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EP25 流される血の意味 前編


Side:碧乃


「ガオォォォン!!」


「でかい……」


 それが鋼魔獣を見た時の感想だった。それはビルの建設用の大型クレーンを素体に誕生したらしいビルドーガと名付けられたそれはビルの屋上からさらに10mはあろうかという巨大な上半身を生やし、隣接したビルを取り込みながらどろどろとした体でビルごと呑み込もうとしている。その顔は肌がはがされているようにグロテスクで、角のようなモノが体の至る所から生えている。クレーンは巨大な異形の腕のようになって敵の身体から伸びている。


『ビルの中にはまだ取り残されている人がいると考えられます。迅速に突入し対象を殲滅してください』


私は仮設の飛行用ブースターをつけたノクストスに跨った状態で、敵の上空を飛びながらそんな通信を受ける。今回のチーム構成は、私とイケートと隊長だ。オールマイティーな魔法少女と勇者が集められていた形になっている。蕨野さんと仲良くするのは正直まだ難しいけど、人の命がかかっている状態で文句を言うほど私は子供ではない。


「まずは上空から、攻めてみよう。イケートの一撃で早期決戦を狙う。私とマーシーはその援護」


「了解です」


「了解しました」


蕨野さんの毒は一撃必殺だ。基本的に当たれば鋼魔獣の再生力を阻害しながらその命を蝕む。

私達は、円を描くように敵の周囲を回りながら距離を詰める。先行するのは私と隊長、ノクスは外付けの武装をまだ装備できないため、空からの攻撃はノクスよりも私にかかっていると言える。


「行くよ、マーシー」


私は、そう言って加速をかけて追いかける隊長を、自分も加速しながら追いかける。


「はーっ」


「ええーいっ!」


隊長は弓形態で、私は通常のステッキで、魔力弾による攻撃を開始する。


“ズガンッ!”


“ズドンッ!”


先輩のそれは正確に奴の頭部に直撃したが、私のは明後日の方へ飛んでいき射線の方向からずれたビルに当たってしまう。


「マーシ―!もっとよく狙って!」


隊長の鋭い叱責が飛ぶ。自分の不甲斐なさに腹が立つ、ノクスは銃を扱う訓練とかもやっていて、他の勇者のように外部システムの補正が無いにもかかわらず、すでにかなり上手になっているのに私は……。


「マーシー、落ち着け。相手はデカいし、動けもしない。ゆっくりでもやるべきことをやれば、必ず当てられる。何か反撃が来たらその時は俺が躱す」


ノクスが話しかけてくれる。そしてリンクから私のやるべきことを思い出させてくれる。

射線を意識して自分の移動を加味して修正する。


 「いっけー!」


今度放った複数の魔力弾は、ビルドーガの腹に当たってくれる。しかし、隊長は私がゆっくり攻撃している間に、倍の攻撃量を攪乱のために頭部に当てている。伸びしろととらえるべきか、才能の差を示す残酷な現実なのか、私には考え切ることが出来なかった。


「行きます!レオリオス、側面拡散砲、一斉射!」


後ろから私と隊長の間を突き抜けるようにして前に出た。イケートペアは、勇者側の攻撃で自らを相手の間合いの内側に押し込んで、いきなり勝負を決めんとする。分離を促しながら、敵に致命的ダメージを与えられる彼女の魔法は、間合いを詰める必要こそあるが、それを差し引いても強力無比だ。


「お覚悟!」


レイピアを身体の脇で水平に構えた彼女はサドルを蹴って飛び勇ましく突撃していく。


“ギュイン!”


強烈なソニックブームと一緒に、クレーンの先のワイヤーの先の刃が飛んできて彼女の胴体を千切れ飛ばそうとする。


“ギイィン!!”


「おっと……さすがにそんな単純な手には……」


両腕に備えられた鉤爪を展開したレオリオスが当然のようにそこにいて、吹かすスラスターでその威力ごと相殺する。


「シャァァァ!!」


“ビィイイン!!”


ビルドーガの巨大な目玉の片方から赤熱する光線が飛んでくる。密着していたイケートとレオリオスは互いのシールドを重ねて展開し防ぐ。


「マーシー、牽制!」


「はい!」


私は隊長と大きな魔力弾を顔にぶつけて二人の離脱する隙を作る。


「二人とも、怪我は?」



「怪我の方は大丈夫です。ですが、直接、突撃するのは難しそうな威力でした。もう一工夫必要です」


「分かった。散会して3方向から攻めよう。ビームを出すのが目なら2方向の以上でっ責めればいい」


「了解です。私は下方から攻めてみます」


一つ試してみたい戦法が頭に浮かんだ私は、隊長に提案する。


「分かった、それで行こう。私とイケートは上方から攻める」


私はすぐにステッキをピコピコハンマーにして、自分とノクストスを叩く。


「うおっ!打ち合わせ通りいきそうだな」


そんなことを言う、ノクストスと私は横に落ちるようにして、敵のとりついたビルの壁面に降り立つ。


「忍者みたいだね、じゃ、行こう」


私は二人の重力を操って、ビルの壁を大地のように感じている。


「こいつはいい、まだ飛ぶのにはなれてなかったんだ」


ノクストスはコツコツと壁をつま先で叩いて感じを確かめている。この角度ならば狙いにくい上に狙えるとしても他の二組をフリーにできる。

気分は壁を駆け上がる忍者だ。

。このまま相手の喉元に迫って……。


“ジュウィーン……”


流体金属の膜がビルの壁面に貼られ、そこから何か人型の影が浮かび上がってくる。一つ目の鬼のような何か。


「分裂体か?」


見回せばビルの周囲にも同様の怪物が出現している。前に立ってくれるノクストスは刀を構えて警戒している。


『新たな出現物に人間の生体反応を確認、人間を核とした分裂体と考えられます』


インカムから、解析情報が伝えられる。


「なら、魔法少女の魔力で分離救出す……」


『待ってください!バイタル変質率が高すぎるおそらく分離は不可能です』


「なんですって!?」


イケートが動揺を孕んだ声を上げる。


『妖精界から提供された資料の中にあった、鋼魔兵かもしれない。通常鋼魔は蓄積リソースをする人間を持ち帰ることを目的にしている。だが、鋼魔には戦力変換効率こそ下がるものの、即戦力である鋼魔兵に人を変える技術があると文献に残っている。おそらくあれが……』


インカムから神名さんによる解説が入る。


「それで、分離する手段は本当にないんですか?」


あれらがどのような存在であるかなどどうでも良かった。


『残念だが、あの状態になってしまうと人に戻す手段はないと伝わっている。今はゾンビだとでも考えて、対処するしかない』


「ゾンビって……」


話を聞いてもすぐには納得できない。私は魔法少女だ。人を助けるために戦っている。その過程で人命の全てを守れないことは理解している……つもりだ。でもだからと言って人だったものに自ら手を下す覚悟は今の私には……。


『私です。岩越です。対象を鋼魔獣と同様の要排除対象と断定。プラネスフィアに排除を命じます』


冷たい指示がインカムから聞こえる。


『これは大人の身勝手な命令です。あなた達には何の責もない。だから、お願いします』


本当に身勝手だ、責任はないと言われただけで割り切れるほど、大人では……。


「了解、ノクストス、レオリオス、行けるか?」


そう重苦しい声を出したのはアルニギアスだった。


「待って兄貴、まだ何か方法が……」


悲壮感を感じる声でレオリオスはうろたえる。


「アルニギアス、俺は行ける……致し方ない。そして、これは俺らの役目、そうだろ?」


私を現実から庇って立つようなノクストスが、両手の刀を振りかぶった。その背中にはこちらの干渉を許さないとでもいうような頑なさがあった。


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