない。勝負は一瞬。一瞬の風になるつもりで、覚悟を決める。


「10カウントで決めよう!」


「了解!」


6つあるブレード・ユニットの内の2つを双剣のように私が掴んだら、すべての準備は完了だ。


「ブレード・オン、デヴァリオン、ゴー!」


私の号令から寸分の狂いもなく、ブレード・ユニットからレーザーの刀身が伸び、デヴァリオンはブースターを吹かしてビルドーガにまっすぐ突撃する。


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最初の接敵、右のクレーンの下をくぐって自分に追従させたブレード・ユニットと手もちの剣で上下から切り裂く。このレーザーブレードは、1本だけでもアルニギアスの大剣に魔力を纏わせたときの切断力に匹敵する破壊力を持つが、代わりにそれこそ10秒程度しか持たないという代物だ。


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ビルドーガの後ろに抜けた私たちは、反転し4本のうちの2本で敵の両膝裏を刺して固定する。


「ギグァァァ!」


両足からくる鋭い痛みに悶えるビルドーガは怒りのままに目からのレーザーを発射する。私たちは結界内から援護射撃をしてくれる。兵士たちに当たらないように誘導しながら、機動力にものを言わせて、光線を紙一重で避けていく。


6 5


さすがに施設側の仲間に当たることが考えられるので前方に回って、前から首を斬りつけて首を後ろに折り曲げてやる。レーザーは相変わらず出され続けていて、眼球の動きでこちらを追尾してくるが、私達を狙う分には躱せるので気にしない。


5 3


闘いの終わりが近づいてくる。鞭のように振り回されるクレーンのワイヤーの動きを予測しながら躱していく。そして右腕の時と同じように、左のクレーンの付け根をレーザーブレードで切り裂いていく。



最後の一撃の準備をする。敵の正面方向に飛んでいき、加速のための距離を開ける。支部のビルも通り抜けて、最大速に達するために十分な距離が開いた時、反転する。



残った2本のブレード・ユニットを突撃する巡航形態のデヴァリオンの先端にハの字型に装着し、さらに本体からも巨大なレーザー……いわばレーザー・ランスを展開し、私とデヴァリオンが巨大な槍になる形でビルドーガに突貫する必殺技。名づけてブレイザー・ダイバー。


 0


決着、ビルの胴体には大穴が空き、そのコアはレーザー・ランスの先端についている。


“バシュッ!”


「稼働限界!パージするよ!」


「おわーっ!」


負荷限界に達した、Eパーツをデヴァリオンがパージする。私は思いがけず空中に放り出されてしまう。びっくりしたが、人型に戻った彼がすぐにお姫様抱っこで受け止めてくれる。そしてそのままデヴァリオンは残った鋼魔兵を挟んで反対側に着地する。


「ごめんビックリさせて……大丈夫?」


着地した時彼は私を心配してくれる。


「も、ものすごくスリリングなジェットコースターだった。二度は無理かな」


Gとかすれ違いざまの斬撃のために集中力が要っただとか、かなり私自身にも負荷のかかる戦闘だった。間違っても軽はずみに使うべきものではない。それは彼にとっても同じなようだった。


「こんなに基礎フレームの方に負荷がかかったのは初めてだよ。エネルギーもかなり減ってる。濫用はできないね」


しかし、仕事は残っている。私はデヴァリオンに負担を掛けないためにあとは素の状態で、教官たちを手伝って残った敵をせん滅すると提案しようとする。

 

“バギーンッ!!”


大きな音が、何かが割れるような音がする。


「え……?」


その時になって気づいた。私たちはビルを離れてしまうという決定的な悪手を打ってしまったのだと。鋼魔が魔法少女のいない閉所を襲う場合の被害を想像して背筋が震える。


“ズドーンッ!”


「なんだ!?」


震動に反応して、教官の率いていた部隊の人たちからもざわめきが上がる。音のした方に目を向けると。


「爆発?」


支部のビルの一角から黒煙が上がっていた。


“ビービーッ!”


施設全体に聞こえる警報音が鳴る。


『警告!警告!施設内に鋼魔反応!フィールド反応は一般的な鋼魔獣よりもかなり大きく、脅威度はかなり高いと推測されます』


緊迫感に満ちた声のアナウンスが聞こえる。私のミスだ。施設防衛を担うなら前に出るべきではなかった。


「フルーデ屋上に行こう!さすがにパーツないと僕は戦力にならないし」


焦りと罪悪感で頭が真っ白になりそうだったとき、デヴァリオンは冷静に次の行動を示してくれる。私だけだったらパニックになって何も考えずに突っ込んでしまいそうだ。

しかしどうする?屋上に置いてきた汎用Aパーツを付けなおしたとしても、私とデヴァリオンは閉所でしかも、強力な一体の戦いには向いていないと思う。相手が私の推測通り鋼魔獣の上位種の鋼魔人だとしたら、私は戦えるだろうか?


「どうしたの?フルーデ、大丈夫?」


Eパーツで大物をぶっ飛ばした時の高揚からくる全能感からの、このミスの落差がメンタルに致命的なダメージを与えていたらしい。

 自信というものが急にどこかへ行ってしまい、代わりに敵への恐怖が胸を満たす。私はもともとあまり敵と面と向かって戦うイメージが持てないタイプなのだ。知能の高い相手と戦って無事で済むビジョンが浮かばない。相手がどんなものか分かりもしないのに、悪い想像だけが膨らんでいく。


「フルーデ、辛いかもしれないけど今は僕たちが動くしかないんだ」


考えれば考えるほど、足が重くなっていく。リンクを通して私の精神状態を察してくれたデヴァリオンが、私を励ましてくれる。死ぬほど温度が下がった胸の中に彼の勇気の熱が伝わってくる。私はこの熱に応えられるだろうか?

 その時、ヘリのローター音と共に天の助けと言える声が、遠くの方から聞こえた。


「俺たちが先行する!タイイチなら得意分野だぜ!」


「お前らは向いてるパーツを付けてから来い」


 声の主は、今しがた帰還した鳳条真央とアーシュケリアの声だ。彼女たちは輸送機からそのまま飛び降りて、変身しながら相手が施設に開けたであろう穴に突入していった。

 すごいと思う。彼女と私違って常に攻撃が飛んでくるリスクの中で、先陣を切っていくのだ。さっきは勢いに任せて突っ込むことが出来た。でもそれは状況が有利に傾いていたからだ。ピンチの時にこそ勇気を保てるのがヒーローというものだろう。私はそんな自分を想像できなかった。

 情けないことに彼女たちが矢面に立ってもらえて安心している。私はここにいていい人間なののだろうか?


感想と評価をよろしくお願いいたします。

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