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EP49 弾丸の少女 後編

通算50話目です。これからもクォリティーアップに努めますのでよろしくお願いいたします。


Side:アーシュ


「もう、あんな思いはゴメンだ。お前らが、強くなって人様に襲い掛かってくるなら、俺がそれ以上の理不尽になってそれを叩き潰す!」


「グ、ウゥ……」


衝撃に顔をしかめ、身もだえしている敵を見下ろしてフォルテは言った。彼女の魔力の出力を押し上げる怒りを、俺も確かにリンクから感じた。前回のようには絶対にしない、その決意が無理を通させている。彼女は誰かの痛みをくみ取って、その人たちの代わりに怒っている。それができるのは彼女が他者を想える、愛に満ちた人間であるからだろう。


「そもそもお前の腹の中にある人たちはお前のものじゃねえんだよ。とっとと吐き出せ!」


フォルテはそう凄んで、目当ての発電装置らしきパーツを砕こうとする。


「ギャァァァアーーース!」


敵はこれはたまらないとばかりに身体を跳ねさせて、こちらに向かってくる。きっと、やれそうな方からやろうと思ったのだろう。俺は冷静にグレネードランチャーを構えて、撃ち落とす準備をした。しかし……


「俺に腹見せるたぁ……記憶の引継ぎとかは出来ないみたいだなぁ!」


俺が引き金を引くまでもなくミサイルじみたパンチが地上から撃ち上がり、敵の腹を狙う


“バチバチバチッ!”


「くわあ!……なんの!」


彼女の拳に自動で反応でもしたのか、胴体を守るためにやつの身体からバリアが展開される。さすがに彼女は痛みと電流の走る衝撃で、勢いが落ちるが無理やりに拳をねじ込んだ。ダメージを与えることはできていないようだが、相手の体勢を崩すことは成功したようで、敵はビルの中層の壁に突き刺さる。無人のビルを選んでいたので、けが人なんかの心配はないが、ここはもう安定性がない別のビルに飛ばなければ……。


「おい無茶するな!骨も筋肉も持たないぞ!」


俺は別のビルに飛び退きながら、フォルテを諫める言葉を掛ける。リンクがあるのでよくわかるが、彼女は身体に相当な負荷を掛けながら、その強大な力を振るっている。このままでは勝てても、彼女自身が潰れてしまう。


「止まれるか!止まったら倒せねえ!」


「フォルテ……!」


彼女のその言葉で気づく。彼女は自分の体の状態は理解している。分かっていて自滅覚悟で戦っている。それは取り込まれている人のためか、それとも孤軍奮闘しているであろうシンセリーたちのためか。彼女は間違いなくヒーローだ、誰かのために命を懸けられる英雄だ。素晴らしい人間だ。でも誰がそんな彼女を守ることが出来る?誰が報いることが出来る?

 そして自答する。それが俺だ。俺が彼女を守るんだ。きっとそれが俺なりの勇者のありかた。自分の軸が定まったからか、魔力の出力が上がるのを感じる。

 

“バンッ!……ベチャァ!”


「うわ、何しやがる!敵が逃げちまうだろバカ!」


俺は、反撃のために放電を準備している敵に構わず跳びかかろうとしているフォルテの足元にペイント弾を撃つ。弾けた塗料が赤い装甲と髪の彼女をオレンジに染める。冷や水をぶっかけるためだ。


「バカはお前だ猪女!戦いはここじゃ終わらない、ダメージを計算に入れろ!」


俺が彼女に怒鳴り返すと、彼女の瞳が揺れる。やっと少し冷静になってくれたようだ。


「グガァ!」


「くっ……!」


敵が放った放電を、後ろに飛び退いて回避する。


“ギュイン!”


敵は脚の一部を変化させスパイクのついたタイヤを出現させる。あれではさっきのように馬鹿正直に手で受け止めることはできなそうだ。


「くそっ!逃げる気か?」


フォルテは焦りを孕んだ声を上げる。

 シンセリーとマーシーがターベルフと名付けられた。鋼魔獣と戦った時、凄まじいカーチェイスを演じたのだという。今回はそんな悠長なことをしている暇はない。ここで仕留めてみせる。俺たちで……。

 俺はそう決意して、ビルから飛び降りながら両腕からアンカーを飛ばしてやつの背中あたりに刺し、拘束する。中に仕込まれた仕込み針が相手の体の中に深々と刺さる。この程度なら中の人にも問題ないはずだ。この武器は最近、ノクストス以外の全員に装備されたものだ。こういう小物は絶えず更新されている。おそらく俺向きの装備ではないが。


“バリバリバリ!”


 相手はワイヤーを通して電撃を流してくるが、気にしない。耐電性と放電機能も俺たちの世代の標準機能だ。少し型の古い先輩にも碌にダメージを与えられないような電圧ではどうしようもない。


「グガァ!」


電撃では振りほどけないと相手も察したのか、当初の予定通りタイヤを回転させ逃走を始めようとする。俺は勇者ロイドとしては馬力がない、だがそれはこいつを止められない理由にはならない。俺は、足の裏と背中からアンカーを伸ばし、地面に突き刺して踏ん張る。


「お、おい……少しだけ耐えてろ。俺が……」


「俺がやる。お前はそこであれの準備だ。人間のくせに自分から電撃を食らいに行くな!」


俺は隙を見て攻撃しようとするフォルテを制止する。別に一瞬なら電磁フィールドにも耐えられるのだろうから、彼女に任せてもいいだろう。でもそうしたくなかった。彼女の盾としての意地があるから。


「ぐ、おぉぉ!」


感情の高ぶりで出力が上がっている魔力に任せて、関節のモーターの回転数を上げて踏ん張る。


“ギシギシ……ミシミシ……”


寒気のするような音、フレームの軋む音が聞こえる。強がった手前、ここで自壊したりしたら本当にざまぁないな。気を張って魔力を絶やさないようにしないと。時間は掛けられない、撃ち込んだアンカーも鋼魔お得意の形状変化で外されてしまう。


「肩部2連魔力レーザー砲セット……照準補正……エネルギー充填……」


背部にマウントされた、新しい切り札。貫通力に優れた二門の砲を前に向ける。ワイヤーから伝わってくる魔力の揺れから、前脚の動きを読み取る。発電機ごと腕を吹き飛ばしてやる。人間が多く含まれている胴体には決して当てないように慎重に狙う。


「ダブルファイア!」


両肩の砲から、緑色の矢のように細い光弾が飛ぶ。貫通力に優れたその弾丸は、バリアを貫通して、両方の前脚を正確に吹き飛ばす。


「ギャァァァアッス!!」


断末魔にも似た悲痛な叫びが聞こえる。察しがいいことだ。すでにギロチンの刃は、お前の首に掛けられている。


「はあぁぁぁ!!!降る星の衝撃メテオ・インパクト!!!」


 俺の攻撃中に魔力を溜めていたフォルテが必殺技を放つ。技名を付けてみたが突き詰めればそれはただのパンチだ。ただ、彼女の魔力を右の拳の先に込めて爆弾のようになるほど圧縮する。身体の方にも膂力を強化するための魔力を巡らせ、踏み込んで加速する。さらに飛び出した後、背後に魔力を放出し、さらにスピードを求める。そのうえであらん限りの腕力で拳という爆弾をぶつけるのだ。この一か月それを最も威力が出せる魔力の使い方を研究してきた。

 彼女は今、全身を銀の弾丸に変えて魔物を討ち取る。


“パァン!”


弾けるような音と共に、鋼魔獣の身体が崩壊していく。飛び散る肉体のかけらは人の形を取り戻していく。最後の声を上げる暇は与えない。


「ふぅー……」


核を背にするフォルテは、拳を前に突き出したまま残心するように長く息を吐いた。


 ※


「これで良し、あとは救護班に任せよう」


俺たちは取り込まれていた人をの応急措置を済ませ、自分たちの迎えのヘリを待つ。直接向かってもいいが、補給も必要なうえにフォルテはダメージもある。ここは回復に努めよう。


「ペイント弾……悪かったな」


俺は塗料を掛けてしまったことを、変身を解除した真央に謝る。変身解除で落ちる塗料でよかった。


「むしろ、謝らなきゃなのはこっちだ……突っ込むだけじゃ救えないんだ。ありがとうな……俺を守ってくれて……」


「当然のことを……いや、もっと俺をあてにしろ。勝つために痛みが必要なら半分は俺に任せろ……俺はお前の勇者なんだからな」


当然のことをしたまで、と言いかけて止めた。当然のことだからじゃない、俺はこいつだから、守りたくなったんだ。


「ああ、頼りにしてるぜ、相棒!」


変身解除してなくてよかった。らしくない表情を見られたかもしれないから。


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