EP16 星屑たち
キャラが一気に増えた扱いきれるか?
そして早く一実とノクスの会話をじっくり書きたいです。
Side:一実
あの日の戦いで、民間人の犠牲者は出なかったもののOIDO組織で複数の死者が出てしまった。私は鋼魔との戦いの過酷さを改めて実感することになった。それは、蕨野さんをはじめ、私の同期にとっても同じことだ。
その後同期の内の3人が正式な魔法少女として、登録されることになった。肝心の私とノクスは、今回の戦果と星原先輩と蕨野さん、そして神名さんの嘆願で調査と並行するという条件で、特別隊員として登録されることになった。
そしてあの日から数えて3日後、OIDO司令部の講堂で新人魔法少女と勇者の任官式が行われた。
OIDO日本支部の面々がほとんど集まる中、舞台に立つ岩越司令の前に、4組の男女が集められている。指令のそばには星原先輩とアルスさんが立っていて、一同を静かに見据えている。
「篠宮智世隊員。パートナー、デヴァリオン」
「はい」
「はい」
最初に名前を呼ばれたのは、小柄で丸い眼鏡をかけているのが特徴の女の子篠宮智世さん。パートナーの勇者は他の勇者たちより少し背が低く可愛らしい童顔が特徴のリオンくん。
「鳳条真央隊員。パートナー、アーシュケリア」
「はい」
「はい」
次は、女子としては背が高く、まっすぐ伸ばされた背に垂らされたポニーテールが映えている。快活そうな女の子、鳳条真央さん。パートナーの勇者はサイバーなグラスに隠された鋭い目とすらりと伸びた長身がクールなアーシュ君。
「碧乃一実隊員。パートナー、ノクストス」
「はい」
「はい」
次は私の番、私たち新人魔法少女の来ている制服は養成学校の時と同じ灰色を基調としたものだけど、スカートがタイトになって大人っぽいものになっている。
一方ノクスが来ている勇者用のものは、ノクスが着たことがない学生のものよりも若干色が濃いものだ。特におしゃれな服装というわけではないけれど、まともな服を着ただけで、薄々感じていた素材の良さが表に出てきて初めて見た時はそれはもう、内心ヤバかった。
「蕨野花隊員。パートナー、レオリオス」
「はい」
「はい」
そして最後は、花さんとレオくん。彼女たちの助力もあってノクスの立場を確保できた。それはとても感謝しているし、同じチームになるのだから過去のことはいったん置いておいて仲良くできたらいいなと思う。
「以上、8名を正式な魔法少女並びに勇者ロイドとして任命し、日本をはじめとする東アジア地域での対鋼魔任務に就いてもらいます。あなたたちに課せられた使命は世界の秩序にも直結するものです。皆さんの健闘に期待します」
司令のその言葉に、私たちは敬礼をする。そうだ、いろいろ大変なことがあったから実感がなかったけど、こここそ私がずっと目指していた場所なんだ。そして、ここから全ては始まるんだ。これまでもう血を吐きながらやるマラソンのようだった。それが余計険しい道に入るというのは凄く途方もないことだ。でも、そこを歩く自分が前よりもはっきり想像できる。理由ははっきり分かる、隣にノクスがいるからだ。
少し彼の横顔を盗み見てみる。一応ノクスとも打ち合わせをしていたが、敬礼はぎこちない。動作もワンテンポ遅れているようだ。ここに彼の事情を知らないものはいないから今はいい。ただ、記憶のない彼が周りになじむ方法も考えなきゃいけないな。
そんな私をよそにして司令は、新設される部隊の話を始める。
「魔法少女の増員に伴って、星原隊員たちを含めた10名を部隊員として対鋼魔部隊を日本支部の中に新設します。部隊名はプラネスフィア。隊長となるのは星原隊員です」
プラネスフィア、確か星見盤のことだ。魔法少女の名に星座が入っていることが由来か。星原先輩もよく星に例えられる、人々にとって希望の星だと。私たちもそうならなければいけないのだ。
星原先輩は厳かに前に出でて、階級章代わりのバッチを受け取る。その背後には影のように付き従うアルスさんがいる。
そして二人は私たち八人の前に立ち、号令をかける。
「プラネスフィア、一同敬礼!本日より任務に就きます。お集まりの皆さん、ご支援よろしくお願いします!」
先輩が組織の皆さんにそう宣言したところで式典は幕を閉じた。
※
式典後チームでミーティングがあるとのことで私たち新人8人は会議室に集まっていた。今は後から来るらしい星原先輩、もとい隊長たちを待っている。
「だーっ!かったるかったー!」
真央さんが机にうなだれながら愚痴をこぼしている。彼女は男勝りなしゃべり方をする人で一人称も俺だったりする。
「別にOIDOは軍じゃねーんだから、こんな堅苦しいことしなくっていいじゃねーか」
自由奔放なところがある彼女には堅苦しいこと全般は苦手なことだろう。学校にいた時もたびたびその態度を教官や先生に注意されていた。
「OIDOは各国政府が出資する機関だ。成果を出資者に見せるためにああいう場が必要なんだ。慣れろ」
そうアーシュ君が言い聞かせている。緩めの真央さんとカチッとしてるアーシュ君、凸凹コンビというやつなのだろうか、学校ではあまり仲良くしているところを見たことがいつの間に契約するほど仲良くなっていたのだろうか。
「今回のチームで啓蒙の意味を込めて広報に出る活動する予定もあるみたいだよ!なんだかアイドルみたいだよね」
嬉しそうな声色でそう言うのは、リオン君だ。彼は好奇心旺盛なタイプで、いろんなものに興味を持ってそれをみんなに広めたりするので、学校の流行の震源地となることもままあった。
「私たちはともかく、勇者ロイドはその辺も加味して容姿端麗に作ってあるところがある。リオンは中でも群を抜いてカッコいいけど……」
智世さんはスマホをいじりながら見解を述べつつパートナーが大好きなところをのぞかせている。彼女は学校一の頭脳の持ち主で、それであまりまわりになじめなかったりしていたようだがリオン君とだけは仲が良かった。順当にくっついた組み合わせだ。
「でもよう、確かにヒラヒラなドレスは着たりするけどさ~俺たち戦士だぜ?見世物じゃないって~の」
「仕方ないだろう、勇者ロイドはとにかく高い。出資はいくらあっても足りないぐらいだ。腹芸の類も必要なんだろう。気持ちのいい仕事でないのは同意するが」
アーシュくんは冷静に自分たちの置かれた状況を分析している。そこまでは良かった。
「……?」
唐突にアーシュ君の視線がこちらを向く。いや、正確には私も隣で居心地悪そうにしているノクスを見ている。
「組織は得体のしれない外部人員に頼らざるおえん状況らしいからな。なりふり構っている余裕はないだろう」
「…………」
蕨野さんペア以外の4人の視線がノクスに注がれ出す。彼はそれに気づいているようだが何も言わずに黙っている。
「ねぇ、君のデマンド・サーキットすごい出力らしいね。どのくらい凄いの」
リオン君が無邪気な声でノクスに話しかけてくる。
「……まだ、勇者の事情とかはよくわかってないんだ。だから、何とも言えないな」
相当にアウェーな状況のはずだけど、ノクスは平然と受け答えする。
「ふ~ん、何でもいいけど、足で纏いにはならないでね」
リオン君は可愛い顔で厳しいことを言ってくる。当たり前ではあるがノクスは周りから異物扱いされているみたい。こういう時は自分が懸け橋になるべきだとは思うけれど、コミュ力のない私にはいい案が思いつかない。
「ノクスさんが得体のしれない存在であることは事実ですがこの中で、一番成果を上げている勇者は彼です。逆に彼から学べることもあるのではなくて?」
助け舟を出してくれたのは、なんと蕨野さんだった。
「確かに、この間の戦いで見たノクスさんはすごいスピードと身のこなしだったな」
レオ君も話乗っかってくれる。
「それもそうか~。ごめん、前言撤回。お互い仲良く頑張ろう」
「ああ、俺もそうしたい」
リオン君の提案にノクスは笑って答えた。蕨野さんたちのおかげで、ノクスを取り巻く空気が軽くなったみたい。それはいいことだけど、クッションにすらなれず、黙っていただけの自分がとても情けなく思えた。
“ガラガラ”
部屋のドアが開き、星原隊長とアルスさんが入ってくる。
「みんな、揃ってるね」
ミーティングルームの教壇のような場所に立った隊長は、一枚の紙をみんなに配る。
「これから、プラネスフィアの当面の予定について説明するよ」
「たいちょーさーん、これなんすか?」
隊長を畏れることなく、彼女の話をぶった切って真央さんが質問する。
流石の星原翼もこれには怒るかと私は心配したけど、むしろ彼女は微笑んで言った。
「それはみんなの訓練メニューだよ」
私が紙に書かれた内容に目を通すと、そこには養成学校時代とは比べ物にならないほどハードな訓練スケジュールがびっしりと書かれていた。
感想ください(ド直球)
感想が欲しすぎてハーメルンにも転載しようかと思います。