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EP45.5 2 星の影 中編

番外編2話目です。

Side:ノクス


「動くな。動くと撃つ。変身もするなよ」


一実を攻撃した女は拳銃を、俺でなく一実の頭に突き付ける。反対の手には警棒のようなものが握られている。打撃の際、稲妻のようなものが見えた。スタンロッドとかいうやつだろうか?

俺が撃たれる分には問題ないが、彼女の場合はそうはいかない。下手に動くことはできない。気が付けば複数の銃を持った人間と、臨戦態勢であることを示す魔法陣を展開させた人間が俺を囲んでいる。


「一実を離せ……さもなくば……」


最悪殺すことも辞さない、俺はそんな意志を込めた声を出す。


「言っておくがこの銃は脅しじゃない……我々の目的はお前だが戦力としてではない。だからこの娘はいなくてもいいということだ。下手なことは考えない方がいいぞ」


「……!?」 


俺は、光学迷彩で隠している刀の柄にかけていた手を離した。ここはおとなしく従った方がいいか……。


「どうしてこんなことをする……俺たちが組織の不利益になることをしたことはないはずだ?」


「プロジェクトにないイレギュラーが、知ったような口をきくな!」


「……!」


俺の問いかけを、相対する女は一蹴する。そう言われてしまっては何も言えなかった。確かに、組織の中で造られたアルスたちと、俺を同列に扱いはしないだろう。だが……


「俺はそうでも、一実は違うだろ……!仲間を人質にするのがお前らのやり方なのか!?」


「この女もお前という異分子を引き受けた不穏分子だ……!これよりお前たちは『合衆国』の管理下に置く」


「合衆国……」


OIDOの意志というよりもその後ろにいる国家の意志がこの状況を作っているってことか……厄介だ。仮に俺たちの強制的な捕獲が成功したとしても、日本支部と日本政府からの反発を抑える算段が付いているんだろう。俺はこれまでに学んだ、日本の歴史……特に前大戦以降の両国のパワーバランスを思い出しながら考える。しかしそんな理屈はどうでもいい。


「そんなことを聞いているんじゃないっ!?みんなのために命張ってる女の子にする仕打ちじゃないだろって言ってんだよ!」


それが悪意にしろ、善意にしろ、彼女が立ち向かっている脅威以外の全てからなるべく守られる権利ぐらいはあるはずだ。俺はそんな憤りから声を荒げてしまう。


「土人形風情が人間のようなことを言うんじゃない……!『拘束魔法』……!」


一実に銃を突きつける女は、周りの部下たちに命じて俺を拘束しようとする。


「サトゥヌス・プラセプティム……」


しかし次の瞬間聞こえた呪文の声の主は、気絶したと思われていた一実だった。


「な……」


魔力の光輪が場にいた敵の全てを拘束する。


「……!?」


俺は反射的に、女に跳びかかるようにしてその銃をはじき落とす。そしてそれを奪って、羽交い絞めにして拘束し、逆に銃を突きつける。立場は逆転した。


「皆さん動かないで。おとなしく私たちを施設の外へ出してください」


そう言って立ち上がる一実の手にはステッキが握られていた。


「何故……」


女は一実が起き上がった理由が分からず、愕然としていた。


「雰囲気がおかしいなって思ったのでカウンターで魔力障壁を張れるように準備してました。組織の中で、こんな準備したくありませんでしたけど」


 一実は、アメリカに行くように命令されたときに忠告されたことをしっかり気に留めていたのだ。発端は出発前にさかのぼる。


Side:碧乃


「それでな碧乃、さっき話した出張の件だが……諜報部から回された情報がなんともきな臭くてな……」


「そ、それってどういう!?」


出張の話をされた後、私は陣屋さんの個室に呼び出され、話をすることになった。私が何かやらかしたのかと不安になったが、どうやらそんな小さいことではないらしい。


「ああ……なんでも米国の意を受けた本部の一派が、ノクスを狙っているって話だ。確保するために最悪実力行使に出てくる恐れもある」


「狙っているって何でですか!?ノクスの処遇は本部も了承してるはずじゃ……」


いろいろ聞きたいことはあるがとりあえず、私一人がここに呼び出されたわけは理解できた。話が物騒すぎる。


「OIDOも一枚岩じゃないってことだ。それぞれの支部はその国の意志に大きな影響を受けてる……」


どんなに言っても私たちは未成年だ。さすがに大人たちの政治的な思惑には対応できる気がしないんですけど。


「で、でも、デマンド・サーキットの改良プランのめどがついたって話も聞きました。今更ノクスにそこまでの技術的価値は……」


諸々の軋轢を起こしてまで、独占するメリットはないはずだ。解析データも逐次共有されているはず。


「理由はそれだけじゃない。そもそも……米国本部は日本支部を快く思っていない。前園と星原がこの国にいたこと。そしてお前らというイレギュラーが出てきたことで、日本支部は5組の魔法少女と勇者のペアを用意できた。北米に4組しか用意できてないこの状況でだ。それを苦々しく思ってるやつらがいるってことだ」


稀代の天才科学者と最初期に発見された優秀で計画に積極的な魔法少女を確保できたこと(と魔法少女とロボへの並々ならぬ情熱を持つ国民性)により日本は対鋼魔戦において独自の地位を築くことになった。でも、そのこともあってか、(もしかしたらノクスがいるからかも分からない)最近の日本にはすごい頻度で鋼魔獣が出現することになったし、鋼魔人と思われるものが最初に出現する状況になっている。ひがまれるほどいい目を見ていないと思うけど。


「この非常時にみっともないとは思うし、本部の連中もほとんどは良識を持って接してくれると思ってくれていい。だがもしもの時の心構えをしておいてくれ」


「そんな……」


私は人間相手、ましてや同じ組織の仲間相手に事を構える覚悟なんて、ありはしない。


「本当にすまない。こちらからもできる限りの人を付ける。俺も、本当に仕掛けてくるような馬鹿な連中だとは考えたくないが……保険としてな?」


今回の出張現場に出撃するような気分でいく必要がありそうだ。


 ※


 私は、魔法を発動させ続けながら、端末を確認する。ご丁寧に通信できないようにしてある。ただ仮に日本支部に連絡が取れたとしても脱出は自分でやる必要があるんだろうな。マリア博士も他のスタッフさんたちも私を狙う敵かもしれない。そう考えるとこの状況がすごく怖いものだと実感する。

陣屋さんの忠告を受けて、妖精のレミアさんに対策になる魔法をレクチャーしてもらったりして、準備していたからこんな風に対応することができた。でもここからどうすればいいか分からない。

 私は、戦士ではあってもスパイじゃない。ここから脱出できたとしてそのあとはどうする?そもそも私たちが実力行使に出たとして、いろいろな問題が起こるのではないか?

というか人に銃を突き付けているこの状況は人間として正しいことなのか……。


「社会の仕組みを理解していない子供が力を持つと碌なことにならない。おとなしく我々に従え……!」


ノクスに拘束されている彼女はまだ折れていないようで、降参するように言ってくる。確かにここで全力を出せば脱出できるかもしれないけど、死人が出かねない大立ち回りをすることになる。私にはまだそんな覚悟はできていない。


「……ノクス……」


私は答えを求めて、自分の勇者を見る。帰ってきたのは言葉ではなく、視線だった。今はまだ精神リンクは繋がっていない、でも彼が私を信じてくれていること、私の意志を果たすために全力を尽くす意志があることそれは分かる。

 私はそれに応えなければいけない。何も返せない自分なんて嫌だから。

私にはどんな未来が待つとしても、ノクスの尊厳を明け渡すような選択肢は選ばない。


「ノクス……!」


決意とともに呼ぶ名前、彼はその一言でやるべきことを汲み取ってくれる。


「了解……トランス・フィールド展開!」


「くぅっ……!」


ノクスは女性を投げ飛ばし、変身のためのバリア・フィールドを展開する。周りの人たちを拘束していた魔法が解除されるが、かわりにそのバリアが私たちへの干渉を防いでくれる。


「ブローミング・ドライブ!」


私とノクスは変身する。


「愛審聖裁マーシー・リブラ!」


「光影勇者ノクストス!」


名乗りを聞いても、私たちを捕まえようとしている人たちは、まだ銃を私たちに向けている。


「道を開けてください。私たちは止まりません!」


私はステッキを前に掲げてそう宣言した。


邪魔してくる人を死なない程度に吹き飛ばして、地上に進もう。そんなことを考えていた時……


“ドッカン!!”


気持ちのいいほどの爆発音が正面から響き、部屋に充満する煙と一緒に顔に風圧がかかる。ノクストスは音を追い抜く勢いで私の前に躍り出る。私は腕で顔をかばって、目を凝らしその爆発の原因を探そうとする。誰かロケットランチャーでも持ち出したというのか。だとしてもなぜ私を狙わない?パッと見て周りの人たちも巻き込まれていそうだ。


「ホールドアップ!全員、武器を捨てなさい!」


爆発音でしびれている鼓膜に、凛とした強い印象の声が届く。正面の煙の中から人影が2つ現れた。

 片方は純白という印象で、銀色に輝く髪をポニーテールでまとめ、白いドレスを纏っている。だが目を引くのは金色に近い色をした2m近くありそうなランス。私よりも少し背の高い程度の少女がそれを当然のように持っている。

 右隣にはトリコロールの装甲に、円形の盾のようなものを両腕に装備した勇者ロイド。


「グレース・モノセール……」


その琥珀色に輝く鋭い眼光が私を貫いていた。


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