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EP39 戦士の黄昏 中編

次のシーンが長引きそうなので短く切らせてもらいました。

2025年10月22日加筆修正しました。読みやすくなっていると思います。

Side:碧乃


 あの戦いから2週間、それまでがウソのように鋼魔の出現が平時と同じくらいに落ち着いている。私はノクスがまだ本調子ではないためローテから外してもらっている。だがもちろん暇になるわけではない。インテグレーション・ボディを使いこなすために日々、シミュレーターでの訓練にいそしんでいる。


 そして今日は、自衛官の人たちの慰霊祭を兼ねた合同葬儀に来ている。ここには数千人の自衛官と、今回の犠牲者の遺族たちが参列している。私達、プラネスフィアも勇者含めて出席することになった。マスコミは入れていないため、変身せず普通に喪服を着ている。変身前の名前や顔は世間一般に知られていない。だが、場違いな少女の集団がいるということで視線が集まっている。私たちの正体を察した人もいることだろう。


「此度の戦いで、1274名もの自衛官が海原に命を散らしました」


 場所は横須賀基地の港、戦いの日に居合わせた石崎さんが皆の前で弔辞を述べている。

千人以上の犠牲者……正直ピンと来ていなかった。ただここに並んでいる遺族の数を見て、2週間前の出来事がとんでもない悲劇であると実感がわいてくる。今回の鋼魔は三つのコアを持っていたことにより人間の消化が早く、大勢犠牲者が出てしまったということらしい。分離できた人も、侵食が早かったため後遺症に苦しめられている。


「自衛官たちは鋼魔という国民の脅威に対し、その身を盾にして散っていきました」


 弔辞の声が遠くに聞こえる。過程はともかく民間人に犠牲は出なかった。その事実は犠牲になった人たちにとって慰めになるのかな?

 フィールドによって抵抗する力を奪われて取り込まれていった彼らは、戦うということすらできなかったはず。無情な話だと思う。尊厳も何もかも踏みにじられるような死に方だ。私がその立場だったらと思うと背筋が凍る。

私たちの到着がもう少し早ければ何か変わっただろうか?そう考えると途端に怖くなる。千人の犠牲の責任の一端が私にある、そんな残酷な事実が。

 しかし、頭の片隅ではあれだけ強大な相手だったのだからしょうがない、多少到着が早かったところで結果は少ししか変わらないと冷静に考える私もいる。でもそんな考えは逃げな気がする。少し?一人でも助かる人が増えた可能性を少しで片付けていいわけがない。でもそもそも……そんな風に自己嫌悪と自己弁護の無限ループを繰り返す。私はこの現実に対する向き合い方が分からない。


“パン!パン!パン!”


 泥沼の思考を、弔砲の音がかき消す。そうだった、ここは死者の冥福を祈る場で、私の苦しみなど全く関係ない。私は式に集中すべく前を見る。弔いの花輪が海に投げ入れられるのが見えた。葬られるべき遺体はここにはない。あの怪物がすべて消失させてしまった。周囲で泣き声が聞こえる。こんなのあんまりだ。受け入れられない遺族だっているかもしれない。

 潮風が顔に当たる、目に刺さるような快晴の青が私に何か訴えかけているように思えた。


 ※


「あなたたち、魔法少女ですよね?」


式が終わった後、帰ろうとする私達の一団に険しい顔をした老年の女性が話しかけてきた。


「私はこの子たちの引率者です。失礼ですが、あなたは?」


司令が私たちの前に立って、話をする。


「あの艦隊にいた自衛官の母です。その子たちが魔法少女なら、聞きたいんです。息子が本当に死んだのかを……」


私達はどうしていいか分からず、司令の背中を見ていることしかできなかった。


「魔法少女に関する多くのことは、機密事項となっています。この子たちの戦いについても同様です。ご子息のことはお気の毒ですがお答えできません。……行きましょう」


 司令は私たちにこの場を離れることを促す。心苦しいがしょうがない。機密事項以前に私たちは吸収の場にいなかったし、何も抵抗できないままに取り込まれたと思われます。などと言えるわけがない。


「納得できるわけないでしょう!」


後ろからあの女性の叫び声が背中に刺さる。


「遺体すらなくて、死に様すら教えてもらえない!そんな状態で息子が死んだなんて納得できるわけないでしょ!」


悲痛な叫び声に、足がすくむ。背を向けるべきではないことなのかもしれないと思う。でも向き合うのも怖い。そんな葛藤が胸を包む。


「あなた達が最善を尽くしたことはよく知っている。そして彼らもそう……それでも救えないものがあった。それは、誰のせいでもない」


 司令は女性に聞こえない声でそう言った。その声は優しかった。私は、振り返りたくなる自分を何とか抑えて足を進める。


「なんとか言いなさいな!息子は常々言ってた。最近国のお金が魔法少女のために使われてて、隊の懐が厳しいって!それなのにっ!あなた達は何してたのよ!」


 女性の声に涙が混じっていくのが分かる。私は全力を尽くしたのだ、と叫んで耳をふさぎたくなる。言い訳したくなる。だがそんなことは失われたものとその悲しみを埋めるものにはならないことぐらい分かる。


「そんな得体の知れないものじゃなくて最初から、自衛隊を当てにしてれば……うぅ、あの子を帰して……返してよぉ!うぅ、うわあぁぁぁ!」


 私は堪らず振り返った。そこには泣き崩れる女性とそれに寄り添う周りの人々がいた。周りの人もきっと女性と似たような気持ちなのだろう。敵を見るような目でこちらを見ていた。救えないとはこういうことだ。理不尽だと怒る気にもならない。その悲しみを私にぶつけることで少しでも気が紛れるならそれで……。


“バッ!”


 誰かが私の背を叩いた。


「全部抱え込んでたら……持たなくなる。ほどほどで良い、欲張って抱え込んで壊れたら元も子もない」


そばに来てくれた隊長はそう言ってくれる。


「欲張る?」


「……魔法少女はすべてを救うヒーローにはなれない。血濡れのまま進むしかない。割り切る癖をつけた方がいい」

  

「…………」


その言葉に何も言えず、先を行く隊長についていくしかなかった。

 シンセリー・テルスは私よりずっと長く戦ってきた。救えたものも、救えなかったものも多くあったはずだ。ほどほど……この人は無視していいとは言わないんだ。

戦ってきた中で責任というものとキャパシティを超えないように、でも決して忘れないように、心の中で折り合いをつけてきたんだろう。きっと、そんな人だから希望の光でいられるんだ。やっぱり、すごいな先輩は。

 私はヒーローになろうとは考えたことはない。ただ誰かの役に立てる、必要とされる存在になりたくて魔法少女になった。それでも魔法少女にきらきらした夢を見ていたことなどないと言えば嘘になる。養成学校で学んだことから魔法少女のシビアな現実なんて想像できたろうに。

今ここに至って私は自信がなくなっている。私は耐えられるだろうか、この現実に。魔法少女でい続ける覚悟が持てるだろうか?


「大丈夫か……?」


今度はノクスが、声を掛けてくれる。彼はいつでも支えになってくれる。でもこんな重圧と責任、想像してなかったから辛い、なんて言いにくくて誤魔化すしかない。


「俺、記憶がないから下手なことは言えないけどさ……司令の言う通り、誰のせいでもないと俺も思う」


「うん、分かってる」


 それでも彼は私を励ます言葉を言ってくれる。

ノクス、私の戦う理由の大きな一つ。誰か一人のために戦うのもいい。だけどそのためにそれ以外すべてを無視することが出来るほど馬鹿にはなれない。

 私は前の仲間たちの背中を眺める。隊長以外にもそれぞれ今回のことで抱えていることがあるのかな?私よりも優秀なみんなだ。この私にとっては辛い状況も織り込んで、覚悟を持ってここにいるのだろう。

 私はどうする?



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