EP48 弾丸の少女 前編
遅刻しました。
イケートとレオリオスが敵と相対しているのと同じころ、フォルテとアーシュケリアのコンビもまた鋼魔獣と相対していた。
Side:アーシュ
俺がビルの上から見下ろした大きな道路の真ん中には、四足歩行の大柄な鋼魔獣がいた。その前には、フォルテが一人で立ち向かっている。俺はその更に後方のビルに待機している。
その鋼魔獣の姿は、俺たちが以前対峙したロードローラーとツチノコが合体したようなよく分からん奴と、シンセリーとマーシーが戦ったという四肢にタイヤのついた狼の鋼魔獣が合体したような姿をしていた。身体から伸びるプラグからスパークが見えるので合体した鋼魔獣が更に合体した形になっているようだ。まったく、厄介そうな相手だ。
両前足の先のタイヤはロードローラーのそれになっている。どう見てもスピードと質量で轢き潰しますよ、みたいな雰囲気をひしひしと感じる。
「グゥ……」
敵の唸り声が聞こえる。いつ目の前に襲い掛かろうかと隙を窺い、力を溜めているように思える。その様子を俺は離れた所から見ていた。
「…………」
フォルテが前で、俺が後ろ。互いの能力を考慮した合理的ないつものフォーメーション。俺はそれが苦手だった。
化け物に向かい合っているのはやはりまだ若い少女で、勇者ロイドのように手足が壊れたら取り替える、というようにはいかない。それだけじゃない、俺は前衛をするように造られておらず、フォルテは並みの勇者ロイドよりも頑丈で、パワーがある。それは分かっている。でも俺は勇者で、彼女を守るために生まれてきたはずで、俺自身そうありたいと願っている。でも今の俺はこうして彼女を盾にして、敵の隙を伺っている。今の彼女の能力を活かすための勇者のあり方なのだろうが、俺は怖いような、申し訳ないような気持ちでいつも戦っている。
「敵は防御力が、高そうだ。時間も限られている。お前が許可するならすぐに最大火力で……」
「言うな……絶対に助けるんだ!そのために俺たちはここにいるんだろうが……!!」
「…………すまん」
ここに俺たちが到着するまでの時間に取り込まれてしまった人の安全を顧みず、今俺が使える全ての火力をもって、敵の排除を目指す。そんな俺からの提案を最後まで聞くまでもなく、フォルテは怒りと共に一蹴する。彼女の言う通り、人命救助を第一とするのが俺たちの理想の姿なのだろう。しかし、俺は敵の圧力にフォルテが傷つくこと、下手すれば死んでしまうことを想像してしまい、怖気づいてしまっている。
「これでは……どちらが勇者か分からんな……」
俺は自戒の意味を込めて呟いた。彼女は強い。敵が多少強かろうと、目の前の壁が厚かろうとその拳で打ち砕いて進むだろう。彼女のパートナーである俺がそれを信じてやらなくてどうする!
「前回の外装強度を参考にして、威力を調節する。あとは……」
「ああ、俺が敵の芯の方に魔力を撃ち込む!……っと!」
そう、戦い方を決めたところで、戦いが始まる。敵がフォルテをアスファルトに均さんと、凄まじい勢いで突撃してくる。
フォルテはそれを危なげなくジャンプでかわす。フォルテの力はパワーだけではない。凄まじい反応速度からくる、瞬発力とスピードもまた彼女を前衛型魔法少女として成立させている要素だ。
さらに言えば、彼女はただ上方向に逃げるだけでなく、その後の展開も見越して、近くのビルの方向へ斜めに飛んでいる。
「まずは動きを止める!お前は楔の準備だ!」
「了解……」
フォルテは俺に指示を飛ばしながら、自らはビルの壁を蹴り込んで敵の側面に飛び、反転して蹴りを入れる。
“ドゴッ!”
「ガオオッ!?」
鈍い衝撃音と共に、相手は体勢を崩す。俺はその隙に構えたライフルからバンカーバスター弾を放つ。
“ビビビィ……!ボンッ!”
しかし、放った弾丸は敵の周囲に球体上に発生した稲妻に阻まれ、敵に直撃することなく空中で爆散する。
「なっ……」
「チィ……!」
流石に、俺たちは動揺し、彼女は飛びのいて一旦距離を取る。
バリアか?ならいろいろ確かめる必要がある。そう考えた俺は次の手を打つ。
「フォルテ、巻き込まれないように離れろ」
「え?お、おいぃ!?」
俺は警告とほぼ同時に、頭部のセンサーバイザーを下ろし、背中にマウントしてある銃の一つ、グレネードランチャーをばらまくように乱射する。
“ドドドドドドッ!!……バチッ!バチチッ!”
グレネード炸裂する音に交じって、電磁フィールドの電気が通る音が聞こえてくる。
「あい、気を付けろ!もう少しで巻き込まれるとこだったじゃねーか!」
「悪い、敵が動く前に確かめておきたくてな……」
フォルテの抗議の言葉に俺は素直に謝った。時間を掛けたくなかったのは嘘ではないが、こいつなら躱せるだろと彼女を充てにして雑に撃ったところもある。だがリスクに見合った情報はちゃんと得られた。
「バリアのエネルギーは足からきている。前脚にある円柱を2つとも壊せ!俺も援護する……!」
「……!分かったぜ!」
足の先のローラー部分には機能が集中しているのか、人が含まれていない部位だ。
おれからもできるだけ援護射撃するつもりだが、油断はできない。
「気を付けろ、あのバリアの出力お前の身体も……」
「んなこと言ってられるか!力押しで行く!」
展開されるバリアの上から、攻撃を通せるようにフォルテの方も全身に魔力の膜というバリアを張ってローキックを入れる。身体にも負荷どころかダメージすらあるだろうに猪女が……。
俺は、右腕にガドリング、左腕にグレネードという構えで爆撃のような連射をかます。大雑把にだが、フォルテとは身体を挟んで反対側を狙っているこれで文句はないだろう。
「ゴガア!」
フォルテは何とか、外側を向いている円柱の平面の装甲を剥がせた。ようだがもう一撃入れる必要がありそうだ。
「ガアォンッ!!」
敵はそのダメージに怒ったようで、その太い前脚を振りかざして回転と電撃を纏わせながら、フォルテに叩きつけようとする。
「躱せ!」
俺はフォルテが肉塊に変わってしまう未来を幻視して反射的に叫んでしまう。しかし、フォルテは聞こえなかったのか、反応できないのかその場から動かなかった。
“ガインッ!!ガリガリ!!バリバリ!!”
フォルテは岩のように動かずその両手で、高速回転するローラーを受け止める。ガントレットと円柱部分が摩擦を起こし、火花と大きな音を上げる。巨大にな圧力がかかった彼女の足元のアスファルトが、クレーターのように凹む。
だが彼女自身は倒れない。俺よりも小さいはずの身体で、その破壊的なパワーを受け止めている。電撃の負荷も大きいだろうに……。
「フォルテ……」
「ふぅ、うぅ……オ゛オオオ!!!」
“バキッ!……グゥン!”
なんと、フォルテはローラーの回転を、指を食い込ませることで止めた。そして雄叫びと共に、その巨体を持ち上げる。
「ハアアーーー!!」
フォルテは、そのまま相手を仰向けになるように道路へ叩きつける。
“ドォン!!”
地面の揺れはもちろん、空気の振動までビルの上に伝わってくるほどの衝撃が起こった。
「これでぇー!!」
フォルテは攻撃の手を緩めない、敵が投げられて叩きつけられた衝撃で動けないうちにローラー部分に拳をふりおろし、それを丁寧に砕く。戦闘とは言えない作業のような動作だった。
これが俺の魔法少女か。そんなことを想った俺は、一瞬完全に思考が停止し、呆然としてしまった。このパワー、魔法少女だから、で片付けられる領域のものだろうか?そしてそんな彼女に対して持てる役割があるのか?そんな考えが浮かんで、俺は間違いなく恐怖を抱いた。
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