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EP50 風が吹くまで 前編


Side:篠宮 23:00


 鋼魔獣3体が東京に出現してから、約1時間がたった。状況は芳しくない。

 出現した鋼魔獣は、ビルドーガ、ドレッドラ、そしてマーシーが魔法少女になる以前にシンセリーたちが討伐したメリュドラと名付けられた、ヒュドラのような鋼魔獣の3体だ。

 どの個体も、人間を取り込んで消化と強化が終わっている状態であった。ビルドーガの時のように攫われた人をあらかじめエネルギーとして与えられた状態にあると考えられる。ビルドーガなんかは分かりやすく強化されており、以前の時はなかった下半身が形成されていて、鋼魔兵を生み落としながらこちらに進んできている。本部周囲にはバリアとなる結界を張ることが出来るけどそれだけでは援軍が来るまで持たない。先に私が迎撃する必要がある。


“ドンドンッ!”


 私は今、デヴァリオンとOIDO日本支部のビルの屋上で状況を観察している。遠くで爆発音が聞こえる、ドレッドラとメリュドラが放つミサイルと破壊光線で町は火の海だ。シンセリーの援護に行きたいが、鋼魔兵に対応する必要もありそうもいかない、ミサイルも使いどころは搾りたい。できれば援軍が来て畳みかける時に残しておくべきだ。

 危機的な状況だが、黒煙の暗黒の中にシンセリーの魔力の光が見える。私たちの希望の星は、あそこでまだ役割を果たそうと頑張っている。私も魔法少女の肩書を持つ者として、それに続きたい。


「デヴァリオン、ありったけの砲塔ユニット出して!バリアのやつも!迎撃と援護を同時にやる!」


「無茶するね……でもそれしかないよね!僕も演算頑張るよ!」


できることをしたい、今たくさんの命が瀬戸際にいる。あとから葬儀の時のような後悔はしたくない。そんな一心で使い魔を増やす。

 デヴァリオンは演算特化モードになって、デバイスで私を囲んでくれる。

 私は目を閉じて、脳に入る情報を使い魔から送られる情報に限定する。情報をもとに使い魔の位置を操作する。近くで迎撃のために配置するのは機関銃のように実弾をばらまけるタイプの砲塔。これは操る魔力が少なくて済むし、弾をばらまくだけでけん制効果が出るので操作精度も荒くていい。それより少し前に配置するのがバリアユニット。ビル全体を覆うことはできないが、時間稼ぎぐらいならできるはずだ。

 そして本命、長距離狙撃用魔力レーザーユニット。これを操作できるギリギリに配置して、シンセリーたちが相手している鋼魔獣を狙う。


「うぅ……」


頭が痛い、死ぬほどのマルチタスクだ。戦場の情報を把握し、そこから使い魔の配置を調節する。そのうえで照準も妥協しない、頭がパンクしそうだ。


“グォン、グォン!”


周囲の演算ユニットも激しく音と熱を上げている。デヴァリオンも一緒に頑張ってくれる。負けたくない!


“ザッザッザッザッ!”


巨大な人影が這ってくるのが見える。下半身のあるビルドーガだ。両腕がクレーンになってありとても移動しづらそうだ。攻撃を当てること自体は難しくないだろう。しかし、周囲に護衛のように、鋼魔兵を引き連れている。ゾンビのような特性がある鋼魔兵は一匹たりとも通せない。


「機関銃斉射!」


ビルドーガ本体にも当たる射角で、弾をばらまいて敵の群れの侵攻を妨害する。幸いここは、味方の本拠地。弾の補給ならいくらでも受けられる。脳の処理能力を節約するためにある程度脳死で撃ちまくる。


「並列思考きっつ……!」


私はあまりの頭への負荷に悪態をつくが、あきらめるつもりはない。並行して、遠くにいる2体の鋼魔をレーザーで狙う。


“ヴォンヴォン!”


光弾が視界の先へ飛んでいく。焼け石に水かも知れないが、しないよりはましか……。


「グガァアアアーーー!!!」


前方で大きな叫び声が聞こえる。ビルドーガの声だ。奴らは200メートルに近い位置まで迫っている。

そしてビルドーガは自慢のクレーンの腕を振り回しはし始める。


「まずい……!」


そんな危機感があったが、脳の処理能力が足りず、使い魔たちをうまく動かすことが出来なかった。


“ビュンッ!バギャア!ビュンッ!バギャア!”


振り回したクレーンの先からワイヤーが伸び、鞭のようにしなって私の使い魔を破壊してしまう。雑な攻撃だったが攻撃範囲が広いのと使い魔の方がろくに動けなかったことでやすやすと破壊されてしまった。


「あぐぅ……!」


使い魔が破壊され、フィードバックが来る。ただでさえ痛む頭が、割れそうになってくる。


「フルーデ……大丈夫!?コントロールのリンクを切るんだ!」


私の状態を見て、デヴァリオンの心配の声が聞こえる。鼻血が出てくるのが分かる、ひざが震えて崩れ落ちそうになる。でも……。


「んっぐ……止めない!負けないぃ!」


私は火傷しそうなほど熱くなっていたデバイスに手をついて、倒れないように支える。

ごめんなさい先輩……今は迎撃を優先します。


「これでぇ!」


今度はレーザー砲をビルドーガに向け、残った機関銃と一緒に撃ちまくる。

なんとかバリアを動かして、鋼魔兵をせき止めようとする。しかし、手数が絶対的に足りない。かくなる上は虎の子のミサイルランチャーで……!

 そんなことを考えていた時、インカムに通信が入る。


『待たせたな……フルーデ!こっちも迎撃準備が整った。本部はこっちに任せろ』


その声はミサト教官のものだった。いつもは恐ろしい鬼の迫力が今は頼もしく感じる。


「配置につけー!」


「教官!?」


ビルの敷地内の何もなかった部分がせり上がり、中から教官に率いられた兵士の人たちが出てくる。中には魔法使いらしき人の姿もある結界の中ではあるが鋼魔が来る方向へ向かって隊列を組む。そして魔力弾が撃てる銃を構えた。


「撃てー!」


“ガガガガッ!”


マシンガンの斉射が、鋼魔兵の侵攻を押し返す。


「お前たちばかりに、苦労を掛けるわけにはいかんからな。我々大人もカッコつけさせてもらう。休んでてもいいぞ」


「教官……」


「頑張ろう……フルーデ」


教官たちがくれた余裕、そこで休むつもりがないことを分かってくれているデヴァリオンが私を励ましてくれる。大丈夫、私は頑張れる。この人たちのためなら。

 私は杖の柄で床を叩き、使い魔の配置と魔力を整えた。



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