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EP35 死闘 後編


Side:ノクス


「……クス……ノクス!」


 遠くで少女の声が聞こえる。全身が熱い。神経が焼け焦げているのが分かる。わずかに残った触覚に、少女の手の感触を感じる。なぜ、道具でしかない自分にそんなに切実な声を出すのか。自分の身が裂かれたような悲しそうな顔をするんだろうか。


「マーシー……俺を置いて逃げろ……俺は戦えない……」


俺の命は彼女の力と繋がっている。俺が力尽きれば、彼女はただの人間になる、そうなる前に彼女をこの危険な場所から遠ざけなくては。


「バカなこと言わないで!魔法少女と勇者は一心同体なんだよ!置いていけるわけないじゃない!」


何でそんなことを言うんだ?俺のことは連れて行ってくれなかったくせに。……?俺は何を考えている?目の前の少女が俺を連れて行ってくれなかったようなことなんて、裏切られたと思わせる事なんて一度もなかったはずだ。この胸に湧くモヤモヤは何だ。


“ギューン!”


またレールガンのチャージが始まる。だがそれはこちらも同じだった。


「2発も撃たせない!」


「俺が支える!外すなよ!」


片腕でレールガンを構えるアーシュケリアを、フォルテが後ろから支えている。アーシュケリアの背中からは加速装置が展開されるとともに別口で電力を供給するためのプラグが銃身へ伸びている。


「行けぇ!」


フォルテの掛け声と共に、引き金が引かれる。


“カァーン!”


閃光と共に、甲高い音が響きその超音速の弾丸が外皮とその奥の詰まった中身をものともせずドレッドラの頭の前半分を吹き飛ばす。


「やった!」


見上げていた俺には決定的な一撃だと思えたが、事はそううまくはいかない。すぐに傷口が泡立ちだし、再生が始まる。ドミネイターに今のレールガンを重ねたとしてどうにかなるものなのか?いや、そうは見えない。希望があるとすれば、やはりイケートの毒しかない。


「ミサイル第二波が来る!」


フルーデの言葉通り遠方からの援護射撃が再び飛んでくる。しかし敵は、2度も同じ手を喰ってくれる相手ではなかった。


まるで意趣返しのように飛んでくる攻撃以上のミサイルがその身から放たれた。それらは上空でぶつかり雲を吹き飛ばして、太陽のようにも見える火球をいくつも形成する。


「きゃー!」


その火力の余波が仲間たちを襲う。直接的なダメージはなくても動けない。これでは打つ手がない。どうすればいい……また仲間たちが死んでいくのを見ているしかないのか、そんなのはごめんだ。


「はい……はい……え?2号機ですか?でも、碌に訓練もしてないのに……それに体そのものを使わないとはいえ負荷だってあるのに……」


マーシーの声が聞こえる。耳元のインカムから何やら通信で作戦の提案を受けているようだ。だが俺の負担を懸念して、その方策を受け入れるのを躇っているようだ。


「マーシー、勝てるなら……俺は命を懸ける……だから、やれ!」


その手段の具体的なところは分からない。でも、リンクからはマーシーの中に勝てるのではないかという期待を感じる。

 なら勇者である自分はそれに掛けるだけだ。ここにいる仲間も、戦士が倒れた後危機にさらされるだろう人々も、半身に等しい彼女も、何も譲らない。もう失うのはたくさんだ。

 俺はどこから湧いているかも定かでない感情に突き動かされて、上半身を起こし、決意を伝えようとマーシーの手を握る。


「……俺はお前を守るためにここにいる……お前が生きている限り死ぬつもりはない」


「……分かった。やってみよう……。陣屋さん投下してください。絶対に動かして見せます……みんなも援護お願い!」


マーシーは分かってくれたのか、通信の向こうの陣屋に指示を飛ばす。その後チームメイトたちに援護を頼む。


「やってみてマーシー!あなたならきっとできる!」


「しゃーねーな、お前に託すとするぜ」


「この状況を覆せるとしたらそれしかない……!」


仲間から声援が聞こえる。


「抜けているところのあるあなたですが、それでも戦い抜いてきたことも事実……今度もやって見せてみなさいな。理屈を超えたあなたの強さを……」


複雑な関係であるイケートからも激励の言葉が飛ぶ。それを聞いて覚悟を決めたのか、マーシーは俺をハンマーで叩いてから、首根っこを引っ掴んで海を背にする方向に駆け出した。ハンマーの力で重力が作用しなくなったのか俺を連れていても彼女はぐんぐん加速していく。


「で、何をするんだ?」


勇ましいことを言った手前ダサい気もしたが聞かないわけにもいかない。


「今からインテグレーション・ボディの2号機が来る。それを2人で動かす!」


インテグレーション・ボディ、概要程度は聞いていたがこんなに早くそれを動かすことになるとは思ってもいなかった。というか動かし方もろくに知らない。


「動かせるかどうか……」


「やれって言ったのあなたでしょう!?それに感覚が肝らしいから魔力が足りればたぶん行ける」


ぐうの音も出ない反論が返ってくる。確かにそうだ。インテグレーション・ボディが今まで動かせなかったのは魔力不足、俺とマーシーなら動かせるかもしれないという話だった。精神力、要は気合が足りれば何とかなる。逆に言えば気持ちで負ければ動かせるものも動かせない。動かせると信じ込むんだ。

 やがて進行方向の数百m先に、高さ20m以上はあるデカいコンテナが降ろされる。持ってきたのはOIDOの輸送機のようだ。


「ギャオオオン!」


明らかに異常な存在に警戒心を抱いたのか、ドレッドラは再生した砲塔でコンテナを攻撃し始める。


「させない!」


フルーデがシールドを重ねてその攻撃を防ぎ、その他のメンバーはドレッドラを攻撃して意識をこちらからそらそうとする。


「はぁ、はぁ……」


マーシーは息を切らしながらも全力で走る。周囲から襲う砲撃の衝撃波をかいくぐって。

 やがてコンテナの手前にたどり着いた時、コンテナの側面が観音開きに開く。その中には巨大な人型があって……。


「ライジング・インテグレーション!!」


マーシーがそう叫んだと同時に、至近距離にミサイルの攻撃が飛んできた。


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