EP22 力と知恵 中編
「デヴァリオン、観測ユニット出して」
「了解。広範囲探すからありったけ出すね」
フルーデはパートナーに指示を出す。
それを受けたデヴァリオンの背中に搭載したコンテナから複数の小型メカを射出する、そこにフルーデから放たれた光がそこに宿ってふわふわと浮遊し始め、四方に散っていく。
彼女の固有魔法は、魔力で構成された使い魔を使役できるというもの。使い魔に自我があるわけではないが、遠隔での魔法の行使や感覚器官の拡張など様々な応用が可能な便利なものだ。さらにその使い魔と小型のメカを組み合わせることで、機械的な応用まで利かせることが出来る。
デヴァリオンが大型化、重装化しているのは、その支援メカの輸送用コンテナと運用支援のための演算ユニットを搭載するためだ。
「周囲の警戒は私がやる。だから落ちついて探して」
「了解です」
デヴァリオンは半円形展開した演算ユニットの中に、簡易的な司令室を展開する。その中にステッキをより長いロッドに変換させて立つ。
彼女は周囲1kmの空間のほぼすべての情報を掌握する、魔力、触覚、臭い、視覚ありとあらゆる情報から隠れているものを暴き出す。
演算ユニットがあるとはいえ、その膨大な情報を処理できるのは、フルーデの篠宮智世の天才的な頭脳のなせる業だ。
「隊長、見つけました。近くにいるもののほかに南西約300mの位置にもう1体、魔力の出方からいってその個体が外側からもう一体を隠ぺいする魔法を行使しているようです。スタンで隠ぺいを一度解除させるので、隊長は間髪入れずに撃ち抜いてください。そのもう片方には人間の吸収が確認できないので、手加減はいらないかと」
「分かった」
上官の私に指図するとは、頼もしい後輩じゃないか。
「デヴァリオン、必殺パワー……」
「フルーデ、これ麻痺用だから間違っても必殺じゃないし、命も燃やさないよ」
「細かいことはいいの!魔力はノリに左右されるんだから……ノリ、合わせて!」
「はいはい、ライトニング・プレセプト!」
デヴァリオンの掲げた手から、電撃が放たれる。使い魔に中継されて、標的を視界に入れることなく必中の一撃となる。
“ガーンッ!”
雷鳴がとどろく。
「成功です。目視できるようになりました。アルニギアスさんに座標データを送ります」
「ふ、俺にも敵が視えるってね」
軽口をたたくアルニギアスを通して、敵の座標位置が伝わってくる。向こうの敵は形容しがたい形状をしている。鏡のような、結晶のような……なんにしろ宝石のように光を乱反射させている。光を操りそうと言えなくもないか。
ちなみに前園博士の趣味で勇者たちは大概のロボットアニメは履修済みらしい。
「ポエナティヴ・メテロミー!!」
いつもの固有魔法込みの攻撃、手ごたえありだ。
世界が歪みだす。遠方のが手前の掛けた攪乱フィールドが解除されたようだ。
「グウゥ……」
近くからもうめき声が聞こえ、もう一体が姿を現す。それは全体がツチノコのような体型をていて、各部がロードローラーのものと思われる円柱形のパーツで構成された鋼魔獣だった。
「でかい……私が戦った相手の中でも最大クラスかも……」
高さだけで5メートル全長で20メートルはあろうかという巨躯を相手にした回数は私とアルニギアスでも数えるほどしかない。海外に救援に向かった時以来かも。二人だけだったら危なかったかもしれない。しかし、今の私達には仲間がいる。警戒はすべきだが、恐れることはない。
「行くぜ先輩!」
「おう!」
姿の暴かれた敵にフォルテとアルニギアスが挑みかかる。
アルニギアスが敵の正面に立って、動きを牽制している間に、フォルテが上にジャンプして、かかと落としを見舞う。フォルテは世にも珍しい、前衛型の魔法少女だ。固有魔法は身体強化、汎用魔法にもある魔法だが、彼女のそれは倍率が段違いだ。単純すぎる能力にも思えるが、だからこそ叩き壊せる壁というものもきっとある。そんなバリバリのインファイターな彼女を援護するため、アーシュケリアは後衛タイプになっている。
“ガンッ!”
鈍い音を立ってて敵の外装にヒビが……入ってない。
「痛っ!?なんだと」
彼女の固有魔法に合わせてフォルテのステッキは小さい樽のような、手甲と足甲に変わる。それがほとんどの衝撃を吸収してくれるはずが、威力がそのまま跳ね返っているようで痛そうだ。
「はーっ!」
私も続くように弓を引き、魔力の矢を放つがやはり弾かれる。何て防御力だ。早くもドミネイターの出番か?いや……あれは人を取り込んでいる相手には使えない。じゃあどうす……。
「隊長、もう一体がしつこく防御魔法をかけ続けてるみたいです」
いつの間に解析していたのか、フルーデが情報をくれる。
ともかくまずはもう片方をやり切るべきか。
「フォルテ、もう一つの方にとどめ刺せる?」
「相方ばかりに魔力を割いているので本体は守りが薄いようです。ミサイルランチャーを使えば確実に……」
「じゃあお願い。片方を倒せるまで他の3人はそいつの足止めをお願い!」
近くのデカい方と対峙する3人に指示をとばす。
「じゃあこっちでいく!」
アーシュケリアはライフルから背中にマウントしていたガトリングガンに持ち替える。
「ふーっ、魔力供給開始。弾をばらまくのは趣味じゃないんだが……撃ちまくるぜ!」
“ガガガガガッ!!!”
アーシュケリアはビルの上から白い魔力の弾丸を雨あられと降らせる。
「ヴウゥ……」
ツチノコっぽいやつはうめき声を上げる。怯ませる程度に効いていそうだ。時間稼ぎにはなるだろう。
「デヴァリオン、全砲門解放、魔動ミサイルランチャー、対象に一斉発射!」
デヴァリオンの背部にマウントされた、直方体の形のコンテナが上に伸び、その上の面が開く。
“ボンッ!ボンッ!”
鈍い破裂音と共に1m手前の大きさのミサイルが複数発射される。彼女反有機生命圏によって鋼魔にはできない一方的なボタン戦争を相手に仕掛けることが出来る。
“ドンドンドンッ!”
地を揺らす衝撃と共に、大きな爆発音が聞こえる。その間に使い魔をいったん呼び戻していたフルーデはは、砲台ユニットをデヴァリオン放出させ、乗り移らせる。
「隊長、私の使い魔を増やしてもらえますか?」
「お安い御用」
私は後輩の頼み通り、弓を彼女にかざして彼女の使い魔の数を倍加する。そして砲台ユニットを纏った使い魔と、素の状態の使い魔でミサイルの直撃でボロボロになっている。敵をドーム状に囲う。演算ユニットには敵を撮影した映像が立体映像として投影されている。
「今度こそ必殺パワー!星空の檻!」
“ドドドドドドッ!!!”
砲台の方は魔力を帯びた実弾を撃ちまくり、素の使い魔は己が身を弾丸にして体当たりする。
“ガリガリガリガリッ!!”
敵の身体のあちこちに風穴があけられる。無機物っぽい奴は声を上げない。しかし、もう虫の息だろう。
「ふーっ……」
“カチャ”
フルーデはいったん心を落ち着かせるため、メガネの位置を整える。
それと共に素の使い魔たちが一つの塊のように集まっているのが私の魔法を通して伝わってくる。
「ドドメ……」
“カンッ!”
彼女はロッドを地面に打ち付ける。それと共に使い魔たちの塊はハンマーのように振り下ろされる。
“バギンッ”
ガラスふみ割るような感触が伝わってくる。一体目の無力化がなされた。
「このまま、使い魔を用いてゼロ化までやります」
ここまで、彼女はほとんど動いていない。フルーデ・コロナ、おそろしいまでに強力な魔法少女だ。
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