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EP51 風が吹くまで 中編

EP02に反有機生命圏に関する記述を追加しております。反有機生命圏は対策のない機械類を狂わせるという設定です。明示していなかったので修正しました。稚拙な作者で申し訳ないです。


Side:星原 23:00


 私とアルニギアスは夜のビル街で戦っている。

 このひりつく感じは久しぶりだと思った。まだこの国に私たちしか戦力がなかったころ。私たちは今にも破れそうな膜の上にいる気分で戦っている。


「そっちは大丈夫か!?シンセリー!?」


背後から、アルニギアスの声が聞こえる。私たちは、2体いる鋼魔獣に対して二手に分かれて対応していた。周りはすでに火の海だ。プラネスフィアがそろっているならともかく、戦力が分散させられると、あいつらの火力を抑えることが出来ない。


「ギリギリな感じだけど、まだ大丈夫!」


私は自分に言い聞かせるように叫んだ。既に近くのシェルターは危険であると放棄され、私達はその中にいた人たちが別のシェルターに逃げるまでの時間稼ぎをしている。もっとも現状では、離れたシェルターからも逃げる必要が出てくるかも知れない。


「ギャーァッス!」


私が今対峙しているメリュドラが咆哮を上げる。以前の個体よりも大分デカい。最大火力をぶつけたとしても倒せる自信はない。今は、力を節約しながら時間稼ぎを続けなければ……マーシーが来てくれるまで。


“ビューンッ!”


「んぐっ……!」


5本あるうちの3本の首がビームを乱射する。私は後ろ跳びで後退しながら、弓を引き牽制弾を当てる。

幸いというべきかそうでないのか、敵は2体とも吸収した人間の消化を終えているため、手加減の必要がない。もちろんメリュドラの方は未知の領域となる強化がされていることになるが……。


「でぇーい!」


“バヒューン!!”


 ドレッドラと向かい合うアルニギアスは、最近は使う機会がなかった火力強化用の多連装魔力砲を両肩から放つ。肩から伸びる砲塔から放たれた合計6本の光線が、敵の胴体から頭部にかけてに命中する。

 表皮を吹き飛ばし、中の肉を露出させる程度のダメージを与えることには成功するが、致命傷には程遠く、すぐに再生されてしまうだろう。


『シンセリー、アルニギアス、援軍だ!!陸自の戦車隊が来てくれる!今戦闘区域への突入ルートをアルニギアスに送信するから、間違っても彼らを遮断フィールドから出さないようにしてくれ!』


「そんな、危険です!」


インカムから陣屋さんが情報をくれる。援軍は嬉しいが、心配の方が勝ってしまい、反射的に救援を断る言葉を言ってしまう。そもそも鋼魔獣には通常兵器が効きづらいはずだ。


『そうも言ってられん。君たちだけに命を張ってもらうようではこの国はそもそも終わる。大丈夫、試験的にだが導入された対鋼魔用の魔力を使用する砲弾と魔力を使える人員がそれぞれの戦車に乗せられている。君たちは攻撃がしやすいところに2体を誘導して、その時が来たら戦車隊を攻撃から守ってくれ。オフェンスは自衛隊でやる』


魔力を帯びない攻撃をほぼ無条件で吸収してしまうのが鋼魔だ。それに対して有効な魔力を使用する魔動兵器の使用には、希少な魔法使いの素養を持った人間が必要だ。その両方を備えた部隊が来てくれるのか、どうせ今の状態ではジリ貧だ。あてにさせてもらうしかないか。


「アルニギアス!誘導する場所ってわかる?」


「うん、もう一つ東の大通りがいい感じだ」


その叫び声と共に具体的なイメージが、リンクを通して伝わってくる。


「よし、圧し込むよ!」


「了解!」


私達は、それぞれ担当している鋼魔に対して西に立つように移動する。

そして、あらん限りの火力をぶつける。私は、威力を倍加した魔力弾をメリュドラに連射して、アルニギアスは肩の魔力砲を撃つのと一緒に大剣に魔力を込めて斬りつけてみせる。それだけでは少し火力が足りないかと思ったが……。


“ヴィン?ヴィン?”


遠方から飛んできたレーザー攻撃が最後の一押しになる。フルーデの援護攻撃だ。昔のように孤独に戦っていると感じていたが、やっぱり私たちは一人ではないのだと再認識できた。


「グゥ……!」


「ゴギャアアア!」


比較的小さいメリュドラが、後方へ吹き飛んでドレッドラも目的の大通りまで後ずさる。


「もうすぐ、戦車隊が配置につく。アルニギアス、スモーク撃って!!」


「了解!」


私の指示でアルニギアスは、太腿あたりから、斜め上にスモーク弾を発射する。


「ギシャーッス!!」


「ガォオオン!!」


催涙ガスを含んだスモークを浴びて、苦悶の声を上げる。その隙に私たちは、数百メートル先の高架上で戦車隊に合流する。

編成は指揮車と思われる装甲車を先頭にして、砲塔に特殊なユニットのついている戦車が3台続いている。あれが魔動装備だと推測できる。


『あなた方が魔法少女シンセリー・テルスと勇者ロイド、アルニギアスですね。こちら魔動機甲運用試験小隊、隊長の先川1等陸尉です。これより、支援砲撃を始めます。初めての実戦が首都での市街地戦とは驚きですが、最善を尽くします!お二方は敵の攻撃の防御をお願いします!』


先頭の車両から、スピーカーで指示が来る。


「了解です!遮断フィールドから出ないようにだけ気を付けてください!」


私はそう言うとともに、アルニギアスに展開する遮断フィールドの範囲をデータリンクさせる。


『こちらも了解です。データリンクも成功しました。実験艦隊の仇を取りましょう!ご武運を……』


「はい、防御は任せてください!」


その会話から、1分もたたないうちに戦車隊の配置が完了する。鋼魔たちもスモークの影響から脱したようだが既に遅かった。


「全車、撃ち方はじめ!」


耳を魔法で保護してしなければ確実に鼓膜が破れている爆音が周囲に響く。寸分の狂いのないリズムで絶え間なく砲弾の雨が降るように発砲する。着弾と共にシルエットが全く見えないレベルの爆炎が2体を包む。

 8年前のあの日から、この国は鋼魔に負けないように少しずつ準備してきた。魔法少女と勇者ロイドがその主たるものであっても、ここに来てくれた自衛官さんたちの力は絶対に通用する!


『撃ち方止め!……次弾装填しつつ、警戒を厳とせよ!』


戦車隊を率いているらしき、先ほどの自衛官さんの鋭い命令が周りに響く。


「アルニギアスもチャージしておいて!」


「了解!」


私もアルギニアスに次の一手の布石を打たせる。


「ウ、ウゥ……グゥ……ガァ!」


晴れる煙と共に見えたのはダメージを受けた様子の二体と、発射体勢に入ったドレッドラの下半身のミサイルだった。その砲塔は潰せているが、いまだ脅威となる火力は残っている。


「チィ!怯むな!第2波、撃てー!」


戦車隊の次の砲撃とミサイルの発射はほぼ同時だった。しかし、怯む必要はないのだ。放物線を描くミサイルより直線の砲弾の方が早く着弾する。そしてここには私がいる。

ミサイルの半数が誘爆する中、それでもこちらに飛んでくる一部がある。間髪入れず、私が分裂させた魔法の矢で撃ち落とす。結局こちらに被害はなく、相手が誘爆によって更なるダメージを受けた。


『頼もしいな、魔法少女!第3波これで決めるぞ!」


死に体に見える2体の鋼魔獣。これでとどめを刺せればいいが……。


“ギューンギューン!”


嫌な音が聞こえてくる。敵の殺意は折れていないようだ。青白い光も煙の中から見えてくる。でもさすがにこちらにも備えがある。


「砲撃、待ってください!!」


弓をステッキに戻し魔法で声を大きくして私は警告する。


「なんだ!?どうしたというんだ!?」


「強力な攻撃が来ます!対ショック防御を……!アルニギアス!」


「準備は万端!……テラ・ドミネイター!」


私の指示で間髪入れずに、アルニギアスはドミネイターを放つ。二度も同じ手は喰うまいと準備していたカウンターだ。それでドレッドラの頭部を吹き飛ばす気でいたが……ことはそううまくはいかなかった。


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